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『十二星天の裏支配者 〜追放された雑用係、実は星座を喰らう最後の蛇でした〜』  作者: パーカー
『星なき少年、蛇を宿す』

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第4話 『天秤は揺れる』

牡羊王国軍が学院を包囲。

地下拘束室にいるアルクは、完全に包囲網の中心。

そしてここで――

“天秤”が現れます。

拘束具が、ひび割れた。

ギシ、と鈍い音。

教師たちが一斉に魔法陣を展開する。

「動くな、アルク!」

学院長の声が飛ぶ。

だが地上から伝わる魔力圧は、すでに学院の結界を揺らしていた。

重い。

まるで空そのものが敵意を持って押し潰してくるようだ。

牡羊王国軍。

星持ちの騎士団が、本気で来ている。

「今、解放すれば戦争だ」

学院長が低く言う。

「引き渡せば、ここで処刑される」

シリウスが補足する。

「どちらにせよ詰みだね」

他人事のように言うな。

俺は息を吐く。

蛇が、胸でゆっくりと脈打つ。

殺意。

地上から向けられている、無数の敵意。

条件は満たされている。

奪える。

だが――。

「その前に」

地下室の扉が開いた。

白銀の外套。

胸に刻まれた、均衡の紋章。

左右に傾いた天秤。

リゼ・ラブラドール。

双王学院、裁定執行部代表。

天秤座の星紋保持者。

彼女は真っ直ぐ、俺を見る。

その瞳は冷静で、揺れがない。

「アルク・ノクス」

声は静かだ。

だが地下室の空気が、ぴたりと止まる。

「あなたの処遇を、私が裁定する」

教師が息を呑む。

「リゼ、それは……」

「学院長の許可は得ています」

学院長は無言で頷いた。

リゼが俺の前に立つ。

近い。

星紋が淡く光る。

不思議な感覚だ。

敵意はない。

殺意も。

ただ――“秩序”の意志。

「一つ聞きます」

彼女は言う。

「あなたは、意図して奪ったの?」

嘘は意味がない。

蛇が、嘘を嫌う。

「……奪えると分かった瞬間、止めなかった」

リゼの目がわずかに細くなる。

「では、後悔は?」

その問いに。

少しだけ、迷う。

レグルスの顔が浮かぶ。

恐怖に歪んだ目。

星を失った瞬間の、空白。

俺は答える。

「……ない」

リゼは黙る。

そして言った。

「最低ね」

だが、その声は怒りではない。

観察だ。

「でも」

彼女の天秤が、淡く揺れる。

「あなたは嘘をついていない」

教師が戸惑う。

「何を根拠に……」

「天秤は均衡を見る」

彼女は俺を見続ける。

「彼の中にあるのは、悪意ではない」

「危険だけれど」

地下が揺れた。

爆音。

結界の一部が破壊されたらしい。

伝令が飛び込む。

「王国軍、第一結界突破!」

時間がない。

リゼが俺に一歩近づく。

「アルク。答えなさい」

まっすぐな視線。

「あなたは、この学院を守る?」

胸の蛇が、ぴたりと止まる。

守る?

俺を処刑しようとした連中を?

嘲笑が浮かびそうになる。

だが。

ここには、関係ない生徒もいる。

星を持つ者も、持たぬ者も。

利用されているだけの連中。

「……守る理由はない」

リゼの目が冷える。

「でも」

俺は続ける。

「壊されるのは気に食わない」

沈黙。

ほんの一瞬。

彼女の天秤が、大きく揺れた。

そして、静止。

「裁定を下します」

地下室全員が固まる。

リゼは高らかに告げた。

「アルク・ノクスの引き渡し要求を拒否」

教師たちがどよめく。

「なっ……!」

「理由は三つ」

彼女は淡々と言う。

「第一。学院は中立」

「第二。星紋奪取は未定義事象」

「第三」

俺を見る。

「彼はまだ、世界を壊していない」

シリウスが笑う。

「面白い判決だ」

リゼは拘束具に手をかけた。

「ただし条件付き」

俺を睨む。

「学院防衛に協力すること」

「逃亡は許さない」

「裏切れば、私があなたを裁く」

その言葉には、初めて“殺意”が混じった。

ぞくりとする。

蛇が、わずかに反応する。

リゼは気づく。

一瞬、視線が落ちる。

「……今、何か反応した?」

「さあな」

俺は笑う。

彼女が拘束具を解除する。

魔力が戻る。

一気に。

地上からの圧が、はっきりと分かる。

王級。

来ている。

「アルク」

リゼが言う。

「あなたは怪物かもしれない」

視線は逸らさない。

「でも、怪物にも選択はある」

地下が、再び大きく揺れた。

天井に亀裂。

時間切れだ。

俺は立ち上がる。

蛇が、蠢く。

牡羊の炎が灯る。

リゼの天秤が光る。

「行くぞ」

短く言う。

リゼは頷いた。

その瞬間。

地上から、圧倒的な声が響いた。

「アルク・ノクス!」

学院全体に轟く威圧。

「我が子の星を奪いし者よ!」

王だ。

牡羊王。

その怒りが、空を焦がす。

俺は笑った。

「歓迎が派手だな」

リゼが呟く。

「死ぬわよ」

俺は答える。

「まだだ」

蛇が、静かに目を開く。

学院防衛戦、開始。

第4話でした。

・天秤ヒロイン本格登場

・裁定システム提示

・主人公とヒロインの思想差

・王、到来

次話――

王級星紋との初激突。

学院が崩れます。

止まらない章、突入。

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