瞳の色
「? どうかされましたか?」
「あ、いや……なんでもない。」
キョトンとした様子でこちらを見るフラントスの瞳はいつも通りの蒼。見間違いだったか……? いや、フラントスの瞳の色が変わるのは騎士団長も知っているのだから、見間違いなわけがない。
「ユリアちゃん、ほんとだね!
金色の目ってかっこいい!」
「バウ!」
”金色”。騎士団長もエミルも、金色だと言っているが……あの瞳の色は、
「……琥珀」
「え?」
この世界には琥珀の瞳なんて誰も持っていないはず。金の瞳も然りだ。
「クレイ、なんていったの?」
「いや、気にしないでくれ。」
エミルは気になるのかそわそわしているが、言ってみても伝わらないだろう。琥珀なんて、存在しないのだから。
琥珀が存在していたのは、俺の前世だ。
そして、フラントスの瞳の色は弥生のものと”そっくり”だった――
「もー! 気になるー!」
「あっ、そろそろ時間です。
戻りましょうか。」
「ああ、そうしよう」
俺たちは魔獣を引き連れながら来た道を戻る。帰り道でも魔獣と出会うことはあったが、結局は一戦も交える必要がなかった。
「な、なんですかその魔獣は……!?」
「えっと……すみません」
「ユリアちゃんの能力ですよー!」
魔獣たちを見て驚いた表情を隠せない先生。それも当たり前だろう、今では大体30はいるからな……
「……コホン、フラントスさんの能力でしたか。」
「はい。驚かせしてすみません。」
冷静さを取り戻す先生に再度謝ってから魔獣の方を向きなおして一匹一匹頼んでいった。……いや、頼むというよりは命令か。それを聞いた魔獣たちは全員従順に森へと戻っていった。
「……すごいな。」
「ね! なんか、すっごいユリアちゃんのことを信頼してるみたい!」
「バウバウッ!」
あそこまでいた魔獣がすべて森へと戻り、俺たちのところからのみ声が上がる。
他の人は恐ろしいものを見るような眼でフラントスのことを見つめていた。
「フラントスさん……その力を使うのは、できるだけ控えてくださいね。」
「……善処します。」
さっき考えたようにフラントスの能力を使わないようにするのは難しい。だからこそのフラントスの答えだろう。
授業は終わり、それぞれが寮へと戻ったころ。
――俺は、ゆっくりと弥生のことを思い出していた。