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ep.5「人生に行き詰まったときは、とりあえず異世界にでも行っとけ」(前編)

今日もBAR『夜魔』は賑わっている。

照明は少し落とされ、ジャズが低く流れていた。

グラスの氷がカランと鳴るたび、夜魔は無意識にリズムを取る。


カウンター越しに客を眺めながら、夜魔は心の中でぼやいた。


(ふ〜。少し落ち着いたか。

ていうかなんかウチの店ってフレッシュさというか、爽やかさみたいなものがないよな。

……っていうか、おっさん多くね?)


視線を右へ。

スーツ姿のサラリーマン。

左へ。

ワイシャツの袖をまくったサラリーマン。


(おい待て!?おっさんしかいねーぞ?

なぜだ?なぜ若者がいない!?

……目の前にも、おっさんが2人。)


「おいこら!誰がおっさんだ!」


(ちなみに彼の名は礼堂信介。35歳。理屈っぽくてプライドの高いバカなおっさんだ。)


「夜魔さん!あんたの方がおっさんだろうが!」


(隣の彼は冬月拓真。仕事でミスばかりするくせに指摘されるとキレるプライドの高いバカなおっさんだ。)


礼堂:「それやめろ!聞こえてるんすよ!ナレーションな感じにしてるけど全部漏れちゃってるから!」


冬月:「俺の紹介なんてめっちゃ悪口じゃねーか!」


夜魔:「いやいやすまないね。つい本音が。」


(本音が……じゃねーよ。)

礼堂と冬月は同時にツッコんだ。


夜魔はグラスを拭きながら、ふと真顔になる。


夜魔:「今パッと店内を見渡したんだがな……ウチの客。年齢層高くないか?

なんかもっとこう、華やかな若者とかいないよな。全然見かけないよな。」


礼堂:「んまぁ俺達くらいですかね。」

冬月:「な。確かに他に若い客いないよな。」


夜魔は思う。

(うるせぇ勘違い中年どもが。テメェらもうおっさんに片足どころか両足突っ込んでんだよ。半身浴しちゃってんだよ。)


夜魔:「いやさ〜、やっぱり若者も来れる流行のお店でありたいじゃん?

このままじゃいずれBARっていうか老人ホームになっちゃうよ。白湯とか提供しなきゃいけなくなるよ。」


礼堂:「あ〜。なるほどですね。じゃあなにか流行を取り入れた方がいいですね。」


冬月:「流行か……。それだったら、あかりちゃんに聞けばいいんじゃないっすか?

流行のど真ん中、女子高生でっせ。」


夜魔:「いやあかりはな〜。試験前で忙しいからな。最近じゃ口も聞いてくれないよ。」


冬月:「嫌われてんじゃないですか?

まぁ親父なんてのは、煙たがれるようになってから一人前みたいなとこありますよ。」


夜魔:「分かったようなこと言うな。バカが。」


礼堂:「あかりちゃん大学行くんですか?」


夜魔:「あぁ。まぁお前らみたいに8流大学行かせるわけには行かないからな。本人もお前らみたいになるの嫌だろうし。」


冬月:「そんなことはない!あかりちゃん結構俺達に懐いてるからね!」


夜魔:「いやそんなことはない!」


冬月:「いや!そんなことはない!」


夜魔:「いいや……そんなことは……っんない!」


礼堂:「分かったよ!いつまでやってんだよ!」


夜魔と冬月がふぅと息をついたタイミングで、

礼堂はグラスを見つめながら呟く。


礼堂:「でも流行を取り入れるっていっても、こんなおっさん3人で考えてもな……。」


冬月:「ふっ……ふふふ。」


礼堂:「何笑ってんだよお前。気持ち悪いな。」


夜魔:「そうだぞぉ冬月。けどまぁ何かあるなら聞いてやらないこともないぞぉ。

さっさと具体的に言ってみたらどうだぁ。」


礼堂:(夜魔さんめちゃめちゃ気になってんじゃねぇか。)


冬月:「はははは!態度を改めよ諸君!!我の前に平伏せ!」


礼堂:「……。」

(出たよ。どうせいつものくだらない思いつきだろ。)


礼堂が呆れ顔でカウンターを見ると、夜魔の姿がない。


(あれ?夜魔さん……?)


「ははぁ〜!!!」


声の方を見ると、冬月の目の前で片膝をつき、頭を下げている夜魔の姿があった。

その姿は、もはや武士。


礼堂:「……まぁ、本人がいいならいっか。」


夜魔はまるで忠誠を誓う家臣のように頭を下げ、その背中はやけに真剣だ。

店内の他の客も思わず視線を向ける。

カウンター越しの照明が、二人をステージのように照らしていた。


夜魔:「冬月先生!教えてください!」


冬月はゆっくりとグラスを置く。

目を閉じ、深呼吸を一つ。

その表情には、なぜか“殿様”のような風格があった。

静寂――。BGMが止まったように錯覚する。


冬月:「表をあげい!!」


夜魔:「はっ!!」


夜魔は勢いよく頭を上げ、姿勢を正す。


あまりの真剣さに、隣の礼堂は思わず眉をひそめた。

(なんだこの茶番……腹立つ。)


冬月:「いいですか?若者を掴む“何か”とは……」


夜魔:「はい!」


冬月:「何かとは……」


夜魔:「はいい!」


冬月:「それは……」


夜魔・礼堂:「……ごくり。」


冬月はわざと間を取る。

グラスの中の氷が一粒、音を立てて沈む。

その音がやけにドラマチックに響いた。


冬月:「――異世界だ!!!」


グラスの氷がカランと鳴り、

礼堂の口から深いため息が漏れた。


(はぁ。……絶対くだらねぇ。)


――続く。

キャラクター紹介

礼堂信介らいどう しんすけ

身長178cm

黒髪

若干くせっ毛

•職業: 営業職(一般商社の営業マン)

•年齢: 35歳

•性格: 理屈っぽいが、人の感情を察するのが得意。

だが、時折ひねくれた物言いをする。負けず嫌いな性格。

※『礼堂と冬月の不完全な作戦』の主人公。


冬月拓真ふゆつき たくま

身長170cm

童顔

茶髪

•職業: IT企業のエンジニア

•年齢: 35歳

•性格: 感情的になりやすく、人に怒られるのが苦手。自分のやり方に強いこだわりがあり、他人に指図されることを嫌う。負けず嫌いな性格。性格に似合わず童顔である。

※『礼堂と冬月の不完全な作戦』の主人公。

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