第百八十四話 双子の妹と弟も手伝うことに
「おはよう、カエラ、キース」
「「エミリーお姉ちゃん、おはようございます!」」
翌朝、勇者パーティの面々がオラクル公爵家に来ると、カエラとキースがエミリーさんに元気よく挨拶をしていました。
二人とも、エミリーさんはとても優しいからと直ぐに仲良しになりました。
ヘンリーさんとシンシアさんとも仲良しだし、とってもいいことですね。
ちなみに、二人はこのあとイザベルさんとセードルフちゃん、それにルルちゃんと一緒に王城のシャーロットさんのところにお茶に呼ばれました。
二人には、シャーロットさんにいつもお土産ありがとうございますと言うように話しておきました。
ということで、今日の活動開始です。
僕たちも、馬車に乗り込みました。
「今日は、別のスラム街の先行視察だ。もちろん、教会を拠点にする。現地のシスターにも話をつけているが、今日はそこまで活動はしない予定だ」
ヘンリーさん曰く、既に兵が先行して状況確認しているそうです。
でも、実際にこの目で確認するのが大事だそうです。
チェックを怠らないなんて、流石はヘンリーさんですね。
そして、僕たちを乗せた馬車は無事にスラム街入り口の教会に到着しました。
「うーん、この前のスラム街の方が大きかった気がします」
教会に入る前に周囲を見回すと、確かにスラム街って感じはするけどそこまで広くはないような。
スラちゃんとドラちゃんも、僕と同じ感想ですね。
「王都南にあるスラム街は、王都の中でも最大規模だ。ただ、ここも規模が小さいだけでスラム街なのは間違いない。犯罪組織の根城になっている個所があるのは、既に兵によって確認してある」
教会内に入ってから、ヘンリーさんが周囲を気にしながら僕たちに説明してくれました。
そして、祭壇の近くに年配のシスターと小さな子どもがいました。
もしかしたら、孤児院の子どもかな?
先ずは挨拶しないと。
「おはようございます、シスター」
「ええ、おはよう。白銀の竜使い様」
「「「おはよー」」」
なんというか、ここのシスターにも僕の二つ名を返されてしまった。
予想以上に有名になっちゃったんですね。
そして、小さい子どもたちもにっこりとしながら僕たちに挨拶をしてきました。
やっぱりこの教会には、小さいながらも孤児院があるそうです。
「ありがたいことに、大教会からの支援も頂いておりますので子どもたちに不自由をさせることはありません。ただ、もう少し多くの子どもを保護したいと思っております」
なるほど、やっぱりこのスラム街は小さいとはいえまだ孤児がたくさんいるんだ。
どのくらいの大きさの孤児院が必要かは分からないので、ここも最初は仮設孤児院を作ることになりそうですね。
「幸いなことに、このスラム街は商業地に近い。うまく仕事を斡旋できれば、状況は回復するだろう」
「そのためにも、住む場所を用意して犯罪組織を潰さないとならないわ。ブレアが忙しくてたまらないと言っていたけど、これを期に犯罪組織に繋がっている貴族家も処分するわ」
ヘンリーさんとシンシアさんが大体のことを説明してくれたけど、基本線は変わらないそうです。
ただ、炊き出しはそこまで必要ないのではとの見解でした。
いずれにせよ、暫く集中して作業することになりそうです。
ということで、ここからは分担することになりました。
ヘンリーさんとスラちゃんは、また特殊作戦のために動くそうです。
シンシアさんとナンシーさんが、シスターさんと明日から行う炊き出しの打ち合わせを行います。
そして、僕とドラちゃん、それにクロちゃんとエミリーさんは子どもたちとともに教会裏手の孤児院の隣に移動しました。
「じゃあ、この辺にお願いね」
だいたいの位置をエミリーさんが地面に記してくれたので、その位置に合わせるように僕は魔力を溜め始めました。
シュイン、もこもこ、ズゴゴゴゴ。
「「「わあ、おうちができた!」」」
子どもたちは、さっそく土魔法でできた仮設孤児院の中に入っていきました。
元々ある孤児院がしっかりした造りだったので、単純に部屋数が多いものにしました。
ドラちゃんも仮設孤児院の中に入っていたけど、どうやら問題なさそうですね。
「じゃあ、明日から順に荷物を持っていきましょう。今日はここまでね」
エミリーさんも問題ないと言ってくれたし、今日はあくまでも先行視察だもんね。
でも、ここまで準備ができたのは大きいと思います。
こうして他の人も確認が終わったので、僕たちはスラム街の教会を後にして王城に行って話し合いをすることになりました。
「南町にあったスラム街の対応を元に、複合的に対応を行う予定です。既に二つの犯罪組織の拠点を把握しているので、犯罪者の護送も行う予定です」
会議室でヘンリーさんが陛下や有力貴族に説明を行ったけど、陛下たちも情報を掴んでいるので直ぐに作戦は了承されました。
僕は、ドラちゃんとともに浄化と治療を頑張らないと。
他の人たちも役割分担は決まっているので、それぞれ頑張るだけですね。
あと、またもやシャーロットさんがやる気をみせているそうなので、シャーロットさんの部屋に移動して話をすることになりました。
「「お手伝いするー!」」
すると、お茶兼遊びに来ていたカエラとキースが僕のお手伝いをすると宣言してきました。
二人とも風魔法の他に回復魔法も使えるのだけど。
うーん、どうしようか……
「ナオ君、やらせてあげたらどうかしら。経験を積むのも大切なことよ。それに、不審者はクロちゃんが捕まえてくれるわ」
「キャンキャン!」
シャーロットさんに頭を撫でられたクロちゃんも、頑張ると尻尾をふりふりと張り切っていました。
二人には治療に専念してもらうことにしてもらい、危ないことはしないように注意しました。
他のちびっ子たちがいーなーって表情をしていたけど、流石にまだスラム街で活動するには早いですよ。




