フラントスの秘密
三人で固まり、少しの沈黙を置いて俺が先に口を開いた。
「……で、フラントス。本当はどれだけの魔法を使えるんだ?」
いつもは賑やかなエミルも、ぼけっとフラントスを見つめていて静かだ。そして、フラントスがフッと息をついてから話し始めた。
「属性は、火・水・草・土・光・無の6つ。それぞれ上級は少しづつ使えます。中級まで無詠唱ができるのは、草属性・風属性で、それ以外は初級まで。
……と、言った感じですね。」
「……」
「え……え?」
いや、チートだろ。想像を超えすぎて逆に引くレベルだ。エミルも口をパクパクさせていて、驚きを隠せていない。……驚きを隠せるほうがすごいか。だって、今フラントスが言ったことが事実なら、フラントスは伝説の魔法使いだ。まず、属性の時点で幻に近い存在。さらにすべてをほぼ均等に鍛えるとか……
「はあ……すみません、このような反応をされるだろうなと予想していたので……」
「いや、こちらこそ済まない。」
「っちょっとまって、ユリアちゃん!」
「どうされましたか?」
「それ、王家の方々は知ってらっしゃるの?」
……エミルが言ったことは重大なことだ。王家に教えてしまったらフラントスがいいように使われるのは目に見えている。
「いえ。このことを知っているのは家族とお二方だけです。」
「なら、よかった……」
「これからも、誰にも言うな。
言ったら最後、身の安全は保障できない。」
「……わかりました。」
取り合いで戦争が起こるか、フラントスを恐れて身柄を厳重に保護するか、危険因子とみなして早めに摘み取るか。どれにしてもフラントスに明るい未来はない。重々しく頷いたのを見て、とりあえず息をついた。
「じゃあ……見つからないためにも、手加減を覚える必要があるな。」
本気を出せば、国まではいかなくても一つの地域を滅ぼす可能性がある。さっきのフェアリーハミングだって、度を過ぎれば前世でいう植物人間にしてしまう。あれで中級なのだから、上級になると……攻撃力は致死量に値するだろう。
「ありがとうございます。
派手にやって目立つのは遠慮願いたいんですよ」
「たしかに、目立つと過ごしにくくなるよね」
「まかせとけ。時間は少ないが、フラントスならいけるだろう」
それから寮が閉まる前まで、俺たちは交代しながらフラントスに手加減を教えていった。