第三百六十八話 今日は軍の施設で治療を行います
数日後、お母さんがドラちゃんに乗って実家からやってきました。
新しい屋敷への引っ越しも婚約披露パーティーも来週なんだけど、何かあったのかな?
「そろそろ屋敷の状況が整ってきたはずだから、明後日まで泊まってくるわ。色々とチェックをしないとならないわね」
「「一緒に行く!」」
カエラとキースまでお母さんと一緒についていくみたいで、さっそくドラちゃんに乗って新しい屋敷に向かって行きました。
うーん、流石お母さんです。
行動力が半端ないですね。
でも、僕は僕でやらないといけない活動があるので、今日は別行動です。
馬車に乗って、軍の施設に向かいました。
「「おはようございます」」
軍の施設に到着すると、一足先に着いていたノリスさんとノーヴェさんが僕に挨拶をしてくれました。
すると、ノリスさんとノーヴェさんは少しキョロキョロとしていました。
「ナオ様、カエラさんとキースさんは一緒じゃないのですか?」
「カエラとキースは、お母さんと一緒に新しい屋敷の様子を見に行きました」
「そうでしたか。何かあったのかと思いました」
ノーヴェさんはホッとした様子を見せていたけど、色々と気を使ってくれたみたいです。
エミリーさんもやってきたので、さっそく今日の任務を始めましょう。
「今日は、ノリスさんとノーヴェさんに自己紹介も兼ねて負傷兵の治療をしてもらいます。スラちゃんはヘンリーさんと聴取の続きをしているので、ノリスさんにはシアちゃんがつきます」
「「頑張ります」」
僕たちは軍の兵と接する機会も多いので、顔を覚えて貰うのも大切な仕事です。
まだノリスさんとノーヴェさんの顔を覚えている兵は少ないので、良い機会なので頑張りましょう。
ということで、さっそく治療施設のある建物に向かいましょう。
「怪我人が入院しているこの建物は、関係者以外立ち入り禁止です。僕たちは特に問題なく入れますが、暫くは、ノリスさんとノーヴェさんだけで入らずに僕たちと一緒に入ります」
安全第一の施設なので、入館は厳重チェックです。
では、さっそく大部屋に入院している人たちから治療を始めましょう。
「おっ、ナオか。今日は新入りも一緒か?」
ちょうど、大部屋に顔見知りの兵がいました。
挨拶ついでに、今日の予定を説明しちゃいましょう。
「新たにパーティに加わった、ノリスさんとノーヴェさんです。今日は、皆さんへの紹介も含めてお二人に治療をしてもらいます」
「ははは、そういうことか。ナオも、随分と偉くなったな」
兵が景気よく笑っているけど、部下を見守るのも大切なお仕事なんだって。
説明もできたので、さっそく二人に治療を始めてもらいましょう。
「ノリスと申します、どうぞよろしくお願いいたします」
「ははは、あんちゃんは緊張しているな。もっと、リラックスしないとな」
ノリスさんは、屈強な兵を相手にして少し緊張しているみたいです。
それでも、シアちゃんと一緒に手際よく治療をしていますね。
「嬢ちゃんは、どっかで見た事があるな」
「その、父が軍人貴族なので、もしかしたらどこかで会ったことがあるかもしれません」
対して、ノーヴェさんはそこまで緊張することなく負傷兵の治療を行なっていました。
ノーヴェさんのお父さんが軍人貴族だというのは、僕も初めて知りました。
もしかしたら、ノーヴェさんのお父さんにどこかで会ったことがあるかもしれませんね。
こんな感じで、順調に一つ目の大部屋の治療を終えました。
では、次の大部屋に向かいましょう。
「そういえば、昔ナオもマリア様に連れられて負傷兵の治療をしていたな。それが、今ではこうして新人を鍛えるようになったのか。次期勇者様も、中々頑張っているな」
「ナオは兵だけでなく冒険者にも顔が広いから、これからどんどんと顔を覚えられるぞ」
負傷兵は、ノリスさんとノーヴェさんだけでなく僕にも話しかけてきました。
僕も、色々な人を治療して知り合ったんだよね。
そんな中、女性兵とエミリーさんはこんな話をしていました。
「エミリー様も、ようやくナオ君と婚約できましたね。最初に二人でいる時から、いつか婚約するのじゃないかなって思っていましたわ」
「本当にようやくですわ。初めて会った時から、二年以上かかりましたわよ」
「エミリー様は、結構分かりやすく好きオーラを出していましたよね。まあ、ナオ君もまだ幼かったから仕方ないですね」
何だか関わってはいけない雰囲気が漂っていたので、僕はノリスさんとノーヴェさんへの指導に集中しました。
そのおかげもあってか、大部屋は比較的スムーズに治療をする事ができました。
では、次は個室ですね。
「最後の部屋には、右足を切断しているものがおります。流石にナオ様に治療頂いた方が良いかと」
個室も順調に治療を終えたんだけど、最後の部屋は重傷患者がいるんですね。
案内役の兵の表情が曇っちゃったけど、ここは僕が頑張る番です。
僕は、気合を入れながら最後の部屋に入りました。
「うぅ……」
まだ怪我をしたばっかりなのか、負傷兵は苦しそうに呻いていますね。
頑張って治療しようと負傷兵が寝かされているベッドに近づいたところで、一緒に着いて来た人がいました。
「ナオばかりに負担はかけられないわ。私も治療するわよ」
エミリーさんも、とってもやる気満々ですね。
エミリーさんは回復魔法なので、僕は聖魔法の魔力を溜めました。
シュイン、シュイン、ぴかー!
複数の魔法陣が負傷兵を包み込み、回復魔法の青白い光と聖魔法の黄色の光が個室を明るく照らします。
良い感じに治療ができている手ごたえがあり、足だけでなく他の怪我も一緒に治療します。
「すうすう……」
「や、やっぱり、ナオ様の魔法は桁違いです……」
「エミリー様も、本当に凄い回復魔法の使い手ですわ……」
無事に切断された右足の再生も完了し、僕もエミリーさんもホッとしています。
ノリスさんとノーヴェさんは、僕とエミリーさんの魔法に驚愕の表情を見せていました。
でも、このくらいなら僕やスラちゃんでも治療できたかなと思います。
「あとは、頑張ってリハビリをして歩けるようにならないといけませんね」
「治療担当にその様に伝えます。本当にありがとうございます」
案内役の兵も、治療が上手くいってかなりホッとしていました。
やっぱり、元気になるってとってもいいですよね。
これで無事に治療を終えたので、僕たちは食堂に移動しました。




