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幼馴染冒険者パーティを追放されたら、勇者パーティに拾われちゃった  作者: 藤なごみ


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第百四十四話 浄化作業に乱入してきたもの

 翌日、ちょっと面倒くさいことが起きてしまいました。

 みんなで集まって馬車に乗って昨日屋敷の外側から浄化した建物に着くと、何と豪華な貴族服を着た頭頂部の髪がない太った人がニヤニヤしながら待っていたのです。

 明らかに、僕たちが今日この場に来る事を把握していたみたいで、ヘンリーさんもムッとした表情で馬車から降りました。


「ボンバー伯爵、なぜここにいる!」

「おやおや、これはヘンリー殿下ではありませんか。昨日『白銀の竜使い』様の浄化が失敗したとお聞きして、こうして助太刀に来たのです」


 あっ、あの人がボンバー伯爵なんだ。

 確かに今にも貴族服が破裂しそうな程パンパンだよ。

 そして、ヘンリーさんだけでなく僕にもニヤニヤとした視線を向けていた。

 ボンバー伯爵の後ろには魔法服を着た三人の男性が控えているけど、もしかしたら聖魔法を使える人を連れて来たのかも。

 それでも、魔法の専門家でもあるシンシアさんの発言によって一気に状況が変化した。


「ふふふ、魔法使いを連れているのなら直ぐに状況が分かるでしょう。ナオ君たちの浄化は成功しているわ。以前からこの屋敷を包み込んでいた濃密なよどみが、綺麗さっぱりなくなっているはずよ」

「なにっ!」


 ボンバー伯爵は急いで後ろに控えている魔法使いに確認したけど、魔法使いの反応はシンシアさんの言葉を肯定するだけでした。

 念の為にみんなで屋敷に入ったけど、荒れているだけで追加浄化の必要もありませんでした。

 昨日は久しぶりに本気の浄化魔法を放ったから、その効果が十二分に発揮されていたのでしょう。


「ついでですので、本日予定している屋敷にご案内しましょう。二軒隣ですので、直ぐに着きますよ」

「ぐっ、コケにされたままで終われるもんか」


 ということで、僕たちは歩いて目的地に向かいました。

 ボンバー伯爵だけ馬車に乗って移動しているけど、あれだけの肥満体だと歩くのも大変そうです。

 直ぐに目的地の屋敷に着いたけど、これまた厳重に教会謹製のお札がそこら中に張られていました。


「「「うっ……」」」

「どうした、何でお前らが怖気ついているんだ!」


 ボンバー伯爵が連れて来た魔法使いに檄を飛ばしているけど、肝心の魔法使いは目の前の屋敷のよどみに完全に飲まれてしまっていた。

 でも、僕たちとしては昨日浄化した屋敷が上級レベルなら今回は中級レベルくらいでしょう。

 あんまり時間をかけてもしょうがないので、さっさと終わらせましょう。

 僕たちは魔力を溜め始めました。


 シュイン、シュイン、シュイン。


「なっ、何なんだこの魔法陣の数は」

「ありえない程の魔力が集まっているぞ」

「いっ、いったいどうなっているんだ」

「おい、どうした。おーい!」


 ボンバー伯爵が思わず尻もちをついてしまった魔法使いに向かって叫んでいたけど、魔法使いは僕たちの魔法に視線が釘付けになっていました。

 今日はそんなに魔力を溜めていないんだよなあと思いつつ、一気に浄化魔法を屋敷内に向けて放ちました。


 シュイン、ぴかー!


「うおっ、何だこの光は!?」


 ボンバー伯爵が屋敷を浄化する魔法の光に目がくらんでいるけど、僕たちは特に気にせずに浄化魔法を放ちました。

 ヘンリーさんたちは、呆れた表情でボンバー伯爵のことを見ていました。

 そして一分後、無事に浄化完了しました。


「ふう、無事に浄化完了しました。昨日の屋敷よりも簡単にできましたよ」

「そうか、ご苦労様。もしよどみが残っているとしても、教会の聖職者で十分対応できるだろう」


 ヘンリーさんも、この後のことまで考えて話してくれました。

 僕も、万が一よどみが残っていてもこの前一緒に浄化作業をした人たちなら十分に対応できると思います。

 すると、ボンバー伯爵が連れて来た魔法使いが一斉に逃げ出しました。


「こ、こんな魔法使いの相手なんてやってやれるか」

「『白銀の竜使い』が、こんな化け物だなんて!」

「金は返す! くそっ!」

「おい、おーい!」


 ボンバー伯爵が叫んでも、魔法使いは戻って来る事はありませんでした。

 あの反応をみると、実は僕は大した魔法使いではないって思っていた人なのかもしれない。

 僕も、シンシアさんたちと比較して全然まだまだな魔法使いだと思っているよ。


「さて、じゃあ次の場所に行こう。ちょっと離れた男爵家の屋敷が立ち並ぶところだから、馬車に乗って移動しよう」

「「「はい」」」

「おーい!」


 ボンバー伯爵が何か叫んでいる中、僕たちは次の浄化を行う場所に向かうために馬車に乗り込みました。

 ヘンリーさんも、既にボンバー伯爵のことを気にしていませんでした。

 肝心のボンバー伯爵は、未だに逃げて行った魔法使いに向かって叫んでいたけど。


「うーん、結局ボンバー伯爵は何がやりたかったのでしょうか」

「ナオ君は大したことないとの噂を流して、自分の影響力を増したかったのだろう。なんせ、ボンバー伯爵は未だにブレアに自分の娘を嫁がせる夢を諦めていないからな。もしかしたら、偵察を出して昨日の行動を見張っていたのかもしれない」


 ヘンリーさんもさらりと流していたけど、本当に貴族の勢力争いって大変なんですね。

 そして、「白銀の竜使い」は化け物のような魔法使いだという新たな噂が流れちゃいました。

 僕としては、普通にやっているだけなんだよなあ。

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