第三百十二話 空腹の中の目覚め
ぐー。
翌朝、僕は空腹と共に目が覚めました。
体はまだふらふらするけど、一晩ぐっすりと寝たらだいぶ調子が良くなりました。
周囲を見回して誰かいるかなと思ったら、オラクル公爵家にいるはずの人が僕の側にいました。
「リルムさん」
「ナオ様、お目覚めですか」
僕の専属侍従のリルムさんが、ベッドの隣にある椅子に座っていたのです。
どうやら、僕の事を見守ってくれたみたいですね。
先に、鑑定魔法を僕の体に使って状態を確認してっと。
うん、回復魔法を使わなくても大丈夫ですね。
僕の体が問題ないことを確認して、ベッドに寝たまま改めてリルムさんに質問しました。
「リルムさんが、僕の事を見てくれていたんですか?」
「はい、今朝よりこちらに来ております。最初ナオ様が刺されたと聞いた時はとてもビックリしましたが、無事だと聞いて安堵いたしました」
リルムさんは本当にホッとした表情を見せているけど、かなり心配をかけちゃったみたいですね。
この分だと、僕の事を知っている人はみんな心配しちゃっているかもしれません。
ぐー。
「あっ……」
「ふふ、ナオ様、お腹が空いているのですね。この後、王家の方と一緒の食事を予定しております」
またまたお腹の音がなっちゃったけど、既に食事の予定が決まっているんですね。
あと、まだ体がふらふらするので移動は車椅子を使うことになりました。
という事で、トイレに行ってから王家の食堂に向かいました。
何と、僕が寝ていた治療施設は王家専用の部屋らしく、王家の人々がいるフロアと同じ部屋らしいです。
リルムさんに車椅子を押して貰いながら食堂の前に差し掛かると、元気の良い足音が聞こえて来ました。
トテトテトテ。
「ナオにーにだ!」
「にーにだ!」
アーサーちゃんとエドガーちゃんが、プリンちゃんとブドウちゃんと共に僕の所に走ってきました。
そして、車椅子に乗っている僕の膝に抱きついてきました。
「ナオにーに、大丈夫?」
「だいじょーぶ?」
ちびっ子二人は僕の隣にいたから、一歩間違えるとあのハラグロ伯爵に刺される危険性があるんだよね。
血まみれな僕の姿を間近で見ていたから、本当に心配してくれているんだ。
「アーサーちゃん、エドガーちゃん。僕は元気になったよ。ありがとうね」
「「えへー」」
僕かアーサーちゃんとエドガーちゃんの頭をナデナデすると、二人ともニコニコしながら僕の顔を見上げていました。
そして、マリアさんが僕の所に歩み寄ってきました。
「マリアさん、おはようございます」
「ナオ君、おはよう。随分顔色が良くなったわね」
マリアさんは、僕の頭をニコニコしながら撫でていました。
そして、みんなと共に食堂に入りました。
「おお、ナオか。だいぶ良くなったみたいだな」
食堂に入ると、陛下をはじめとした王家の方々が勢揃いしていました。
ナンシーさんも、ブレアさんの隣に座っていますね。
車椅子を押されながら席に着くと、陛下が僕に声をかけてきました。
他の人も、僕の様子を見て一安心しています。
「陛下、色々とご迷惑をおかけしました」
「ナオ、謝るのならこちらの方だ。王家の結婚式で、奸臣によって怪我をしたのだからな」
僕がペコリと頭を下げると、逆に陛下もペコリと頭を下げてきました。
ハラグロ伯爵が僕の事を毒ナイフで刺さなければ、こんな事にはならなかったんだけどね。
僕の朝食が用意されたんだけど、流石に僕は病院食みたいな消化のいいものでした。
それでもお腹ペコペコなので、あっという間に食べ終えちゃいました。
すると、ヘンリーさんがこの後の事について話してきました。
「ナオ君は、今日一日は医務室で安静にした方がいいね。明日には、屋敷に戻れるはずだよ。私達はハラグロ伯爵と関連する者への捜索も行わないとならないし、どっちにしてもナオ君は当分安静にしないとね」
ヘンリーさん曰くハラグロ伯爵と組んでいる貴族もいるらしく、捜査はかなり忙しいそうです。
今回の件がどうなっているか纏めるには、もう少し時間がかかるそうです。
「じゃあ、ナオにーにあそぼー!」
「あそぼー!」
「駄目よ。ナオ君はまだ体調が良くないのだから、ベッドで寝ていないといけないのよ」
「「えー!」」
マリアさんに苦笑されながら注意されて、アーサーちゃんとエドガーちゃんは思いっきりブーイングを上げていました。
僕もまだフラフラで歩くのは難しいから、もう少ししたら一緒に遊ぼうね。




