第三百四十二話 何をして時間を潰そうかな?
代官への報告も無事に完了し、僕とお母さんは再び教会に向かいました。
結婚式が始まるまでまだまだ時間はあるけど、予定外のことで時間を取られちゃったもんね。
クロちゃん、ギンちゃん、キキちゃん、村の人たちによる周囲の確認は現在も進んでいて、今のところ特に問題ないそうです。
「まだ、控室で着替えているみたいね。お母さんはサマンサのところに行くから、ナオは教会内で待っていなさいね」
お母さんは僕にそう言うと、足早に控室へ向かいました。
うーん、やることがないぞ。
スラちゃんとドラちゃんはまだ王都から戻ってこないし、クロちゃんたちもまだ探索を続けています。
お父さん、カエラ、キースはまだ僕の実家にいるみたいだし、教会内に知り合いが全くいません。
といっても、村の人たちはみんな知り合いだから、次々と僕に声をかけてくるけどね。
あっ、そうだ。
「シスターさん、何か手伝うことはありますか?」
僕は席を立ってシスターさんに話しかけました。
結婚式前だから、何かお手伝いすることはあるはずだよね。
「ナオ君、ごめんね。準備をすることは殆どないのよ。前日のうちにやってしまったのよ」
あらら、シスターさんからもやることがないって言われちゃった。
うーん、どうやって時間を潰せばいいんだろうか。
「ははは、ナオは伯爵様になっても性格が変わらないな」
「とんでもない手柄を打ち立てたのに、そうやって家族のことを大切にするのは良いことだ」
「だから、王女様と結婚できるんだろうな」
何故か村の人たちが僕の周りにやってきて、僕の頭を撫でながらそんな事を言ってきました。
僕は特に特別なことはやったつもりはないんだけど、ヘンリーさんたちに本当に良くして貰ったもんね。
「あたたた、シスターさんはおるかい?」
すると、教会内に一人のお婆さんが腰を押さえながら姿を現したのです。
あれは、確かお肉屋さんのお婆さんだよね。
「あら、お婆さんどうしたのですか?」
「腰が痛くて辛くてのう。結婚式が行われるのにって思ったが、流石に辛くてな」
駆けつけたシスターさんも心配そうにしているけど、当のお婆さんは今日結婚式が行われるって分かっていたんだね。
こういう時こそ、僕の出番です。
「僕がお肉屋さんのお婆さんを治療します」
席を立った僕は、直ぐに魔力を溜め始めました。
そして、お肉屋さんのお婆さんに回復魔法をかけます。
シュイン、ぴかー。
「腰だけでなく、背中や膝も悪かったみたいですね。できる範囲で治療しました」
「おやまあ、痛いのがすっかりと良くなったよ。ナオ君は、昔から優しいね」
加齢もあるので、お肉屋さんのお婆さんの体の悪いところ全ては治療できません。
それでも体調の良くなったお婆さんは、僕にニコリとしながら感謝を言っていました。
すると、集まっている村の人たちが僕のことをニヤニヤしながら見ていました。
「あの、どうしたのですか?」
「「「いや、ナオらしいなって思っただけだよ」」」
「そうね、本当にナオ君らしいわ」
シスターさんまで、村の人たちと一緒にニコリと微笑んでいました。
せっかくなので、結婚式の時間になるまで僕は教会を訪れた人たちの治療をすることにしました。
その度に、僕らしいって言われちゃいました。




