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君は、覚えてる?  作者: とらまる
第二章
12/17

模擬対戦 前半


 今日は、実技の学習がある日だ。

 結局フラントスは、昨日の時点でみんなよりも少し上かというあたりまで手加減できるようになった。手加減の練習をするのもおかしい話だが、危険にさらすわけにいかないからな。




「――では、次の時間は実技学習をするので運動場へ出てください。」


 授業が終わり、先生が言ったことに全員がはっきりした返事をする。やっぱり、皆楽しみなんだな。

 またエミルたちと一緒になり、運動場へゆっくりと進んでいった。




 授業開始の鐘が鳴り、号令をしてから授業の説明が始まった。することは全員分かっているが模擬対戦で、相手は担任の先生が決める。大体の実力が同じくらいのペアでやるそうだ。降参するか、審判が続行不可能と考えた場合、場外に出た場合は負け。剣・魔法どちらも使っていいが、使い魔はなし。

 説明が終わると対戦相手の名前が焼き印された葉を配られ、相手を確認する。


「俺はエミルとだな」

「ほんとだ、頑張ろうね!

ユリアちゃんは?」

「アスタリア様……ですね。」


 フラントスが困ったように笑う。まさかルークが相手だとは……確かに、実力はあるから仕方ないかもしれない。

 葉には試合の番号も書かれていて、俺とエミルが三番目でフラントスが一番。強いペアからやるみたいだな。小さくため息を吐くと、フラントスが担任に呼ばれる。


「じゃあ行ってきますね。」


「頑張ってね!」

「目立たないようにな」


 俺たちに一礼をしてから試合場へ向かった彼女を見送って、第一戦目が始まるのを静かに待っていた。




「それでは、ルーク・エリーゼ・アスタリア対ユリア・フラントスの試合を始めます!

構えっ!」


 審判の声が聞こえて、全員が中心の二人へと注目する。

 フラントスは軽く構えているだけで、本気さが感じられない。それを見たルークが今にもかみつきそうなほどに力んでいて、対照的な姿だった。


「――始め!」

「ッはあああぁぁ!!」


 開始の合図が聞こえると同時に一気に駆けだしたルーク。ルークの武器は両手剣で、高級そうな装飾がちりばめられている。始めの様子から見てルークは猪突猛進型。一番フラントスにとってやりやすい相手だろう。

 突っ込んできたルークをぎりぎりでひらりとかわして、折り返してきたものをまた避ける。ただ避けるだけの動きだが、だんだん場外へと移動している。


「なんで避ける! さっさと当たれ!」

「大丈夫ですか?」

「ッ大丈夫に決まってる!」


 ……フラントス、時々天然がはいるよな。そのせいでさらにルークが怒っている。それにこの試合、見る方からすれば攻守交代のないつまらないものだが……いいのだろうか?



 しばらくそれが続き、ようやく場外の方へ近づくとフラントスはさりげなく範囲から出た。


「――勝者、ルーク・エリーゼ・アスタリア!」


 審判の声が試合終了を知らせると、そこにいたすべての人が沈黙した。

 気持ちはわかる。ただ、避けることの繰り返しだったから見てる方からしたら全く模擬戦に見えない。


「はああああっ!?

貴様、手を抜いたな!?」

「何をおっしゃってるんです?

私はアスタリア様の攻撃が怖くて避けていたら”たまたま”、出てしまっただけなんですけど……」


 フラントスの言い方、明らかに喧嘩を売っているようにしか聞こえない。たまたまという部分を強調して、顔も疑問に満ち溢れているのがそれをさらに増幅させている。そのせいで顔を真っ赤にしたルークが唸っている。


「っもう一回だ! きちんと戦え!」

「そうですね、もう一回お願いします。

次はよけるだけでなく魔法も使ってくださいね。」

「……分かりました。」


 審判にも言われて、しぶしぶといった様子で元の場所へと戻っていくフラントス。

 エミルと顔を見合わせ苦笑してしまった。いくら目立ちたくないからと言ってそうすればルークの言う事なんて目に見えてるだろうに……


「――構え! ……始め!」


 またも審判の合図で試合が始まった。

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