第百四十九話 ボンバー伯爵家の家宅捜索
僕たちを乗せた馬車は、無事にボンバー伯爵家の前に到着しました。
既に屋敷を囲む柵の門は開いていて、玄関のドアも開いていました。
僕たちも急いで走って屋敷の中に入ったのだけど、目の前で凄いことが行われていました。
ブオン、ブオン。
「来るな、近寄るな!」
「全員距離を取れ! 無効化して拘束するぞ」
何と、かなり横に大きい中年っぽい女性が、メイスをぶんぶんと振り回して兵をぶっ飛ばしていたのです。
このままだと危なくて拘束できないけど、直ぐにこの人が動きました。
シュイン、バシュ!
「なっ! ぐっ、外れない!」
「今だ、拘束しろ!」
「「「はっ」」」
シンシアさんが女性を拘束魔法で動けなくして、その隙に兵が女性を縄でぐるぐる巻きにします。
これでもかってくらい縄でぐるぐる巻きにしていたけど、あれだけの怪力を見せれば仕方ないですよね。
現に、なおも激しく抵抗しているけど、何とか巨大な担架に乗せられました。
「報告します、ボンバー伯爵令嬢の拘束が完了しました」
「ご苦労。重犯罪者用の牢屋に入れて、厳しく尋問せよ」
「はっ」
ヘンリーさんへの報告内容を聞いて、僕とサマンサお姉ちゃんはとってもびっくりしました。
まさか、あの大きな女性がボンバー伯爵の娘だなんて。
どう見ても、ボンバー伯爵よりも大きいよ。
僕たち以外の面々が苦笑していたけど、あの女性をナンシーさんの代わりにブレアさんの嫁にしようとしていたんだ。
そりゃ、王族関係者は全員嫌がるよね。
「では、我々は捜査を行う。ナオ君とドラちゃんは、負傷した兵の治療をしてくれ」
ヘンリーさんたちがボンバー伯爵の執務室に向かった後、僕とドラちゃんは直ぐにあのボンバー伯爵令嬢にぶっ飛ばされた兵の治療を始めました。
骨がポッキリと折れちゃったりしていて、五人が重傷でした。
他にも軽傷者が数名いたけど、あのボンバー伯爵令嬢はどれだけ大暴れしたのかと思うよ。
だって、使っていたメイスが超ごっついんだもん。
よく見ると、壁にも穴が空いたり調度品が破壊されたりしていた。
まるで、怪物みたいだね。
そして、兵だけでなく使用人まで怪我人が出ていたので、一緒に治療を行います。
「何をする、私はボンバー伯爵家のものだぞ!」
「放しなさい! 今すぐ放しなさい」
その間にもボンバー伯爵の家族が連行されていったけど、みんな大暴れしていました。
家族揃ってそっくりなんだね。
こうして無事に治療を終えたので、僕とドラちゃんもヘンリーさんのところに合流しました。
すると、テーブルの上にたくさんの証拠品が積み上がっていて、兵が忙しそうに運び出していました。
「ヘンリーさん、治療が終わりました。それにしても凄い証拠品の数々ですね」
「ナオ君、ご苦労様。スラちゃんとシアちゃんが、張り切って証拠品を見つけ出しているんだよ」
よく見ると、スラちゃんとシアちゃんが色々なところに潜り込んでいて、見つけ出したものをシンシアさんたちが運び出していました。
スライムの特性を生かして色々なところに侵入しているので、どんなものでも見つけていました。
こうして一時間ほど執務室を調べてだいたいのものを探し当てたので、今日の僕たちの捜査は終了することになりました。
「この分だと、明日も捜査を手伝うことになりそうだ。悪いが、引き続き頼む」
もちろん僕のうちに関わることだから、僕だけでなくサマンサお姉ちゃんも引き続き捜査に協力します。
どうやら、怒らせてはいけない人々に喧嘩を売っちゃったみたいです。
もう、僕には抑えることはできないので、怒らせた人たちは覚悟した方がいいかも。
馬車に乗って屋敷に戻ると、すっかり夜になっちゃいました。
今日は本当に疲れちゃって、夕食を食べてお風呂に入っちゃったらサマンサお姉ちゃんと一緒に直ぐに寝ちゃいました。




