第三百六十四話 臨時の謁見の日です
僕は、早朝からリルムさんに手伝ってもらいながら貴族服に着替えます。
謁見が行われるらしいけど、いったい陛下はどんなことを他の貴族に言うのだろうか。
そんな事を考えながら、身支度を整えます。
「「「「いってらっしゃーい」」」」
謁見に参加するのは僕とランディさんなので、セードルフちゃん、ルルちゃん、カエラ、キースは僕たちを見送った後で大教会に向かうそうです。
カエラとキースは昨日から僕の部屋に泊まっていて、あと二日間はオラクル公爵家に泊まるそうです。
スラちゃんは僕と一緒に王城に行くけど、ドラちゃんたちはみんなと一緒に大教会に行きます。
ドラちゃんたちがいれば、みんなの護衛もきっちりと務まるもんね。
「陛下は、本当に基本的なことを言うのだろう。ただ、その基本的なことを他の人が言っても理解しないものがいる。だから、頭が痛いんだろう。そういうものは同じ貴族が言っても駄目なので、私が言っても無駄だ」
ランディさんと一緒に馬車に乗っていたけど、ランディさんも変な貴族に巻き込まれている一人なのでかなり頭が痛そうです。
問題のある貴族は話を聞かないので理解すらしようとしないらしく、ランディさんも理解に苦しんでいるそうです。
僕もまさに昨日酷い目にあったし、本当にこういうことは駄目ですね。
ということで、王城に着いたらさっそく謁見の間に向かいました。
すると、意外な人物が謁見の間で僕を待っていました。
「ナオ君、お疲れ」
「あれ? ヘンリーさんです。どうしたんですか?」
「私は侯爵家の当主になったからね。だから、王族ではなくこうして貴族として謁見に参加しているんだよ」
ヘンリーさんは今までずっと王族枠だったので、何だかとっても新鮮な感じです。
因みに、ブレアさんはまだ王族からの離脱手続き中なので、今日は王族として謁見に参加するそうです。
「それにしても、昨日の件は本当に酷いものだ。他人をとやかく言う前に、自分を律しないとならない。何でもかんでも要求するものは、そのうち大きなしっぺ返しを受けることになる」
ヘンリーさんは、当たり前の事をあえて周囲にいる貴族に聞こえるように言っていました。
殆どの貴族は当たり前だと頷いているけど、一部の貴族はそそくさと謁見の間の隅に移動しています。
多分、僕とエミリーさんの婚約披露パーティーに招待されなかった貴族ですね。
「単純に貴族同士の婚約披露パーティーとなると、特に制限はない。だが、王家が絡むと話は別だ。下級貴族や関係者を呼ぶのは問題ないが、一定の犯罪歴のある貴族家は招待する対象にすらならない。国の法にも明記しているから、普通なら直ぐに分かるはずだよ」
これまた、ヘンリーさんが周囲に聞こえる声で話していました。
僕も勉強して知っている内容だし、普通に過ごしていれば何にも問題ない内容だもんね。
それに、僕もエミリーさんも差別的なことは全くしていないし、犯罪を犯しても更生する気持ちがあれば大丈夫だと思います。
更生する気持ちもなく自分勝手な人は、僕も関わるのは嫌だなと思います。




