お節介な姉
フラントスと会った翌日。
姉が俺を実家に呼んだため、一度帰ることになった。
「なんです、姉さん。」
「もう、その仏頂面どうにかならないのかしら。」
「……余計なお世話です。」
わざとらしく呆れたようにため息をつく姉に少しだけイラッとする。姉は活発ではないもののおしゃべりのお節介焼き。お茶目な一面もあるため怒る気にもならない。
昔っから色々とお節介をされてきた俺としては、そろそろ放っておいてほしい。仏頂面なのも生まれつきで仕方ないだろ?
「あ、そうそう!
この間リオから面白い話を聞いたの!」
「……それだけのために呼んだんですか。」
「あら、悪い?
たまにはお姉ちゃんをいたわって頂戴」
「いたわる必要がありますか?」
面白い話のためだけに俺を学園から呼び戻すとは……とんだはた迷惑な話だ。
リオというのは、姉の婚約者のアスタリア国王家三男のリオ・エリーゼ・アスタリア。アスティア魔法学園というのも、国名が由来だ。
「で、面白い話というのは?」
「リオがヴァイタルさんから聞いた話なんだけど、アスティア魔法学園に外部生が入るとか!」
「知ってます。」
「それだけじゃないわよ。
その子、魔術の実力が秀てて魔獣を懐かせるとか、すごい子なのよ!」
「それも知ってます。」
「え?」
「ついでに言うと、もう会いました。」
キラキラした瞳で自信満々に言い切る姉には悪いが、何の反応もできない。
知っていることを語られても困るだけだ。
「あったの!?
どんな子だった!?」
「綺麗な少女でしたよ。
長い白髪にすんだ蒼の瞳でした。」
「あら、珍しい。
その子と何かあったの?」
フラントスについて聞かれたので、とりあえず容姿について話していると突然目を見開いて驚かれ、逆にこっちが驚く。
「なんでですか?」
「笑ってるわ。」
指摘されて自分の頬に触れると確かに笑っていた気がした。
……思わずだな。これは面倒くさい。姉のことだし、きっとドンドン食いついてくる。
「で、なにがあったの?
笑ったってことは、気に入ったんでしょう?」
「いや、特に何も――」
「嘘は吐かない!」
「……どうせ信じないでしょう?」
何かあったわけではない。
ただ、フラントスが彼女――弥生に似ていただけだ。前世の彼女に似ていたから、だなんて言っても誰も信じるわけがない。
「いってみないとわからないでしょう?」
「いえ、分かります。」
「……本当に頑固なんだから……
じゃあ、今度家に連れてきてちょうだいよ。私も気になるわ」
「え、急に言われても……」
「今度でいいの!」
……そんなの、相手の都合もあるというのに、本当に困った姉だ。
とりあえず、断ることもできないのであやふやにしておいた。