第百五十六話 直ぐに会えるよね?
そして、挨拶の途中だったけど陛下も会場に姿を現しました。
エミリーさんたち王族やランディさんたち大物貴族も、挨拶を中断して陛下のところにむかいました。
うん、何故かアーサーちゃんとエドガーちゃんと一緒にドラちゃんもついて行っちゃったけど、シアちゃんもいるしきっと大丈夫ですね。
さっそく、陛下の挨拶が始まりました。
「皆のもの、新年の忙しい中こうして集まり感謝する。昨年は王国を震撼させる事件が起きたが、今年も早々に自分勝手な貴族による事件が起きた。まだ一年が始まったばかりである、気を引き締めて日々の政務に当たってほしい」
おお、いきなり厳しい言葉から挨拶が始まった。
ボンバー伯爵とフィース子爵の件もあったし、思うところはかなりありそうです。
かくいう僕も、ずっと邪神教やその他の貴族の不正の件でてんやわんやだったから、陛下の気持ちも良くわかります。
「皆でこの国を素晴らしいものに、そしてより良くするためには日々の研鑽が大事だ。今年一年の皆の活躍を期待する。それでは、乾杯をする。乾杯!」
「「「乾杯!」」」
陛下の乾杯の挨拶で、夜会が本格的に始まりました。
僕はどうしようかなと思ったら、オラクル公爵とともに一番最初に挨拶することになりました。
サマンサお姉ちゃんと一緒に、レガリアさんとセードルフちゃんの後に続きました。
「陛下、今宵のパーティーにお招き頂き、誠にありがとうございます」
「招待してもらい、ありがとうございます」
「私のようなものをお招き頂き、感謝申し上げます」
レガリアさんに続いて僕とサマンサお姉ちゃんも陛下に挨拶をしたけど、陛下は満足そうに頷いていました。
そして、陛下が挨拶をしようとしたタイミングでした。
「オラクル……」
「こんばんはー!」
「こんばんは!」
「ばんはー!」
「キュー!」
何と、セードルフちゃんが元気よく挨拶をしてしまったのです。
更に、アーサーちゃん、エドガーちゃん、ドラちゃんが、こちらも元気よく挨拶を返していました。
小さな子どもだから仕方ないとは言え、タイミングが悪かったですね。
大人たちは、思わず苦笑いです。
「陛下、大変申し訳ありません」
「いやいや、元気が良くてなによりだ。こうした元気のある若者が、国の将来を引っ張って行くのだろう。もちろん、ナオも更に頑張っていくのだぞ」
「はい!」
またもやセードルフちゃんが元気よく声を上げていたけど、もうランディさんとレガリアさんも苦笑するばかりです。
一方のセードルフちゃんは、元気に返事をしたぞとやりきった表情をしていました。
他の貴族がいるので場所を外れたけど、並んでいた貴族も元気な返事をしたセードルフちゃんに思わずニンマリしていました。
「セードルフちゃん、今度はおばあちゃんが挨拶しようと言ったら話してね」
「はい!」
レガリアさんも、ちょっと苦笑しながらセードルフちゃんに説明していました。
でも、叱るのではなくこうしようねと提案型なのが流石です。
そして、セードルフちゃんに注目がいったので、僕とサマンサお姉ちゃんは殆ど話さなくて済みました。
その点は、とてもありがたかったです。
そして料理を食べていると、まだ貴族の挨拶が終わっていないのにエドガーちゃん、ドラちゃんが僕たちのところにやってきた。
「キュー」
「あらら、エドガーちゃん退屈になっちゃったんだね」
「キュー」
ドラちゃんから事情を聞いたけど、ずっと挨拶を受けるのは大変だよね。
お兄ちゃんであるアーサーちゃんはまだ頑張っていたけど、エドガーちゃんは喋り始めたばっかりです。
流石に、長い間挨拶を受けるのは無理だよね。
さっそくセードルフちゃんの隣に来て、美味しそうに食事を始めました。
ドラちゃんだけでなくスラちゃんも一緒にいて、時々二人の口元を拭ってあげていました。
サマンサお姉ちゃんも、普段カエラとキースのお世話をしているので二人のちびっ子の相手もしています。
「終わったよー!」
「アーサーちゃん、お疲れさま」
「キュー!」
そして、挨拶も終わったのでアーサーちゃんも元気よくやってきました。
マリアさんも一緒についてきたけど、アーサーちゃんは挨拶を頑張ったみたいですね。
さっそくみんなと料理を食べているけど、とても美味しそうに食べていますね。
すると、アーサーちゃんがサマンサお姉ちゃんにちょっと悲しそうな表情で質問してきました。
「ねーねー、ナオにーにのねーねは明日帰っちゃうの?」
「ええ、そうなの。明日、ドラちゃんに乗って帰る予定なのよ。事件も収まったし、実家に帰らないといけないのよ」
「「「えー」」」
ちびっ子三人揃って残念そうな表情になったけど、どうやら誰かから明日帰っちゃうのを聞いたみたいですね。
そんなしょんぼりしている三人の頭を、サマンサお姉ちゃんが優しく撫でました。
「また、ナオの様子を見に王都に来るわ。だから、その時に会いましょうね」
「「「うん……」」」
サマンサお姉ちゃんはとても優しいから、三人も直ぐに懐いちゃったんだよね。
だから、会えなくなるのが寂しいんだ。
マリアさんも、ちょっと苦笑しながら三人に話しかけました。
「大丈夫よ、きっとサマンサさんも直ぐにナオ君に会いに来るわ。だから、待っていようね」
「「「はーい……」」」
渋々だけど、三人も納得してくれたみたいです。
その後は、笑顔も戻って楽しい夜会に戻りました。
ちなみに、王族がそばにいたので、大物貴族や知り合い以外の腹に一物を持っている貴族は近寄れませんでした。
ある意味、アーサーちゃんとエドガーちゃんに感謝です。




