第百五十九話 新しいお友達と遊びたい!
クロちゃんが僕たちのお友達になった翌日、この日は勇者パーティとしての仕事はなかったのだけど大教会でシャーロットさん主催の奉仕活動があります。
馬車に乗って王城に行こうとしたら、先にシャーロットさんたちが馬車に乗ってオラクル公爵家にやってきました。
「おはよーございます!」
「おはよー」
馬車から元気よくアーサーちゃんとエドガーちゃんが降りてきて、僕たちのところにやってきました。
そして、直ぐにセードルフちゃんの隣にいるクロちゃんに気がつきました。
「あのね、クロちゃんっていうんだよ!」
「キャンキャン!」
「クロちゃんだ!」
「クロちゃ!」
クロちゃんは、新しいお友達がやってきて尻尾をブンブンと振りながら大興奮です。
ちびっ子たちに全く悪意がないものもあって、直ぐに仲良くなりました。
クロちゃんは体調が万全じゃないし、ちびっ子三人はマリアさんとともにオラクル公爵家で遊んでいるそうです。
ということで、僕とナンシーさんはシャーロットさんの乗っている馬車に乗り込みました。
ちなみに、スラちゃんは僕たちについてくるけど、ドラちゃんはちびっ子たちと遊んでいるそうです。
「ふふ、新しいお友達ができてみんなとても楽しそうね」
「セードルフちゃんと直ぐに仲良くなったから、クロちゃんも嬉しそうです」
「特殊な能力を持っているっていっても、まだ赤ちゃんに近いのよ。暫く様子を見て、いっぱい遊んであげた方がいいわね」
馬車内でクロちゃんとちびっ子三人の話になったけど、楽しんでいたし大人もいるから問題ないと思うよ。
そんな話をしていたら、あっという間に大教会に到着しました。
シンシアさんとエミリーさんも既に大教会内に入っていて、ドラちゃんとちびっ子たちがいないのを見て直ぐに何があったかを把握したみたいです。
「ナオ、おはよう。みんな、オラクル公爵家で遊んでいるのね」
「エミリーさん、おはようございます。クロちゃんも一緒に遊んでいますよ」
「新しいお友達ができて嬉しいのね。悪いことではないし、楽しむ分ならいいわね」
治療の準備をしながらエミリーさんと話をするけど、みんな子どもだし仕方ないって思っているみたいです。
因みに、ヘンリーさんは公務があるので王城にいます。
王子様って、本当に大変ですね。
そして、炊き出しのところではスラちゃんが大活躍をしていました。
シュイン、スパスパ!
「凄い凄い! スライムがお料理しているよ!」
「魔法を使っているよ。凄いなあ!」
スラちゃんは様々な魔法を駆使して料理をしているけど、その周りにたくさんの町の子どもたちが集まっていました。
スライムが魔法を使っている上に料理をしているので、子どもたちにとっては不思議な光景でしょうね。
流石にシャーロットさんとお付の使用人はスラちゃんの凄技に慣れているけど、新人聖職者と思われる女性はスラちゃんを見て思わずあんぐりとしちゃいました。
何だか微笑ましい光景だなと思いつつ、無料治療の準備が整ったので先に始めちゃいます。
「おうナオ、ちびドラゴンはどうした?」
「新しい黒狼のお友達ができたので、今日は屋敷で一緒に遊んでいます」
「そうかそうか。どうせナオが連れているのだから、普通のオオカミではないんだろうな」
治療しに来た冒険者に言われちゃったけど、ドラちゃんは結構有名みたいです。
そして、流石勘が鋭いのかクロちゃんのことも当てていました。
もちろん、クロちゃんのことはぼやかして話をしています。
こんな感じで治療を進めていくと、今度は町のおばあさんが僕に声をかけてきました。
「おやおや、今日はあの可愛らしいドラゴンはおらんのかね」
「ええ、今日は屋敷で他の子と一緒に遊んでいます」
「そうかい、たまには思いっきり遊ぶのも必要じゃのう」
ニコニコしながらおばあさんか答えていたけど、ドラちゃんは屋敷にいる時は比較的自由に遊んでいるけどね。
最近はルルちゃんのそばにいることが多いし、クロちゃんの面倒をみるつもりでいるみたいです。
流石に、スラちゃんの面倒見の良さには勝てないけど。
そのスラちゃんは、シスターさんと一緒にどんどんと料理を作っていました。
今日は炊き出しがとても美味しいと、町の人にもとても好評です。
配膳を手伝っているシャーロットさんも、町の人の感想を聞いて思わずニンマリですね。
こうして、お昼過ぎには今日の奉仕活動は終了です。
「うん、とても美味しいわ。スラちゃんは何でもできて、本当に凄いわね」
「これだけの味なら、確かに炊き出しが美味しいと言うはずよ。しかも、味付けは塩コショウのみなのよね」
みんなで炊き出しの余りを頂いたけど、シンシアさんもナンシーさんも絶賛する味付けでした。
やっぱり、スラちゃんは凄いスライムだよね。
僕なんかとは、全然レベルが違います。
そして、後片付けをしてみんなでオラクル公爵家に帰ると、何故かクロちゃんとドラちゃん、それにちびっ子三人の姿がありません。
「「「すー、すー……」」」
どこに行ったのかなと思ったら、何故か僕の部屋のベッドに身を寄せ合ってお昼寝をしていました。
この様子だと、とっても楽しく遊んでいたみたいですね。
リーフちゃんだけ一瞬目を覚まして、僕たちに触手をふりふりとしていました。
部屋の中にいたマリアさん曰く、もう少ししたら起きるだろうと言っていたので、みんなで起きるのを待つことにしました。
「しかし、やっぱりナオのベッドで寝ているのね。良い夢を見ていそうだわ」
エミリーさんも、仲良くお昼寝をしている面々を見て思わずニンマリとしています。
そして、僕たちは応接室に移動して少しお話をしていました。




