第百八十七話 今日は平和なスタートです
ということで、翌日カエラとキースはセードルフちゃんと一緒に屋敷に残ります。
僕はスラム街の奉仕活動を行うので、いつも通り迎えの馬車に乗って教会に向かいます。
「じゃあ、行ってくるね」
「「「いってらっしゃーい!」」」
三人に見送られながら、僕たちはスラム街の教会に向かいました。
昨日スラム街の人もある程度治療とかもしたし、今日も最初はスラム街にある廃墟の浄化を行います。
しかし、ここでちょっと気になる情報をヘンリーさんが話してくれました。
「今対応しているスラム街ではなく、次のスラム街の話だ。どうやら、怪しい人物が出入りしているらしい。なので、兵に監視をさせてはいるが場合によっては途中で怪しいところの対応を行う」
今やっているスラム街と似て、そんなに規模が大きくないところだそうです。
でも、スラム街だから何があってもおかしくはないよね。
僕たちも、いつでも動けるようにしておかないと。
そう思っていたら、無事にスラム街入り口にある教会に到着しました。
先ずは、教会に入ってシスターさんにご挨拶です。
「「「おはよー!」」」
「キュー!」
「キャン!」
と思ったら、先に孤児院で保護されている子どもたちが元気よく挨拶をしてきました。
ドラちゃんとクロちゃんも元気よく挨拶を返していたけど、この孤児院にいる子どもたちは本当に元気だね。
南町の孤児院にいる子は保護されたばっかりでそこまで積極的じゃなかったけど、シスターの方針なのか活動的だね。
今日も炊き出しの手伝いをするみたいだけど、回復魔法の才能がある二人も手伝ってくれることになりました。
他の子も、新しく孤児院に入った子の面倒をみているそうです。
では、僕は一足先に廃墟の浄化を始めましょう。
「キャンキャン」
「ここも浄化した方がいいんだね。じゃあ、やっちゃうね」
「キャン!」
元々指定されていた場所に加えて、クロちゃんが見つけたよどみもどんどんと浄化していきます。
よどみを浄化すると、なんだか周囲の空気が綺麗になった気がするんだよね。
この調子で、スラム街の空気も清々しいものになって欲しいなあ。
こうして、五軒の廃墟の浄化を終えて教会前に戻りました。
シュイン、ぴかー!
「わあ、凄いね!」
「すごいすごい!」
教会前の無料治療のところでは、シアちゃんが孤児院の二人に指導をしながら治療をしていました。
シアちゃんの指導はとても的確だから、二人もどんどんと治療しているね。
僕とドラちゃんも、二人と一匹に負けじと張り切って治療を始めました。
「キャンキャン!」
「俺も分かったぞ、目の前でスリをするとはな」
「げっ……」
クロちゃんもとても張り切っていて、どんどんと犯罪者を見つけていました。
またまた兵が大忙しだけど、これは仕方ない忙しさですね。
捕まえた軽犯罪者から、思わぬ情報が手に入ることもあるそうです。
そして、またヘンリーさんとスラちゃんの姿が見えないけど、きっと特殊班として活動しているんだね。
そんなことを思いながら、昼食の時間になりました。
「ヘンリーは、スラちゃんとともに軍の施設で捕まえたものの取り調べをしているみたいね。昨日犯罪組織の親玉を捕まえたから、何か重要な情報を探っているのかもしれないわ」
昼食時にシンシアさんが僕たちに色々と教えてくれたけど、あの一人と一匹を前にして隠し通せることなんてないからね。
どんな情報が出てくるのか、とっても楽しみです。
なので今日は念の為に魔力を温存してくれとシンシアさんから言われたけど、シアちゃんと孤児院の二人がとても張り切っているから、実際にそこまで魔力を消費していないんだよね。
ということで、その万が一に備えて午後の奉仕活動を始めます。
「キャンキャン!」
「あら、あなた。私の、目の前でなにかしたわね」
「えっ……」
魔力を使わなくて済むってのもあるのか、遊撃班がとっても張り切っています。
今もクロちゃんが発見した犯罪者を、エミリーさんがニヤリとしながら拘束していきました。
クロちゃんは、孤児院の二人とシアちゃんが安全に活動できるようにと張り切っていますね。
お陰で、僕たち治療班と炊き出し班はとても安全に過ごせています。
なので、僕とドラちゃんも孤児院の二人に色々教えながら治療を進めていました。
二人とも中々筋がいいので、シスターもシャーロットさんも思わずニッコリとしていました。
料理を頑張っている子もいて、何だか良い感じになっていますね。
「僕たちこうして暮らせているから、頑張って恩返しするんだ!」
「昨日私よりも小さい子が治療を頑張っていたから、私も負けないように頑張るの」
シスターの教えもあるのだけど、カエラとキースの頑張りも影響しているみたいですね。
こういうやる気のある人が増えるってのは、とっても良いことです。
こうして、孤児院の子どもの頑張りもあって今日の奉仕活動も無事に終了しました。
「今日は本当にありがとうね。みんなが頑張ってくれたから、こうしてスラム街の人たちもとても喜んでくれたわ」
シャーロットさんも、子どもたち全員を抱きしめながらとっても褒めていました。
シスターも、子どもたちの頭を撫でながら褒めています。
このスラム街の対応が終わったら、シャーロットさんがみんなへのご褒美に美味しい食事を届けてくれるそうです。
このくらいはと、シャーロットさんも嬉しそうに話していました。




