第百三十七話 サマンサお姉ちゃんが襲われた?
「はあ、疲れた……」
まさか、実家に帰省して僅か三時間ほどでこんなに疲れるとは思わなかった。
僕は、ぐったりとしながらお父さんとともに家に帰った。
「帰ったぞ」
「ただいま……」
「おかえりなさい。やっぱりナオはお疲れモードね」
お母さんは、疲れている僕の顔を見て直ぐに何があったかを察したみたいだった。
僕の部屋から賑やかな声が聞こえているけど、姿が見えない人がいた。
「お母さん、サマンサお姉ちゃんは?」
「サマンサは、お友達の家に遊びにいったわ。この後、いつもの四人で冒険者活動するらしいわよ」
サマンサお姉ちゃんには三人の幼馴染がいて、とっても仲が良いんだよね。
その中の、薬屋さんの息子さんと昔から付き合っています。
お母さんは、早く結婚しないかしらとウキウキしていました。
よく考えると、元パーティメンバーの三人は俺の方が金持ちで良いから愛人になれってお姉ちゃんに言っていたんだよね。
とっても酷い話だけど、お姉ちゃんは元パーティメンバーの三人に思いっきりグーパンチしていたっけ。
後は、村の護衛をする兵士の息子と八百屋さんの娘さんで、こちらも昔から付き合っています。
お母さんは、合同結婚式なんかも素敵だねと言っていました。
そして、この話をする度にお父さんがずーんと落ち込んじゃいます。
因みに、今日のお父さんは冒険者活動をしないで一日ゆっくりするそうです。
「お母さん、部屋に行っているね」
「もうそろそろ昼食だから、出来たら呼ぶわね」
僕は、賑やかな声のする部屋に入りました。
僕の部屋だけど、カエラとキースに加えてスラちゃんとドラちゃんもいます。
賑やかにお喋りしているかと思ったら、どうもスラちゃんが僕が王都で何をしていたかを話していたみたいです。
「カエラ、キース、何のお喋りをしていたのかな?」
「「お兄ちゃんのことー」
「キュッ」
ニヤニヤと秘密って表情をしているけど、スラちゃんのことだから変なことを話している訳じゃないです。
僕も二人と二匹の会話に参加して、昼食までの時間を過ごしました。
昼食後は、二人が大嫌いな時間が待っていました。
「じゃあ、今日は読書の時間ね。頑張って続きを読みましょう」
「「えー!」」
お母さんは、勉強もとっても熱心です。
書き取りや読書、礼儀作法など色々と教えます。
もちろん、冒険者として剣技や魔法の使い方も厳しく教えます。
一方、サマンサお姉ちゃんと僕は勉強が好きだけど双子は勉強が大嫌いです。
とはいえ、お母さんに勝てるはずもなく台所に来て勉強を始めました。
二人だけだと可哀想なので、僕もヘンリーさんからもらった本を読みます。
カキカキカキ。
「キュー……」
ドラちゃんも、スラちゃんに教えてもらいながら書き取りの勉強をしていました。
こんなはずではって思っているみたいですね。
こうして、勉強を終えておやつの時間になった時、予想外の事件が起きてしまいました。
「おお、いた! ダンナ、サマンサたちが変な奴らに絡まれているぞ」
「「「えっ!?」」」
薬屋さんのおじさんが突然家に入ってきて、焦ったように用件を伝えました。
予想外のことで、僕たち家族もビックリです。
お母さんが双子をみてくれるそうなので、お父さんと僕たちが薬屋さんのおじさんの後をついていきました。
「今は、冒険者ギルドにいるらしいぞ。俺も、急に言われたから内容まで把握していなくてな」
「ったく、新年始まって早々に馬鹿なことをするものがいたもんだ」
薬屋さんのおじさんとお父さんが走りながら話をしているけど、お互いの子どもが害された可能性があるのでとっても怒っていました。
スラちゃんとドラちゃんも怒っている中、僕はサマンサお姉ちゃんがやりすぎていないかなとちょっと不安になりました。
そして、小さなログハウス風の冒険者ギルドにはいると、後ろ手に縛られて床に転がっている三人組とぷんぷんしているサマンサお姉ちゃんたちがいました。
「サマンサ、大丈夫か?」
「ええ、全然平気よ。こいつら、『ナオの関係者だな』と言って襲ってきたのよ。何だかとっても怪しいわ」
サマンサお姉ちゃんが床に転がっている不審者を見下しながらお父さんに何があったかを説明していたけど、僕の関係者だと知ったらいきなりナイフを手にして襲ってきたそうです。
でもサマンサお姉ちゃんたちのパーティメンバーはとても強いから、あっという間に返り討ちにしたそうです。
そんな中、ドラちゃんに乗っているスラちゃんがじーっとある一点を見ていました。
あっ、全く見た事のない冒険者がいるよ。
村にある冒険者ギルドだから、殆どの冒険者が顔見知りなんだよね。
ダッ。
「ぐっ!」
「あっ、逃げた!」
「「「追いかけるぞ!」」」
急に見た事のない冒険者が逃げ出したので、他の冒険者が追いかけ始めました。
この感じだと、この騒動は計画されていたことなのかもしれないね。
暫くすると、屈強な村のおっちゃん冒険者に両脇を抱えられながら逃げ出した冒険者が連れてこられました。
すると、この村の冒険者ギルドの責任者のおばちゃんが、僕にあることを指示しました。
「ナオ、こいつらの鑑定をしな。怪しすぎるわね」
「あっ、はい!」
「「「えっ!?」」」
僕が返事をしたら、捕まった怪しい人が何故か僕を見てビックリしていました。
何でビックリするのかなと思いつつ、直ぐに鑑定魔法を発動しました。
シュイン、もわーん。
「えーっと、そもそも冒険者じゃないですね。あっ、フィース子爵から雇われているって出ています!」
「「「フィース子爵?」」」
「「「なっ!」」」
周りの人は何だか分からない様子だけど、僕と捕まった人はとんでもなくビックリしました。
本人たちはまさかばれるとは思ってもいなかったと思うけど、僕もまさかあのフィース子爵関係者が地元にいるなんて思わなかったよ。




