わらしべ長者の末裔
和田志穂は外国語学部を卒業して、フリーの通訳をしている
今日は祖父の葬儀の後に家の後片付けを頼まれた
祖父の家は広かった
神棚をよく見ると、何故か藁が祀られていた
仏壇を手前に移動させて掃除をしていると、裏側に家系図を発見した
先祖を辿っていくと、わらしべ長者にいきついた
昔話で聞いたことがある
藁を物々交換していくと、最後に金持ちになる話だ
それで、藁を祀っているのか
翌日、志穂は昔話通りに藁を持って散歩に出かけた
すると前を走っていたママチャリが、フラフラとして電柱にぶつかった
大丈夫ですかと、声をかける
怪我は無かったが、衝撃でカゴが外れている
そこで志穂は藁を使って、カゴを自転車に縛り付ける
主婦らしき人は有難うと言って、チョコレートをくれた
山道を登っていくと、助けてと崖の下から声がする
首を伸ばして覗き込むと、下の方に老人が倒れている
どうしたのか聞くと、キノコ採りの帰りに崖から落ちて、足を骨折して動けないと返事があった
志穂はスマホで救急車を呼ぶと、回り道をして崖下に到着する
救急車を呼んだから元気出してと、チョコレートをあげた
やがて、救急車が到着して救急隊員が老人を運んでいく
別れ際、老人は御礼に木の側の袋の中に松茸が入っているので収めてくれと言い残す
帰宅しようと近くの旅館の前を通ると、女将がぼやいていた
どうしよう、もう直ぐ大臣の息子の見合いの席に松茸料理を頼まれていたのに未だ届かない
志穂はピンときて女将さん、もしよかったら、この松茸を使って下さいと渡す
女将は喜び御礼に一晩泊まっていく様に勧められた
部屋で一休みしてベランダに出ようとすると、隣のベランダから外国語が聞こえてきた
通訳である志穂は頭の中で日本語に変換した
(このワインね)
(そうだ、右翼の大臣には毒入りワインを飲ませるのだ、本国からの特命だ)
志穂は大変な事を聞いてしまった
そうか、松茸料理の席で大臣を暗殺する計画か
ロビーに向かうと、どうやら大臣が到着して息子が出迎えている様だ
息子は長身でイケメンだ
映画みたいな事を言っても信じないだろうなぁ
そこで志穂は、持っていたセンスにメッセージを書いた
[お相手スパイ、大臣毒殺、ワインを相手に勧めれば判る]
2階の通路から1階の息子を目掛けて、センスをフワッと投げた
センスのメッセージを読んだ息子は驚く
一瞬目があったが、これ以上は危険なので部屋に戻った
夕食を頂いていると、パトカーのサイレンが聞こえた
きっと暗殺を防ぐ事が出来たのだろう
温泉に入りグッスリ眠った
翌朝、女将に挨拶をして旅館を出る
外には車が停っていて、窓から息子が顔を出す
昨日の礼だ、送って行くよ、君には聞きたい事もあるしな
志穂はトキメキを感じながら、昔話を思い出した




