第百四十一話 実家からオラクル公爵家に帰ってきました
ボンバー伯爵のことはヘンリーさんやランディさんに聞けば分かるかなと思い、無理に聞き出そうとはしなかった。
というか、不審者は完全に伸びちゃっているけど。
ちょうど王都に帰るタイミングなので、このまま不審者を軍の施設に運ぶことにした。
みんなが手伝ってくれて、何とか不審者を大きくなったドラちゃんの背中に乗せました。
固定のベルトもしてあるし、落ちる心配はありません。
「どうも、僕たちの行動を邪魔している人がいるんだよ。もしかしたら、この不審者もそうなのかもしれないね」
「私たちに手を出して、ナオの動きを止めようとしたのかもね。でも、怪しい人がいたらお母さんがぶっ飛ばしてあげるわ」
お母さんが腕を曲げて力こぶしを作るポーズをしているけど、文字通り魔物を拳でぶっ飛ばすんだよなあ。
きっとこの不審者も、思いっきり吹っ飛ばされたのかもしれない。
そして、冒険者活動を終えたサマンサお姉ちゃんも実家の前に来てくれました。
「何だか、今回はずっとドタバタしていたわね。今度帰ってくるときは、ゆっくりできていればいいね」
「「早く帰ってきてねー」」
カエラとキースはドラちゃんとずっと遊んでいたけど、二回もドタバタがあったから僕とはあまり遊べなかったんだよね。
今のゴタゴタが収まれば、ゆっくりできるかもしれないね。
ということで、僕もドラちゃんの背中に乗り込みます。
「じゃあ、行ってきます」
「「気をつけてね」」
「気をつけてな」
「「いってらっしゃーい!」」
こうして、僕は家族に挨拶をして王都に向かいました。
あっという間に王都に到着して、予定通り軍の施設に着陸しました。
直ぐに、僕たちの側に複数の兵がやってきました。
連日ご迷惑をおかけします。
「ナオ様、このものどもはどうしましたか?」
「村の子どもたちを襲って、お母さんたちに撃退された不審者です。ボンバー伯爵の関係者みたいです」
「ボンバー伯爵、まさに問題になっている貴族です」
おやおや?
兵が、目の色を変えて不審者を連行していったよ。
このボンバー伯爵も、フィース子爵とともに問題になっている貴族なんだ。
詳しいことは明日教えてくれることになったので、今日はこのままオラクル公爵家に帰ることになりました。
せっかくなので、王城から歩いて帰ります。
「ただいま」
「キュー」
「おかえりー!」
オラクル公爵家に着いて玄関に入ると、元気の良い声が僕に抱きついてきました。
僕の到着が待ち遠しかったみたいですね。
レガリアさんも一緒にやってきました。
「ナオ君、お帰りなさい。ドラちゃんに乗ってこなかったのかしら?」
「レガリアさん、ただいま。ボンバー伯爵の関係者を実家で捕まえたので、軍に引き渡してきました」
「あら、それは大変だったわね。ボンバー伯爵は、ナンシーの婚姻に反対している勢力の一人なのよ。もしかしたら、その関係でナオ君に意地悪したのかもね」
レガリアさんが少し困ったように話をしたけど、そういう悪いことをする貴族だったんだね。
となると、ヘンリーさんたちもきっと怒っちゃうし、捜査で忙しくなるかも。
いずれにせよ、明日にならないと分からないですね。
そして、夕食時にちょっと疲れていたランディさんが王城から帰ってきました。
「せっかくの帰省だったのに、ナオ君も災難だったね。捕まえた連中に関しては、明日軍の施設で簡単な聴取結果を伝える事になったよ」
「その、僕は大丈夫だったんですけど、お母さんとお姉ちゃんがやりすぎちゃったのかなって思いました……」
「子どもを襲ったんだ、そのくらいの反撃を受けることくらい覚悟しないとならない。何も問題ない」
過剰防衛になるかなと思ったけど、取り敢えずは大丈夫っぽいです。
そして、ランディさんは少し頭が痛そうにしていました。
「しかし、謁見の際に問題になった貴族が既に動いていたとはな。これからの対策を考えると頭が痛いよ」
「でも、何でこんな悪いことをするんでしょうか?」
「本人たちにとってみれば、全く悪いとは思っていないだろう。むしろ、このくらいの妨害くらい当然だと思っているだろうね」
ランディさん曰く、僕たちと考え方が根本的に違うからどうしようもないそうです。
何だかとっても疲れた帰省だったけど、明日以降もとても疲れちゃいそうなそんな気がしました。




