第百九十一話 今日は余裕を持って撃退です
翌日以降のシャーロットさんの護衛は、凄く強化されることになりました。
シャーロットさん自身は奉仕活動中はあまり護衛を付けたくないらしいけど、陛下も苦渋の決断だったみたいです。
そして、この二人もシャーロットさんの護衛に加わりました。
「「しっかり守るよー!」」
「ふふ、宜しくお願いするわ」
カエラとキースが、シャーロットさんに元気よく宣言をしていた。
昨日シャーロットさんを守ったのは事実だし、治療班にそんなに手がいらないってのもあります。
孤児院の治癒師二人を守ると、シアちゃんも意気込んでいますね。
そして、ある意味意気込んでいたのがこの人とこのスライムでした。
「私が軍の施設にいる間に、まさかお祖母様を襲撃するとは。犯罪組織は徹底的に殲滅しても問題なさそうだな」
ヘンリーさんとスラちゃんが不在の時にシャーロットさん襲撃事件があったので、反省するとともに怒りの炎が燃え上がっていました。
既に特殊作戦は始まっていて、これから犯罪組織を四つ潰すと意気込んでいました。
もちろん周囲に誰か隠れているかもしれないので、僕が時折探索魔法で周囲を確認することになりました。
こうして、万全の体制で今日の奉仕活動を始めます。
シュイン、もわーん。
「あっ、あそこの物陰に誰か隠れています!」
「「「はっ!」」」
やっぱりというか、時々探索魔法を使うと僕らを監視しているような人が見つかります。
兵が忙しく動いているけど、スラム街に住む人にとっては治安が良くなって万々歳だそうです。
たまに仮設住宅を作っていたけど、このスラム街は商店街に近くて協力的なお店が多いのでいきなり普通の集合住宅を建てたりしていました。
忙しく働いているので、スラム街の人も久々の労働だと嬉しそうにしていました。
「キャンキャン!」
「キャン!」
「あっ、こいつナイフを忍ばせているよ」
「くそ、何故分かった!」
そして、遊撃班として犯罪者を見つけられなかったクロちゃんたちも、今日はもの凄く張り切って任務にあたっています。
というか、本当に徹底的にやっていますね。
もちろん、普通の子どもやスラム街の人はなにも問題ないので、普通に炊き出しのスープをもらったり治療したりしています。
そんな中、教会の仮設孤児院をもう少し拡張しました。
それは、小さい子がいるなど諸事情で働けない人や老人を保護するためのスペースです。
孤児院で保護されている子どもが積極的に動いてくれているので、時々シンシアさんが様子を見に行くだけで十分でした。
上手くコミュニケーションができているみたいです。
「「はい、どーぞ」」
もちろん、本来の目的である奉仕活動も忘れてはいません。
カエラとキースも炊き出しのスープを運んでいるし、治療班も問題なく稼働しています。
僕は、どちらかというと遊撃班に近い存在ですね。
こうして、順調に行っていたのだけど、お昼前にちょっとした事件がありました。
「周囲を探索して、っと。あっ、たくさんの人が物陰にいます!」
「直ぐに確認に行きます」
何と、建物の周囲にたくさんの人がいたのです。
しかも、ちょっと嫌な感じもします。
僕は魔力を溜め始めて、他のメンバーも警戒し始めました。
「くそ、何故バレた!」
「こうなったら、暴れてやるぞ!」
「「「キャー!」」」
そして、兵と揉み合いになりながらも刃物を持った人たちが教会目掛けて突っ込んできました。
人数は昨日よりも少ないけど、それでも危険な状況です。
しかも、兵と揉み合いになっていて魔法が撃てません。
こういう時はと、僕は木剣を構えました。
シュイン、フッ!
バシン、バシン!
「「「ウギャー!」」」
魔力が良い感じに溜まっていたので、それを身体能力強化に振り分けました。
僕は、高速移動しながら次々と犯罪者を倒していきます。
もしかしたら、周りにいる犯罪者は僕の姿が見えないかもしれないね。
「くそ、どうなって……」
「「えーい!」」
シュイン、ズドドドーン!
「ぐはぁ!」
時折カエラとキース、そしてシアちゃんの長距離狙撃が決まっていき、炊き出しや治療の列に犯罪者を近づけさせません。
その間にクロちゃんたちが列に並んでいる犯罪者を探すけど、今日は大丈夫みたいですね。
「ちっ、撤退……」
「あっ、親分を見つけました。えーい!」
シュイン、フッ。
バシン!
「うがぁ、な、なぜこんなにも簡単に……」
バタリ。
ふう、これで終わりだね。
僕は大柄な人を倒したあとも周囲を探索魔法で確認したけど、もう隠れている人はいなさそうです。
揉み合いになって怪我をした兵の治療も終えたし、再び監視活動を始めます。
そして、昼食時に戻ってきたヘンリーさんとスラちゃんが、状況を説明してくれました。
「どうやら、犯罪組織の一つが破れかぶれで突っ込んできたみたいだ。ナオ君がよく周囲を確認してくれたのもあって、被害は最小限に食い止められた」
元々制圧する予定ではない犯罪組織で、粗暴な行為が目立つところだという。
それでも、スラちゃんは事前に潰せなかったと悔しがっていた。
「暫くは、ナオ君をフリーにさせて動かすのが良いのかもしれないな」
「治療班に余裕があったのも大きいです。僕も、木剣を振るういい機会になりました」
「そっか、それは良かった。エミリーが何もやることがなかったと不貞腐れていたが、ナオ君がそれだけ成長したってことだ」
ヘンリーさんが僕のことを褒めてくれたけど、今日たまたま上手くいっただけかもしれないもんね。
僕の剣の腕は他の人に比べると劣るし、頑張って訓練しないと。
そして、その後は何もなく平穏に過ぎていき、ヘンリーさんとスラちゃんは予定よりも二つ多く犯罪組織を壊滅させました。
悔しがっていたスラちゃんが大活躍したみたいなので、後で褒めてあげないといけないね。




