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第1話 人生などこんなものだ

 人は常に平等である。

 そう平等であるはずなのだ。

 だが世の中というのはその平等(・・)という言葉が便利に使われている。

 例えばだ。『俺はお前がしてきた仕事をしてきたんだ』というやつがいるが実際はそんなことはしていないだろう。

 何故そんなことがわかるか・・・それも実に簡単だ。

 そういうことを言う奴こそが『平等だ』とか『それが仕事だ』とか言う。

 実際はそんなことは無い。

 そこにあるのはただ不平等な環境と不快な人間関係だけだ。

 

 23歳独身、新入社員になったばかりの一之深成(いちのみなる)が一番に考えることだった。

 そして新入社員となり4ヶ月が過ぎようとした頃だった。

 一之深成はあることを思いついた。

 何でいままで気づかなかったのか・・・そう思うほどに。

 内容は簡単だ。

 会社のやっていることをすべて表沙汰に出せばいい。

 そうそれはとても簡単だ。

 ただ会社のパソコンにアクセスして厚生労働省に叩きつければいいだけだ。

 別に職を失おうとかまわない。

 ただこの理不尽をつぶしたい。

 その一心で一之深成は会社が持っているあらゆる黒い情報を流した。

 その内容は残業の過剰超過、休日返上、給料の表記詐欺、有給休暇を取らせてない、パワハラ、自殺した者の誤魔化しなど色々と流した。

 まあ、でるわでるわ少しパソコンを開きデータを見るだけで異常だということがわかる。

 これが厚生労働省を動かす理由となり一之深成がいた会社は信用を失い倒産した。

 自業自得である。

 人を奴隷の用に働かせて給料は普通よりも減らすなど腐ってる人間がやることである。

 そこまでして会社を続けたいならもっとマシな考え方はできなかったのだろうか?

 

 そして一之深成は無事に自分がいた会社を潰したことに満足し家に帰っていた。

 踏切が鳴り自然と足を止めた。

 その瞬間悪寒が走った。

 その悪寒の正体を突き止めようと後ろを振り向くと同時にドスッ!という音がした。


「え?あ・・・」


 その音がした所を見た。そしてそれは一之深成が刺されたということを証明した。

 我ながらに間抜けな声がでたと思う。

 こうして俺は死ぬのかと思ったが目の前の男に見覚えがあった。

 ・・・潰した会社の社長であった。


「お前が悪いんだ!!俺がせっかくあそこまで育てた会社を!!」


 その言葉を聞き鼻で笑ってしまった。

 そしてこう返してやった。


「別に俺を殺そうとそれが元に戻るわけでもないし全ての元凶は貴様だこの阿呆が」


 そう言い切った後ゴフッと血が口から出てきた。


「知るか!知るか!知るかああああああ!!!」


 ドス!ドス!ドス!ドス!ドス!と何回も刺された。

 それでも一之深成は言葉を紡いだ。


「お前が・・・ゴフッ・・やったことはただの犯罪だ・・・・・・!!」

「うるせええええええええええええええ!!!!!」


 どこにそんな力があるんだと思うぐらいの勢いで踏み切りの上へと押し出された。

 ・・・もう体は動かない。

 だがやりきった。スッキリした。たった23年しか生きてないが後悔は無い。

 いや・・・ひとつあったか・・・

 母さんに親父・・・親不孝者で悪いな・・・・・・

 そして頭に浮かぶのは走馬灯であった。

 

 ああ・・・なるほど・・・・・・やっぱり人間努力したって結果が全てか・・・


 そこに浮かんだのは己の人生。

 頭が悪くいくら勉強しても内容が全く入ってこなかった自分がそこにいた。

 どれだけ努力してもどれだけ頑張っても認める奴なんて一人もいなかった。

 だからこそ諦めた。

 人から信用してもらうのを、こっちから信用するのも。

 信用に対する等価は裏切り(・・・)だ。

 それが23年間生きて唯一気づいたことだった。

 

 結局俺は誰も信用してなかったのか・・・

 

 近くに電車の音が聞こえる。

 そしてそれが一之深成という男の人生の最後だった。



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