第三百四話 大教会でのお手伝いでやりすぎちゃいました
サマンサお姉ちゃんがブレアさんとナンシーさんの結婚式で着るドレスは、取り急ぎは既製品サイズがピッタリの物があるそうです。
この既製品のドレスに更に細かい刺繍などを施したものを、結婚式の時に着用します。
それとは別に、オラクル公爵家からドレスをプレゼントされるそうです。
そして、今日は大教会内の清掃も行なって結婚式に向けて綺麗にしていくそうです。
僕達だけでなく、ちびっ子四人とシャーロットさんも一緒にやってきました。
ヘンリーさん、シンシアさん、ナンシーさんは結婚式の準備で不在です。
「えーっと、大教会のどの範囲を綺麗にすればいいですか?」
「先ずは、この教会内の清掃をして頂ければと。その後に、各控室をお願いします」
大教会内でシスターさんに話を聞いたけど、魔法が反応するような魔導具は特に置かれていないらしく、実際に教会所属の聖魔法使いが定期的に生活魔法で教会内を綺麗にしているそうです。
それなら、一気に生活魔法で色々なところを綺麗にできますね。
先ずは、教会内を綺麗にしちゃいましょう。
僕は、教会がとってもピカピカになるようにと思いながら魔力を溜め始めました。
シュイン、シュイン、ぴかー。
「うん、良い感じにピカピカになりましたね」
「「「おー!」」」
「えっ?」
教会内が光り輝くくらいピカピカになって、僕はとっても満足です。
ちびっ子四人組も僕の横でとても喜んでいたけど、一緒にいたシスターさんが思わず目玉が飛び出るくらいビックリしていました。
マリアさん、エミリーさん、サマンサお姉ちゃんは、仕方ないなあって表情をしていました。
でも、綺麗にしないといけない部屋はまだまだあるので、次の部屋に向かいましょう。
「シスターさん、次はどこに向かえば良いですか?」
「あっ、はい。こちらです」
僕がシスターさんに話しかけると、シスターさんは我に返った様になりました。
今度は、控室を綺麗にする作業です。
控室は貴族の格によって変わるらしく、特にオラクル公爵などの上位貴族が使う控室はとても豪華になっていました。
因みに、新郎新婦の控室はまた別にあるそうです。
そして、この控室には普段使っていない椅子などを並べる必要があるそうです。
各控室を生活魔法で綺麗にしたら、今度は倉庫に向かいました。
「ふふ、ようやく私の出番ね。よいしょっと」
「「「すごーい! カッコいい!」」」
「な、ナオ君のお姉様も物凄い人なのですね……」
荷物を運びやすいように僕が台車をアイテムボックスから取り出すと、サマンサお姉ちゃんがたくさんの椅子を一度に運んでいました。
ちびっ子四人はサマンサお姉ちゃんの勇姿に大興奮で、特にルルちゃんはドラちゃんを抱えながらとても喜んでいました。
シスターさんは、サマンサお姉ちゃんの身体能力強化のパワーにかなり驚いていますね。
スラちゃんは念動で荷物を運んでいて、僕とエミリーさんも身体能力強化魔法を使って荷物を運びました。
「「「ぎーこ、ぎーこ」」」
「ふふ、みんな楽しそうね」
必要な荷物を台車に乗せたら、再び倉庫から各控室に向かいます。
ちびっ子四人もお手伝いすると、僕と一緒に楽しそうに台車を押していました。 四人は体が小さいので、台車を後ろから押しています。
マリアさんも、他の人達もとてもにこやかにニコニコな四人を見つめていますね。
各控室に荷物を配置するのだけど、並べ方とか当日の参加者の増減とかがあるので後はシスターさんが対応するそうです。
ということで、今日の僕たちのお手伝いはこれで終わりです。
教皇猊下に挨拶するために、みんなで教会内に戻りました。
すると、とんでもない事が起きていました。
ザワザワザワ。
「おお、なんということだ。まるで教会が生まれ変わったかのようだぞ」
「神様の像も女神様の像も光り輝いていて、まるで生きているかのようですわ」
「奇跡が、奇跡が起きたのだ」
なんと教会内に町の人がたくさん押し寄せてきて、僕が生活魔法でピカピカにした教会内を見て奇跡が起きたと凄いことになっていました。
ち、ちょっとやりすぎちゃったかなと思ったら、いいタイミングで教皇猊下が姿を現しました。
「皆のもの、教会内が生まれ変わったかの様に綺麗になったのは奇跡でもなんでもない。『白銀の竜使い』様が、大魔法で綺麗にしただけじゃ。勇者様パーティの一員として王国内外の問題を解決した『白銀の竜使い』様にとって、このくらいはなんてことないだろう」
「「「ナオにーにが、ピカピカにしたよー!」」」
「よー!」
教皇猊下に加えて、ちびっ子四人がニコニコしながら僕の事を指差していた。
すると、町の人が一斉に僕の事を見たのでちょっとあわあわしちゃいました。
「あの、その、僕は生活魔法で教会内を綺麗にしただけです。教会の聖職者も定期的に生活魔法で教会内を綺麗にしていると聞いたので、全く同じ事をしただけです……」
「教会の聖職者と同じ魔法を使って、こうも効果が違うのか」
「やはり、『白銀の竜使い』様はとんでもない魔法使いだったのか」
僕がどんな魔法を使ったのか説明をしたら、更に町の人がざわめいちゃいました。
中には、手を合わせて僕の事を拝んでいる人もいます。
僕は、ちょっと恥ずかしくなりながら応接室に案内してくれる教皇猊下の後をついていきました。
「すみません、完全にやり過ぎました……」
応接室に着くなり、僕は教皇猊下にペコリと頭を下げました。
すると、教皇猊下はちょっと笑いながら返事をしてきました。
「ははは、ナオ君もまだまだ子どもだのう。このくらいは全然平気じゃ。それに、やっている事は普段の教会の活動と何ら変わらない。ただ、魔法のレベルが桁違いなだけじゃ」
教皇猊下はニコニコしながら話してくれたけど、この後どうすれば良いのだろうか。
すると、教皇猊下はある事を僕に言ってきました。
「ナオ君が、お世話になっているブレア殿下とナンシー嬢の為に頑張って綺麗にしたと言えば良い。町のものも、納得する理由じゃ」
教皇猊下が少し愉快な表情をしながら話してくれたけど、どっちにしても僕が頑張ったという結果はそのままなんですね。
こうして少し時間を潰してから、僕たちは裏口から教会を出て馬車に乗って王城に向かいました。
すると、王城にも大教会がピカピカになったという話が伝わっていて、綺麗にしたのが僕だと伝わると妙に納得しました。
そして町の人は、「白銀の竜使い」様が奇跡を起こしたとか、心優しい方だとかと口々に言っていてかなり恥ずかしかったです。




