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ボランティア部へようこそ!  作者: 真っ赤な猫
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出逢いというのは突然やって来る

季節は春。



薄ピンクの花弁がひらひらと舞い散る中でここN県立桜柳高等学校の入学式が先週行われた。



桜柳おうりゅう高校は偏差値も然程高くなく、『正義感を持ち優しい心を育て自由に学ぶ』がキャッチコピーのとても人気のある高校だ。



県外からも多くの受験生がいる為倍率が高く多い年では10倍位になる時もあるが基本的に4倍といったところだ。



今年は例年より少し低く3倍だった。



そんな中から選ばれた新入生達250名は真新しい制服に身を包み新たな学校生活への希望を持ってやって来た。



艶のある綺麗な黒髪をボブカットで整えた少し小柄な花岡はなおかのどかもその一人だ。



しかし、彼女は今、非常に困った状況に陥っている。



「どうしよう。入りたい部活もうないよ」



勧誘ポスターが貼られた掲示板を見ながら頭を垂れた。



この高校では全生徒が何かしらの部活動に所属しなければならないという校則があるのだ。



なので、のどかも友人と共に様々な部活を見学をしたのだが、一人だけ断られ続けた。



華道部では数十の花瓶を割り、書道部では墨を部屋中に撒き散らしたりなどまだまだ沢山あるがこの様にドジを踏んで断られたのだ。



元々何処か抜けている性格なので多くの人に迷惑をかけ続けていた。



のどかは今年こそと意気込んでいたのだが、その意気込みも薄れつつあった。



「ねぇ、新入生だよね?部活決めた?」



落ち込んでいたのどかの前に上下学校指定のジャージを着た恐らく上級生とみられる少女が現れた。



「は、はい。そうですけど、何でしょうか?」



小さな声で尋ねた。



「えっとね、部活の勧誘。その様子じゃ決まってないでしょ?それで、見学しに来ない?」



「えっ?い、いいんですか?」



思ってもいなかった答えが返ってきたので驚きが隠せない。



「もちろん」



謎の上級生はニコニコとしながら答える。



「で、でも、私、花瓶割っちゃうし何も出来ないから、あの、う、嬉しいのですが、多分、迷惑をかけてしまうので」



お断りしますと、言おうとしたら右腕をガシッと掴まれた。



「そっか行こうか」



「え?」



意味のわからないことを言われた途端腕を引っ張られた。



二人の少女が廊下を疾走している。



のどかは「はぁはぁ」と、息を荒げながらも必死に足を動かした。



一方上級生は未だにニコニコしながら息も切らせずにのどかの腕を掴んで走っている。



のどかがもう無理と思った時ピタッと止まった。



「さぁここだよ」



「へ?」



「部活動だよ。ここが部室」と、上級生が言う。



扉には何も書かれていない。



一体何の部活なのか検討もつかない。



けれど、此処まで来たのだから少し見ていこうと思いハァと深呼吸して息を整え扉を開ける。



その扉の先には……。



一人の男だけがいた。



「あれ?瑠唯るいその子は?」



「ん?連れてきた。名前は…知らん」



眼鏡をかけた金髪の男が呆れて溜息をついている。



「ゴメンな?で、名前は?」



頭をガシガシ掻きながら男が聞いてきた。



「…花岡…のどかです。えっとここは何部何ですか?」



また、金髪の男が溜息をつきジャージの上級生に言った。



「…お前、説明をしろよ」



「ごめんごめん。ゴホンッここはボランティア部だ。ウチは神田瑠唯かんだるい。この眼鏡は江野晶羅こうのあきら。それでウチらは三年。」



その後ボランティア部の説明を受けた。



ボランティア部とはボランティアする部活動で校外活動もしている様だ。



メンバーは全員で十人にも満たないがきちんと活動しているらしい。



「気が向いたらまたおいで。歓迎するよ」



「はい。失礼します」



瑠唯の勢いに飲まれてのどかは断ることが出来なかった。



二人はとても優しくていい先輩だった。



けれど、のどかは自信がないのだ。



誰かを助けるという行為が自分にできるのか。



今まで誰の役にも立たず迷惑をかけ続けた自分に何ができるのか。



「わかんないよ」



一人寂しい帰り道ひたすら考えたが答えは見つからなかった。




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