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おもらし精霊記(仮)  作者: ビタワン
3/3

コミュ障精霊と王子と神様1

「ぐっ……わが、神の……痛みを、知れ!邪悪な……精霊よぉ!」


うごめくボロ雑巾が叫ぶ。

正確には、ボロ雑巾のように酷いありさまの男の人なんだけど。あ、咳き込んで……血を吐いた!?


手を前に突き出し、彼の体を癒すイメージで信仰パワーを使う。

最近、持て余すぐらいに過剰供給されるこの謎パワーは途端に効果を表し傷を癒してしまった。でも、これで彼を癒すのは3度目になる。


始めは、風呂あがりの風に当たりたくてツネキチ君に乗せてもらって散歩してた時のこと。景気よく森を駆け抜けていたツネキチ君が急に立ち止まり「しっかり捕まって」と意思を伝えてきた。なんだろうと思いながらもツネキチ君の胴を両足で挟み、背中に体を預けてしがみ付いた。すると、ばっしーんという重めな音とともに彼のしっぽに何かがはたき起こされ、その後私たちの後に続いていた仲間たちに踏まれたり引っかかれたりぼこぼこにされてしまった。

……その凄惨な光景に、ちょとばかし下着を濡らしてしまったけれど、それはともかく。


なぜかこの男の人は、癒すたびに私に恨みの言葉を掛けながら襲い掛かろうとしては森の仲間たちにボロボロにされるという流れを繰り返してて、正直襲われる心当たりのない私は困惑することしかできない。その迫力に下着が少しずつ冷たくなっていったけど。


「おのれ…!ゆるさ、グハッ!」


今度は低い体勢から私の足を掴もうとして、さらに低い位置からウサギのぴょん吉一家の弾丸体当たりでふっ飛ばされた。うわぁ、すごーい人間の体って浮くんだ……。いやいや。


「どうしよう……ねぇ?」


残った仲間たちに問いかけてみたら、いっせいに小首をかしげるしぐさ。

ぐそ、可愛いぞこいつ等。ちょっと胸が高鳴ったじゃないか。でも何も解決してないんだよね。





「つ、つまり、わ、わたしがそのミ…なんとかの神様の」

「ミーズレアム様だっ!」

「ひぃ!……み、みーじゅれあむ様の力を、う、奪ってると?」

「そうだ!このっ……しらじらしい!」


なんとか(動物たちの圧力もあり)大人しくなってくれた彼に事情を聴いてみる。人に逢わない生活を10年以上続けてた私は立派なコミュ障になっててうまく喋れなかったり、それに男の人が怒ってしまって、私が涙目に。それに動物たちがいきり立って……というトラブルも乗り越え、その内容をまとめてみると。


『彼の国では長い間、瘴気の風を受けた人々が魔物のような風貌に変節する被害が頻発している。一度変節したしてしまった人は元に戻らず、いずれ瘴気が保てなくなって暴れまわり自滅する。ある日、彼の国で祭っている神様(ミー…なんとか様?)が王族に神託を授けた内容が「悪しき精霊が瘴気を浄化する力を世界から奪っている。その力は本来、神々が使用すべき力だ。悪しき精霊を滅ぼすべし」という内容であった。』


と、なんかとんでもない冤罪を掛けられてるし、命狙われてるしでぷるぷる膝が震えて来たよ。怒りやら恐怖やら、色んな感情がごちゃ混ぜになって半泣きになりながら、ようやく絞り出した私の言葉は


「わ、わわ、わたし、悪い精霊じゃ、ないよ…?」


論理的な反論でも何でもない、泣く寸前の幼い子供が「私悪くないもん」呟くようなそんな内容で。なんだか周りがいたたまれない空気に包まれた。私は自分自身に呆れた。でももう限界、コミュ障の精神限界の低さ舐めるなよ。泣くぞ、マジなトーンでギャン泣きするぞ?

涙目でそんなことを考えていると、彼は「あー…」とうめいた後


「すまん」


そっぽを向いて、ばつが悪そうに謝罪した。

そして気が抜けたとばかりに、どかっとその場に腰を下ろした。


いつの間にか、私の足元が輝き始めていた。

私は無言でパンツを脱いだ。ぐっしょりとぬれた布地は重かった。

長くなったので分割しました

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