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失われた記憶は魔法で取り戻せますか?~運命に導かれた少女たちの冒険録~  作者: 彩空蛍


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3/3

完成された町

「大丈夫? ハナニラちゃん」


「うん...大丈夫」


「大丈夫そうだね...私の手...要らなかったかな...」


「そんな!」


 ハナニラは急いで手を伸ばしたが、そこには何もいなかった。代わりにまぶしい朝日がハナニラの泊まっている部屋を明るく照らしていた。




「夢をみた?」


 朝、一行は朝食を食べながらきれいな花々で飾られた街を歩いていた。


「うん...」


「どんな感じの?」


 フレンが興味をしめす。


「うーん、よくわかんない。もしかしたら、私の過去かも」


「記憶が戻ってきたってこと? それならおめでたいね!」


 フレンが嬉しそうに言う。反対にクルルは少し不思議そうだ。


「ハナニラはその過去のこと、記憶してるの?」


「うーん、あんまり」


「普通、夢っていうのは記憶をもとにしてできるもの。記憶がないのに『夢を見る』は起こりえない」


「じゃあ、私が見た夢は...」


「おそらく、ハナニラの過去で、記憶は『完全に消えている』のではなく、『蓋をされてる』っていう言い方が正しいかも」


「蓋をされてる...」


「うーん、なんか難しい話になってきたねぇ」


 朝食のスミレパンを食べながらフレンがやれやれというように首を横に振った。


 ハナニラも買ってもらったスミレパンを食べた。スミレの甘い匂いがしておいしい。でも、あの夢の中で差し伸べてくれた手はまだハナニラの頭に残っている。あれはクルルが手を貸してくれた時に思い出した手にそっくりだった。あれはきっとハナニラの過去。


「今日は何しようか? 私はハナニラの過去の謎を解き明かすのもアリだと思う! お金は結構余ってるから稼ぐ必要もないし」


「『記憶に蓋をして思い出せないようにする』こういうのは中央諸国の研究対象だったはず」


「中央諸国…」


「中央諸国はここよりも北に行ったところにある、文字通り魔法界の中心の国々のこと」


「そこに行けば私の記憶についてもっとよくわかるようになるの?」


「確証はないけど、そうなる可能性が高い」


「でも中央諸国はここから遠いんだよねー、とりあえず今日はここの図書館で探してみようよ!」


 そういうことで一行は「花の姫君」の姫立図書館(きりつとしょかん)にむかった。この街の表通りはどこもきれいで眺めているだけで憂鬱な気が吹き飛んでいく。ハナニラも最初は見つかるわけがないと思っていたが、図書館につく頃にはもしかしたら見つかるかもという希望でいっぱいだった。


「ここが」


「そう、ここがオリーブ姫立図書館(きりつとしょかん)だよ! きれいだよね~」


 ハナニラは思わず息をのんだ。世界中すべての花が飾られているのではないかと思うほど大小、色も様々な花に飾られた建物は、この街を象徴する存在としてぴったりだ。


「はいるよー」


 室内は外観と同じくらいきれいで、柔らかい花の匂いがハナニラの鼻を満たす。大きなエントランスホールの奥にたくさんの本棚があり、さらに左右から上の階に続く階段の奥にも本棚があるように見える。


「それじゃあみんなで手分けして探そう!」


 三人はそれぞれ分かれて目的の記憶に関する本を探しに行った。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「うーん」


「ガーデニングの本ばっかりだねー」


 一行はすっかり忘れていた、なぜこの街が「花の姫君」と呼ばれているのかを。この街は繁栄の光とその陰のバランスがしっかりと保たれていて、時が止まったかのように穏やかに過ごしている。これ以上の生活を人々は求めていないのだ。だから魔法の研究よりも花の研究に労力を注ぐ人が多いのだろう。「花の姫君」は完成された街なのだ。


「記憶…記憶…き…き…」


 ハナニラは本の背を指でなぞりながら記憶に関する魔術が書かれた本をさがす。一度「記憶」という文字を見かけたが「記憶するのも面倒なあなたへ!! これを読めば全部カンペキ! ~様々な花の育て方~」だった。


(やっぱり中央諸国へ行かないと…)


 結局目当ての本を見つけることはできず、ハナニラは重い足取りで二人と合流し、宿に帰ることになった。

 夕暮れ時、きれいな黄金色に照らされる色とりどりの花の街の景色と対照的に、ハナニラの心には黒い霧が立ち込めていた。朝にはおいしく食べれていたスミレパンが今はぼそぼそした味のしないパンに感じる。


「ハナニラ、大丈夫?」


 フレンが心配そうに聞いてくる。


「…フレンはさ、のどから手が出るほど欲しいものとかあったりする?」


 ハナニラはうつむきながらフレンに問いかけた。


「え? うーん、まあ、あるにはあるかな?」


 少し動揺した様子でフレンは答えた。


「それを手に入れるチャンスがあるってなったらどうする?」


 ハナニラは少し間を開けてつづけた。


「私は掴みたい、目の前にチャンスがあるなら。だから、中央諸国へ行きたい」


「いいね! いこうよ!」


「うん、それが正しいと思う」


 二人ともすぐに了承してくれた。


「そうと決まれば早速準備だね! 今日中に荷物まとめて、明日にはもう出発しよう!」


「一緒に行ってくれるの?」


「もちろん! ワクワクするし!」


「どうやって行くか計画も立てないと…」


 地図を開きながらクルルが言った。


「ん~、ハナニラはどこか通りたいところとかある?」


「私まだこの街から出たことないんだけど…」


「そうだった! すっかり忘れてたよ! 明日は楽しみにしてて! この街の外にも楽しいことたくさんあるから!」

ここまで読んでくださりありがとうございます。長い間更新できておらず申し訳ありませんでした。もしよければ感想などくださるとうれしいです。

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