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君は、覚えてる?  作者: とらまる
第一章
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終わりと始まり

 


 ただ、二人でこれからのことを話していた最中だった。二人で一緒に笑いあい、少し冗談を言ったりなんかして。

 まさに、幸せな一時だったのに。



『危ない!』

『え?』


 誰かの切羽詰まった声が聞こえて後ろを振り返る。が、それと同時に鈍い衝撃が襲ってきた。

 最後の瞬間、ぼんやりと見えたものは彼女がぼろぼろと涙を零している姿だった。「泣かないで」と笑い掛けたかったものの、それに反して意識はブラックアウトしていった――






 ――意識がおぼろげながらも戻ったのは、どれくらいたった時だったか。

 聞こえてきたのは、若い女性と男性の声。何をしゃべっているのかはよくわからないが、なにやら喜んでいるようだ。目を開いてもぼんやりとしか見えない。手足を動かすのすら重労働。なぜだろう、と思ったがすぐに分かった。

 若い女性が俺を抱き上げたのだ。軽々と、あやすように。ぼんやり見える彼女の口元は弧を描いている。


 つまり。俺は赤ん坊になっていた。しかも、前世の記憶を受け継いで。


 そこまで理解したところで、抗うすべもなくだんだん瞼が下がり、またも意識が遠のくのを感じた。





 それから1年。

 1歳になるころには、赤ん坊の生活に順応していた。まあ、順応しなければ生きていけないのだから当たり前だが。そして、この世界の知識も少しは得ていた。


 まず俺は、クレイ・シュミリアという名前で性別は変わらず男。4つ上におとなしい姉がいて、もうすでに婚約者がいる。次に、シュミリア家はそこそこ高い地位を持っている。姉は一日の半分も礼儀作法の勉強に注ぎこんでいて、今は淑女見習いだ。最後に、この世界は地球ではない別の世界だ。言語や容姿がちがい、魔法が存在している。

 大体こんな感じだ。



 今考えているのはこれからのこと。

 前世で、彼女を一人残してしまったのが心残りだが……きっと彼女も前を向いて新しい人を見つけているだろう。それを考えた時胸が痛んだものの、仕方ないと自分を言い聞かせた。こうやって考えると、俺は彼女を本当に愛していたんだな、としみじみ思う。


 それは置いておいて、おそらく俺にも婚約者ができることだろう。そうなるとすれば、俺にも姉と同じように教養をたたき込まれる。だが、俺としては魔法をもっと勉強したい。そのためには、できるだけ礼儀作法を早く身につける必要がある。まだ幼児なので実践はできないが、しっかりとみておいて、もっと自由に動けるようになったら真似てみよう。成功すれば、自由な時間が多くなる……はずだ。



 前世のことも踏まえて、できるだけいつ死んでも心残りの無い様に生きよう。

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