第百五十八話 新たなお友達
その後も、普通に浄化作業を行ったり治療を行ったりしていました。
因みに、名誉司祭は本当に名誉職なので特にやることはないそうです。
特に大きな功績を上げた人に授けるみたいで、実はヘンリーさんも持っていました。
そういうことを、もっと早めに教えて欲しいと思いました。
そして今日は王都から少し離れた直轄領で森を浄化していたんだけど、ちょっとしたトラブルが起きました。
シュイン、びかー!
「ふう、これで大丈夫です。もう一回探索魔法を使いますね」
いつも通りヘンリーさんたちに魔物を倒して貰いながら森を浄化して、再び確認したときでした。
周囲に反応はなかったけど、目の前に小さな反応がありました。
何が出てくるか分からないので、僕たちも武器を構えていました。
ガサガサ、ガサガサ。
「キューン……」
「えっ、小狼? まだ赤ちゃんかな……」
なんと、真っ黒な毛並みの赤ちゃんオオカミが現れたのです。
えーっと、周囲に親や兄弟っぽい反応はないし、何が起きたのだろうか。
すると、スラちゃんが赤ちゃんオオカミに話しかけました。
そして、びっくりすることを教えてくれました。
「この子、ダークシャドウに取り憑かれていたけど、さっきの聖魔法で回復したみたいです。そして、親兄弟は全部凶暴化したオオカミに殺されたみたいです」
「ふむ、そういう理由があったのか。しかし、ダークシャドウに取り憑かれた状態から回復するとは」
スラちゃんが赤ちゃんオオカミの頭を撫で撫でしながら話を聞いているけど、僕もヘンリーさんの話に興味を持ちました。
すると、今度は赤ちゃんオオカミがびっくりする能力を発揮したのです。
「キャンキャン!」
「えーっと、ちょっと先で嫌な臭いがするって言っています。スラちゃんが、もしかしたらダークシャドウかもって言っていますよ」
「この場所の対応は終わったし、念の為に確認をしよう。何もなければ、それが一番だ」
ということで、赤ちゃんオオカミを僕が抱っこして、みんなで嫌な臭いがする場所に向かいました。
すると、何と赤ちゃんオオカミの言っていたことが当たりました。
「キャン!」
「あっ、僅かですけど、本当にダークシャドウの気配です」
「よし、ではいつも通りの対応を行う」
ヘンリーさんが直ぐに指示を出して、森を浄化する人と、魔物を倒す人に分かれます。
直ぐにダークシャドウは浄化できたけど、スラちゃん曰くもしかしたらダークシャドウから聖魔法で回復した際に得た特性なのかもしれない。
スラちゃんが赤ちゃんオオカミにご褒美に細かく切って食べやすくしたお肉をあげながら、あることを言ってきました。
「えーっと、ドラちゃんと同じで既に仲間にしちゃったそうです。毛並みから、クロちゃんって名前にしたみたいです」
「キャンキャン!」
「スラちゃんのお眼鏡にかなうだけの逸材か。しかも、ダークシャドウを臭いで嗅ぎ分けるとは凄い能力だな」
女性陣に頭を撫で撫でされてご機嫌なクロちゃんに、ヘンリーさんも苦笑するばかりです。
因みにまだ離乳のタイミングなので、スラちゃんは後でヤギの乳を買うと言っています。
そして、ドラちゃんも先輩としてクロちゃんに色々と話していました。
シアちゃんも、触手をふりふりしながらクロちゃんとお喋りしていますね。
みんな歓迎ムードだけど、オラクル公爵家ではどうなのかなと思いつつ、大きくなったドラちゃんの背中に乗り込みました。
クロちゃんは、僕のリュックサックの中に入っています。
「ペロペロ」
「わあ、ミルクを飲んでいるよ!」
「あうー」
オラクル公爵家に帰ってイザベルさんに相談したら、あっさりと飼育オッケーが出ました。
スラちゃんがクロちゃんを育てると言っているけど、みんなで面倒を見ないとね。
今もお皿に入ったヤギの乳を美味しそうに飲んでいるクロちゃんを、セードルフちゃんやイザベルさんに抱っこしてもらっているルルちゃんが興味深く見ていました。
リーフちゃんも、直ぐにクロちゃんと仲良くなりました。
暫くは、毎日体を洗って屋敷に住むことになります。
といっても、僕の部屋で過ごすことになりそうですけど。
クロちゃんの体調が良くなったら、一緒にダークシャドウ探しをすることになりました。
そして、レガリアさんがこんなことを言っていました。
「我が家に来るもので邪神教に関わっていたら、少しの臭いでもクロちゃんが判別してくれるわ。その点を考慮しても、クロちゃんの能力は素晴らしいわね」
フィース子爵はダークシャドウの臭いをプンプンとさせていたから僕でも分かったけど、流石にちょっとだけだと分からないです。
その点クロちゃんは少しの臭いでも見分けるし、屋敷の防衛に役に立つそうです。
因みにクロちゃんの能力がとんでもないので、口外しないようにとのお達しが出ました。
「キャンキャン!」
「わあ、くすぐったいよ!」
当のクロちゃんは、セードルフちゃんに飛び乗って顔をペロペロと舐めています。
一人と一匹の間のコミュニケーションは問題なさそうなので、良い関係を築けそうです。




