フラントスの能力
「――さて、今日は森での実技をしたいと思います。」
先生のその言葉に教室内の全員から歓声が上がり、それぞれが近くの人と話し始めた。
もちろん俺たちも例外ではなく、どんなところだろうかと少し予想しようとはしたが、フラントスにしては珍しい満面の笑みで告げた。
「ふふっ、リアルフが喜びますね。」
……そういえば、フラントスはもともと村で暮らしていたんだったか。確か、そこでたまたまペットになったのがリアルフだったとか。
そうなると、この中で一番慣れているのはフラントスか。
「そうだね!
私すごく楽しみ!」
「ええ、私もです。」
「では、各自準備して外へ出てください。そこから大型転移魔法で移動します。」
先生の言葉を合図に、クラスメイト達は手早く準備をして外へと出ていった。
外へ全員集まったのを確認すると先生が何かを呟く。
その次の瞬間には周りが自然に覆われていて、いろいろなところから感嘆の声が上がった。ユリアが連れてきていたリアルフは一気に駆けまわり、とてもうれしそうにしっぽを揺らしていた。
「この森には結界がはってあり、そこから先には進めないようになっています。なので、結界にぶつかった場合は引き返してください。私たち教師はここであなたたちの様子を見ていますが、万が一のことがあった場合はすぐに逃げてくださいね。そして、最低でも三人で行動してください。
――では、安全第一でお願いします。」
長い前置きを置いてようやく行動が許された。
それぞれグループを作りながら足早に森へ入っていく中、俺とエミル、フラントス、リアルフはゆっくり話しながら入っていった。
「ぴーっ、ぴよ!」
「きゅっ、きゅきゅ!」
森に入ると、少なからず魔物が出てくる。
俺たちは出てくるたびに剣を握ったが、その必要が全くなかった。
「バウ!」
「あ、また……」
「ユ、ユリアちゃん……その力どうにかできない……?」
「……エミルに同感だ。」
俺たちは忘れていた。フラントスが”魔獣を手懐ける能力”を持っていることを。
この能力のせいで、魔獣がフラントスと目を合わせるたびに敵意をなくし、むしろ懐く。今やフラントスの後ろには魔獣の大行列が出来上がっている。リアルフと同種族のウルフや、ポイズンスネーク、さらにはハニーベアまで。
俺たちは全く戦うことなくただ歩いていた。
「どうにかならないのか。」
「……騎士団長様によると、私の瞳が原因らしいんですよ。
なぜか目を合わせた瞬間だけ金になるとか……」
「瞳の色が変わるの?」
「そう、らしいです。」
申し訳なさそうに目を伏せるフラントス。
瞳のせいなら、目を瞑ればいい話だが目を瞑れば進めない。しばらくフラントスの瞳を見て悩んでいると、ふとフラントスが視線をそらした瞬間彼女が言っていたように色が変わった。
――俺にとって、とても懐かしい瞳の色に。