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『十二星天の裏支配者 〜追放された雑用係、実は星座を喰らう最後の蛇でした〜』  作者: パーカー
『星なき少年、蛇を宿す』

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第一章エピローグ 『星が動いた夜』

夜。

双王学院の屋上は、静まり返っていた。

壊れた石畳。

焦げた塔。

空に残る、消えきらない亀裂。

その下に、シリウス・ジェミニは一人立っていた。

「行ったか」

小さく呟く。

森の向こうへ消えた気配。

十三番目。

アルク・ノクス。

「想定より、早い」

双子座の紋章が左右で反転する。

右は冷静な計算。

左は微かな期待。

背後から足音。

学院長だ。

「……本当に行かせたのか」

「ええ」

シリウスは振り返らない。

「囲えば潰される」

「動けば均衡は揺れる」

「揺れた方が、まだマシです」

学院長は空を見る。

十二の星が、わずかに明滅している。

「管理者まで出るとはな」

「想定内です」

嘘だ。

ほんの少しだけ、想定外だった。

天界があそこまで直接介入するとは。

「お前は、どこまで知っている」

学院長の問い。

シリウスは微笑む。

「十三番目が“最後の王”であること」

「七つを超えた時、世界が再編可能になること」

「そして」

空の亀裂を見上げる。

「あの先に、本体がいること」

学院長の目が細まる。

「本体……」

「星座制御中枢」

「世界を裏から制御する装置群」

双子座が淡く光る。

「十二は歯車」

「十三は鍵」

静寂。

遠くで雷が鳴る。

一方。

牡羊王国、王城。

アレクトルは玉座に座り、拳を握っていた。

「蛇遣い……」

床に刻まれた巨大な牡羊紋章が、揺らぐ。

王の胸には、わずかな違和感。

アルクに触れられた、あの瞬間。

“何かを削られた”感覚。

「七つ集めれば起動、か」

低く笑う。

「ならば六つまでは、泳がせる」

周囲の側近が息を呑む。

「陛下……?」

「王は最後に喰らわせる」

炎が強く燃え上がる。

「王の格を見せてやろう」

蠍王国、地下神殿。

暗闇の中、仮面の集団が円を描く。

中央に、細身の男。

胸に深紅の蠍紋。

「十三番目、動いた」

低い声。

「暗殺教団はどう動く」

仮面の一人が答える。

「捕縛ではなく、接触を推奨」

「王家派は討伐を主張」

沈黙。

男は笑う。

「殺意が必要、だったな」

「ならば最高の殺意を用意しよう」

深紅の蠍が、不気味に輝いた。

そして。

森の奥。

焚き火の小さな火が揺れる。

アルクは木にもたれ、目を閉じていた。

リゼが静かに天秤を展開している。

「まだ、追跡は遠い」

「……そうか」

アルクの胸。

蛇・牡羊・蠍。

三つの星が脈打つ。

その奥。

もっと深い場所で、何かが動く。

黒い空間。

未来のアルクが、静かに立っている。

「始まったな」

現在のアルクが問う。

「七つで本当に選べるのか」

未来の自分は答えない。

ただ、背後を示す。

そこには。

崩れた世界と、再編された世界。

二つの光景。

「選択は力じゃない」

未来の声が響く。

「覚悟だ」

焚き火の火が、ぱちりと弾ける。

アルクは目を開けた。

空の亀裂は、まだ閉じない。

遠くで、十二の星が瞬く。

「七つ」

小さく呟く。

リゼが横目で見る。

「集めるのね」

「ああ」

迷いはない。

だが狂気もない。

「壊すためじゃない」

静かな声。

「選ぶために」

その瞬間。

夜空のどこかで、星が一つ強く輝いた。

それは偶然ではない。

世界が、観測している。

十三番目を。

星を喰らう蛇を。

第一章――完。

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