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第13話 きっかけ

「皆さん今戻りました」


 そう言いながらギルドの扉を開けて中に入った途端にドタドタ!という走る音が聞こえてきた。


「お帰りなさいギルド長」


 そして一番最初にこちらにつきそう言ったのはカルプさんであった。その後に続くようにクレレさん達が来た。


「お酒は!?」

「無いです」


 そんなー・・・と言いながらうなだれるクレレさん。といういか誰が酒を買いに行ったと言った。


「「「お帰りー!!」」」


 そして次にお帰りを言ってくれたのは三姉妹だった。・・・ただその何かお土産は?っていう目が無ければ素直にただいまと言えたと思う。

 そんな三姉妹をスルーしつつ1人足りてないことにナルは気付く。


「あれ?パタカさんは?」

「ああ。それならアレ(・・)です」

「ああ・・・アレ(・・)ですか・・・」


 好奇心があることはいいことだとは思うが最近のめりすぎじゃないか?

 そんな風に心配顔になっていたナルをカルプは察したように言った。


「大丈夫ですよ。あの子あれでちゃんと生活の仕方は規則正しいですから」

「いやそれでも・・・ねえ?」

「まあ、やりすぎだとは思いますが・・・」


 でしょうね。まあ、料理人として新しいレシピ(・・・・・・)を試したい(・・・・・)のはわかるけど・・・

 そうパタカさんのアレとは料理研究である。

 最近、俺が教えたレシピを覚えながら工夫をしていくということを繰り返している。ただ休憩時間もそれに全て掛けているいるためいつ休憩しているのかわからないぐらいである。


「それよりもです。いい加減後ろの子達を紹介してくれると嬉しいのですが?」

「おっとすみません。それじゃ全員自己紹介と行きましょうか」

「その前に主殿。その口調はいったいなんなのじゃ?」

「まあ、仕事状態だとでも思ってくれ」

「休日でも私たちに対してはその口調だったような気がするのですが?」

「うっ・・・それはーーーそのーーー・・・」


 ・・・はっきり言おう。心の中でだが・・・

 全員年上なのにタメでなんて話せるかーーーー!!!

 これは日本で生まれたが故の癖のようなものだった。

 基本的に日本人は相手を優先して話す。人にもよるが・・・

 習慣として身についたこれは中々に直せなく、今もカルプさん達にも敬語を使っている。

 まあ、時々タメ語と敬語が混ざって話すようなこともあるが・・・


「ほほう・・・主殿は年上の女子(おなご)に弱いのじゃな」


 あながち間違ってないから何も言い返すことなんてできないや。あははははは・・・・はあ・・・


「我が王は年上の女性に弱い・・・いえ!そんなことはありえません!何故なら我が王は偉大。きっとそのように見せているだけです!!」

「ちょっとレジスタは黙ってようか・・・」

「ハッ!我が王の命令ならば!」


 そして黙んまりするレジスタ。

 

「クンクン・・・うまそうな匂いがするのだ!!」

「勝手に行っちゃ駄目だよリューちゃん!」

「何事も平常心が大事なのです。ならば!精神統一のために座禅を!!」


 わーい・・・ココノツがきっかけで全員暴走し始めたぞー・・・・・・どうしろと?


「随分と賑やかな子達ですね」

「カルプさん笑顔のままで背後に殺気を具現化するのやめてください」

「ええ。大丈夫です。私は冷静ですよ。ただギルド長にこの子達を選んだ理由を聞きたいだけですから。

ええ。はい」


 こめかみの所に怒りマークをつけながら言われるだけでも十分怖いんですが・・・

 

「理由ならお話ししますから。というかその話はおいそれとできる話じゃないんで後でギルド長室で話します」

「・・・訳アリですか?」

「当たらずと(いえど)も遠からずって所ですかねえ・・・」


 そう。訳アリというか訳しか無いのだ。

 すでに有り無しの問題ではなく視えて以上引き受けなければ予想通りであれば関わっている種族すべてが全面戦争になりかねない。

 というか考えてもみればあの奴隷商人、扉に精霊魔法を付与していたっぽいし。

 そこで疑問に思ったナルはカルプにエルフには奴隷商がいるのか聞いてみた。


「・・・いいえ。そんなのは絶対にいません(・・・・・・・)断言できます」

「何故?」

「エルフは基本的に自尊心が高いのが普通ですが同時に穢れも嫌います。それが奴隷となればエルフにとっては穢れのそのものを扱うということになるのです」

「・・・なるほど」


 確かにそう考えるとおかしい点は多くあった。あの時は衝動を抑えながらだったから早く出たいと思って・・・待てじゃあ、あの嫌悪感はいったい?

 そこまで考えてナルはあるひとつの可能性に気がついた。


「カルプさん闇魔法って人に嫌悪感を与えることってできますか?」

「え?は、はい。ですがエルフは闇魔法の適正がほとんどありませんが?」

「それでもほとんど(・・・・)ってことは少数はいるってことですよね?」

「はい・・・まさか?」

「ええたぶんそれでしょう」


 闇魔法に疑似的な嫌悪感を発生させそれに耐えれない人は入れない。そして耐えれる物は入れる。

 そして、店に入ったときの顔色により善悪を見極めるって所か?そしてもうひとつ・・・

 

「・・・カルプさん奴隷紋ってどういうものですか?」

「え?えっと奴隷紋は左手の甲の所に赤い魔法陣が描かれているものです」

「もうひとつ腕に針ようなさされた感触がある場合の契約内容は?」

「それは親と子だということを証明するための身内契約だったと思いま・・・ってどうかしたんですか?」


 カルプが発言を途中で止め疑問に満ちた声を出したのも無理はない。その言葉を聞いた瞬間にナルはズーーーーンと床に手をつきながら急に落ち込んでいたからだ。

 要するにあれか俺は見事に押し付けられたと・・・・・・いやまてだったら何故アミュシスは盗賊に捕まったと・・・ああなるほどその場面を目撃したエルフがそのまま精霊魔法で対象をごまかしたのか。


「あー・・・どうしよ本当・・・」

「そこまでの訳アリですか?」

「まあ・・・ぶっちゃけた話結構やばいです」

「えっと・・・それはギルド長が死ぬ可能性という意味でですか?」

「いいえ。というかさらりとひどいですねカルプさん」

「そうですか?私達の総意ではギルド長は死んでも死なないだろうっていうことになりましたが・・・」

「はあ・・・まあ今はその話はいいです。それでどれくらいやばいというとですね・・・」

「はい」

「戦争」

「はい?」

「だから戦争です。しかも他種族での戦争。おまけに狼獣人族と魔族は盟友、つまるところ同盟を組んでいるわけでして人族は二方向から攻撃を受けることになりますね」


 話をしているうちにカルプの顔は段々と真っ青になっていった。

 

「やばいじゃないですか!?どうするんですか!!!」

「1つは狼獣人族と魔族の国まで行って説得する。2つ目は人族の貴族が滅びるのを放置する。これのどっちかですね」

「今すぐ説得しましょう!ええすぐに!」

「いやでもですね?はっきり言ってここの貴族はどうでもいいんですよ。むしろここは狼獣人族と魔族に手を組まないか相談してみるのも手かなと。幸いギルドはどの国にも存在しているみたいですし」


 農民や平民には手を出さない殺さない、そして人を使って遊んだりしないという契約をすれば腐っている貴族を一掃できそうだ。そういえばネージュは貴族だったけ?・・・そうすると善人派の貴族を調べとかないとな。


「いやそれはそうですけど・・・でも・・・・・・待って意外といけるかも?」

「何かいい案が?」

「いえ案と言うほどでは無いんですがガルセル様に連絡をしてみるのがいいかと思います」


 あの爺さんにか・・・だがあの爺さんがこの話に乗るか?

 少し悩んだ顔を見せたらカルプは確信を持った顔で言った。


「大丈夫です。あの方は誰よりも人のことを思っている方です」

「・・・今回はカルプさんを信じましょう」

「ありがとうございます」

「ただしこちらも保険は準備させてもらいますよ」

「大丈夫です。ガルセル様は絶対にこの話に乗ります。何故なら・・・」

「何故なら?」

「いえなんでもありません。とにかく大丈夫だと思います」

「まあとりあえず連絡だけはしときます」

「お願いします」


 さて色々と問題が山積みだがどうにかしないとな。

 まずは保険だが・・・


「そうそう。ギルド長の作る料理はおいしいんだよ」

「む!ならば花嫁修業を受けた私がご主人様よりもおいしい料理を作って見せましょう!」

「!!!クイラの種族は確か東方だったはず・・・!なら未知の料理が・・・!!」


 保険・・・・・・・


「ほほう主殿はそこが弱いのかのぅ?」

「そうだよ。時々こう突くと「うひぃ!」って声を上げるんだ!」

「他には何か無いかのぅ?」

「他にはねー・・・」


 ほ・・・・・・・・・


「2人は友達なの?」

「違うのだ!」

「え!?」

「盟友なのだ!!」

「だからそれは言っちゃダメだよリューちゃん!」

「ほむほむ百合ですなあ~」

「「百合?」」

「そうそう女の子どうしで・・・わっ!?」

「あはははは!!?妹がごめんね!?このお馬鹿が言ったことは気にしなくていいからね!?」


 ・・・・・・・・・明日にしよう。うん・・・別に真剣に考えるのが馬鹿らしくなったけでも呆れたわけでもないからな。

 でも・・・疲れたよ。色々と・・・・・・

 意外にもこれからのことを思うよりも彼女達の会話で気が一気に抜けたナルはどっと押し寄せた疲れを引きずる様に彼女達の前から自分の部屋のベットへと直行したのであった。


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