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幼馴染冒険者パーティを追放されたら、勇者パーティに拾われちゃった  作者: 藤なごみ


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第百三十話 罪と罰

 そして、ヘンリーさんがまたまた僕にある事を指示しました。


「ナオ君、マンデラと兄を鑑定してくれ」

「あっ、はい。直ぐに、やります」

「やっ、やめ……」


 今度は、何故か側室が鑑定を止めてくれと声を出した。

 でも、ヘンリーさんに睨まれて直ぐに項垂れてしまった。

 鑑定魔法を使われて、都合の悪いことでもあるのかな。

 ここは、手早く行うほうがよさそうです。


 シュイン、ぴかー。


 えー!

 またしても、僕は鑑定結果にビックリしてしまった。


「ヘンリーさん、マンデラさんのお兄さんはザイス姓じゃないです。というか、苗字がないですよ!」

「なっ、ふざけるな!」

「ふむ、やはりそうか」


 マンデラさんのお兄さんが顔を真っ赤にしながら文句を言ってきたけど、ヘンリーさんではなくザイス子爵が妙に納得したように返事をした。

 そして、側室は顔を真っ青にしてがくがくと震えていた。


「それもそのはず、ロカが不倫をしてできた子だ。相手も把握しているがな。それでも、我が子として育てることにしたのだ。ただし、爵位継承権はつけずにな」

「王城にも養子として登録されていた。嫡男はマンデラだったのだが、側室はいずれ事実を知られて追い出されると思ったのだろう。だから、ザイス子爵が病気になったタイミングを期に一気に蛮行を起こしたのだ」


 実は、ザイス子爵からヘンリーさんへ命を狙われていると連絡があったそうです。

 そして準備をしている最中に、ザイス子爵からの連絡が途絶えてたまたまマンデラさんからの連絡が入ったそうです。


「お、お許し下さい。お許し下さいませ!」

「ならぬ。ロカの実家にも、この事を連絡する。厳しい沙汰がある事を覚悟せよ」

「ああ、ああああ……」


 全ては自分の欲が招いたことであって、側室がどんなに謝っても許されることはないでしょう。

 しかし、マンデラさんのお兄さんは未だに不満そうな表情をしていた。


「どうして、どうしてこうなった! 俺が、俺が次のザイス子爵なんだ!」

「はあ、親も親なら子も子だな。ロカの不倫相手も、このような自信過剰で横暴な人物だった。どんなに教育を施しても、性格が直る気配は皆無だった。民があってこその貴族だ、その事を理解できぬお主はもはや貴族の器ではない」

「ぐっ、くそー!」


 ザイス子爵は、教育も差別なく二人に行っていたんだ。

 まさに、そこには親心があったのだろう。

 でも、もう万策尽きたって感じですね。


「二人を連行せよ、昼夜問わず厳しく取り調べるのだ!」

「「「はっ」」」

「いや、いやー!」

「くそー!」


 二人がいくらもがいても、屈強な兵が複数いるので全く問題ない。

 そして、強引に連行されていった。

 もう、ザイス子爵は二人に情けをかけることはないだろう。


「マンデラ、後は任せる。皆さまを丁重にもてなすのだ」

「はい、畏まりました」


 そういうと、ザイス子爵は眠りについた。

 病み上がりで体力もないのに、まさに大立ち回りだったのだから仕方ない。

 今は、体を休めるのが優先ですね。

 兵が厳重に警戒にあたるそうで、僕たちは後を任せてザイス子爵の寝室を後にした。

 すると、屋敷の中はドタバタしていた。

 というのも、何人もの家臣が連行されているからだ。

 全てマンデラさんのお兄さんが実権を握ったら、おこぼれをもらおうと蛮行に協力していた家臣らしい。

 中には、将来を悲観して自刃した家臣もいるらしい。

 でも、自分の甘い考え方が招いたことだと、ヘンリーさんは一蹴していた。

 そして、応接室に行くと、マンデラさんが頭を下げた。


「皆さま、我が家の醜態を晒し本当に申し訳ありません。また、父を助けて頂きなんとお礼を言えばいいのか」


 きっと、マンデラさんも自分の中で色々な感情が混ざり合って大変なんでしょう。

 それでも、間違いなく次期当主はマンデラさんだと誰もが思いました。

 出されたお茶を飲みながら、ヘンリーさんがあることを教えてくれました。


「ザイス子爵は、王城に来るたびに私に色々なことを話してくれた。王都ではない暮らしや、子どものことも教えてくれた。さっきザイス子爵が言った『民があってこその貴族だ』がとても大事だと、私に教えてくれたのだ。ザイス子爵は、いわば私にとって心構えを教えてくれた教師でもあるのだよ」


 シンシアさんも、もしかしたらザイス子爵から話を聞いていたのかもしれない。

 そして、ヘンリーさんが素晴らしい人なのはきっとザイス子爵の教えがあったからなんだね。


「父は常日頃、民のことを思う政治をするようにと言っていました。民に支えられなければ、私たちは存在できないとも言っていました。しかし、兄は貴族だから何をしても許されると言っていました。今思えば、義母も同じことを言っておりました」

「ザイス子爵が教えた大切なことを、側室の自分勝手な教えが打ち消したのだろう。もはやどうすることもできないし、事件も起きてしまった。二人には、罪相応の罰を受けなければならない。それが、人としての責任だ」


 この件はザイス子爵に任せるしかないので、僕たちは別の話をする事になった。

 森のよどみの件です。


「明日、屋敷に来てザイス子爵の様子を見てからもう一度森に向かう。魔物の打ち漏らしがいるかもしれないからな」

「お手数をおかけし、申し訳ありません。この後、兵に命じて巡回もさせます」

「その方が良いだろう。あと、ザイス子爵の回復具合によってはマンデラが代理当主となる。ザイス子爵の教えを忘れることの無いように」


 こうして、僕たちはドタバタしているザイス子爵家の屋敷を後にしました。

 マンデラさんも決意めいた表情をしていたし、きっと大丈夫だと思いました。

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