ルーク・エリーゼ・アスタリア
フラントスと一緒に話をしていると、だんだんほかの生徒も集まってきてがやがやとにぎやかになる。
相変わらずフラントスの周りにはだれも来たがっていないのだが、今日はさらにその間隔が広かった。おそらく、リアルフがいるからだろう。皆怖がって近づかないのだ。
それすらあまり気にせず話していると、ドアの開く音がして周りの声が小さくなった。ドアの方を向くと、王家の四男ルーク。近くには従者を連れていて、威圧感が少しだけあった。
「っ!
お、おい貴様!何を連れている!?」
教室に入ってきて数秒。たったそれだけでリアルフの存在に気がついた。あそこからは大分距離があると思うのだが……あの焦り様からして、苦手なのか。
ルークがそういって、クラスメイト達は一気に静まった。
「何、て……使い魔です。」
「バカか! 使い魔は学園で習うんだぞ!?
なぜ貴様ができる!」
言い分はあってるのだが、その意地を張ってる様子が台無しにしている。少し呆れてしまうのも仕方ないだろう。
「第一図書館でそれに関する書類を見つけて、試しにやってみたらできたんです。」
「契約魔法についての資料があるはずないだろ!」
「確かに、資料というよりは絵本でしたよ。」
「そんなものでできたというのか!」
「ええ。安全ですから、撫でてみますか?」
「バウ!」
「いっいい!
いいから来るなぁ!」
ずっと大声で叫んでいるのに、フラントスは全く怖気づかず冷静に返答している。どうぞ、というようにリアルフはルークに近寄るも、当の本人は一気に後退した。
やはり、獣が苦手なのか。にしても、過剰反応だな。
「そうですか?」
「クゥン……」
「リアルフ。」
落ち込んでいるリアルフを見て名前を呼べば、駆け寄ってくる。頭を撫でればスリスリと頭をこすりつけてきて可愛い。いくら体が大きくても性格次第で何とかなるもんだしな。
「っクレイ、ユリアちゃん!
おはよう!」
少しほっこりしていると、パタパタと走って教室に入ってきたエミル。この教室内の静けさすらも気づいてないようだ。
リアルフと同じように駆け寄ってくると、俺の手元を見て目を輝かせた。
「わ、可愛い!
このこ、どうしたの?」
「ハドラー様、おはようございます。
その子は私の使い魔で、リアルフです。」
リアルフと同じ目線にしゃがむと、頭をわしゃわしゃし始めた。エミルはルークと反対で獣大好きなのか。初めて知ったな……
「ふふっ、リアルフ君かぁ。
よろしくねー!」
「バウバウ!」
「っなぜそんな下等な動物を触っている……!」
仲良さげにするエミルとリアルフに、遠いところから悔し気に呟いている。下等というほど下等でもないとおもうのだが……まあ、そこは認識の差か。
「ッグルルルゥ……!」
「リアルフ、落ち着いてください。」
「……バウ」
「すぐに怒るから下等な動物なのだ!
そんな奴が使い魔とは、貴様も仲間なのかもな!」
一気に威嚇して飛びつかんとするリアルフをフラントスが宥め、それを見たルークが喧嘩を売る。というか、フラントスが気に入らないならいびらずに無関心でいればいいと思う。喧嘩売ったら無駄に神経逆なでされるだけだろ。
「はーい、席に着いてくださいー。
アスタリア様、外まで聞こえておられましたよ。」
パンパンと軽く手をたたきながら入ってきた担任。緩い口調で生徒を席に着かせて、ルークにとっては不完全燃焼であろう状態のまま言い合いは終わった。
……また絡まれそうだし、できるだけ一緒に行動する方がいいかもな。