第百七十七話 昨日よりも人が多いなあ
翌朝、僕たちは再びスラム街入り口にある教会に向かいました。
シャーロットさんたちが炊き出し用の材料を大量に持ってきてくれるそうなので、僕たちは先に行って浄化作業を進めることにしました。
「「「あっ、昨日のおねーちゃんだ!」」」
「みんな、おはよう。ぐっすり眠れたかしら?」
「「「うん!」」」
教会に着くと、昨日仮設孤児院に入った子どもたちが満面の笑みでシンシアさんに挨拶をしていました。
シンシアさんが仮設孤児院への荷物搬入を指揮した関係で、すっかり子どもたちと仲良くなったみたいですね。
でも、まだまだ体も痩せ細っていているので、再度シンシアさんが治療していました。
そして、ヘンリーさんとスラちゃんは別案件があるので、昨日治療した建物付近で何か話をしていました。
シュイン、ぴかー!
その間に、僕とドラちゃんは指定された建物を浄化していきます。
浄化後のクロちゃんチェックも問題なかったので、どんどんと浄化を続けます。
ちなみに建物の解体は午前中いっぱいかかるそうなので、土魔法で仮設住宅を作るのは午後からの予定です。
そして、シャーロットさんたちを乗せた馬車がやってきて、さっそく炊き出しの準備を始めていた。
昨日の反省からなのか、今日は大教会で行う炊き出しと同様の規模だった。
僕たちは今日分の浄化を終えると、急いでシャーロットさんのところに向かった。
「シャーロットさん、おはようございます」
「ナオ君、みんなもおはよう。朝早くからご苦労さま」
周囲にあれこれ指示をしながら料理の仕込みを手伝っているなんて、シャーロットさんは本当に凄いです。
僕とドラちゃんも、治療班として頑張らないと。
シャーロットさんに負けないようにって思ったけど、シャーロットさんが凄すぎるからちょっと無理かもね。
そして、まだ炊き出し前なんだけど、またまた僕たちの前にやってきた人たちがいました。
「「「おなかすいた……」」」
「あらあら、ちょっと待っていてね。ナオ君、その間に治療してあげて」
僕よりも小さな女の子三人が、炊き出しの前にやってきたのです。
生活魔法で綺麗にして、治療してあげます。
やっぱりガリガリに痩せ細っているためなのか、色々な病気になっていますね。
そして、シャーロットさんが炊き出しの試食を渡してあげると、本当に美味しそうに食べていました。
直ぐにシスターさんが仮設孤児院の方に案内してくれたけど、保護が必要な子どもたちはまだまだたくさんいるかも。
そんなことを思いながら、僕とドラちゃんは治療を始めました。
「うーん、昨日よりも列に並んでいる人が多いですね」
「炊き出しをしていると、噂が噂を呼んだのでしょう。ここまで酷いとは思わなかったわ」
たまたま近くに来ていたエミリーさんと治療の合間に話をしていたけど、話を聞くと地方から来て仕事がなくてスラム街に流れ着いた人も多いらしい。
冒険者登録をしている人には、仕事が増えたとアナウンスしたりしています。
そんな中、とても怪しい人が僕たちの前に現れました。
「おい、騙されるな! 王族や貴族は、俺たちを人体実験に使おうとしているんだ! そう簡単に仕事なんて増えるはずがない!」
如何にも盗賊って感じの人が、とっても酷いことを叫んでいます。
少しだけ列に並んでいる人がざわざわとしたけど、僕たちも直ぐに対応します。
「キャンキャン!」
「あっ、また馬鹿な奴が現れたわね。はいはい、あなたは重犯罪者なのだからその前にまともなことをしましょうね」
シュイン、バリバリ!
「ギャー!」
クロちゃんチェックでも悪い人の臭いしかしないらしく、実際にエミリーさんの電撃を受けたあと鑑定できる兵が確認すると殺人犯でした。
でも、こういう犯罪組織が僕たちの邪魔をするようになってきたんですね。
「スラム街の奥に潜んでいる犯罪組織が、我々の活動を邪魔だと思い始めたのだろう。ある意味予想通りの展開だ。騒いでいるのは、そこまで大きくない組織だろう。大がかりな組織は、まだ我々の行動を観察しているはずだ」
ヘンリーさんは、このくらいは予想通りだと腕を組んで頷いていました。
捕まえたものを尋問して、組織の在り処を確認するそうです。
そして、今まで側にいてあることないことを吹き込んでいたのか重犯罪者と知って、僕たちのところにやってくる子どもたちも増えてきました。
なので、ヘンリーさんの指示で治療をシンシアさんとドラちゃんに任せて仮設孤児院の改造をすることになりました。
シュイン、ズゴゴゴゴ。
「わあ、お部屋が増えたよ!」
「おりょーりするところもふえたー!」
「「「おおー!」」」
もう二部屋増やして、保護する子どもが増えても大丈夫なようにしました。
塀で隠れているから外からだと分からないけど、昨日保護した子どもたちは再び土の土魔法を見れて大喜びです。
一方、今日保護された子どもは、びっくり仰天って表現がピッタリなほど驚いていますね。
でも、魔法を怖がっていないのでホッと胸を撫で下ろしました。
追加の聖職者も来ているし、さっそく子どもたちの着替えの準備をしていました。
着ていた服が、とんでもないくらいボロボロだったもんね。
ではでは、僕は再び治療に戻ります。




