第百二十七話 予想外の大戦闘
今日は、久々に勇者パーティメンバーが揃います。
ヘンリーさんとシンシアさんの公務も、ようやく落ち着いたみたいですね。
「また、年明けになれば人事が動くだろう。ただ、今回とは違って一回で済むから楽になるはずだ」
「何回も人事異動が発生して、その都度任命証を渡すのも面倒くさいのよ。今回は、流石に堪えたわ」
ブレアさんとも手分けして動いていたらしく、こんなことは初めてだと言っていた。
それだけ、あのオオワル伯爵が引き起こした事件の影響が大きかったんですね。
なので、今日の活動はある意味ストレス発散の意味合いも含んでいそうです。
ということで、目的地の領地に向かうために大きくなったドラちゃんの背中に乗り込みました。
今日行く領地は王都から離れていて、森によどみが発生しているみたいです。
一時間程空の旅を楽しんで、ドラちゃんは森の近くに着陸しました。
「確かに、森から嫌な感じがします。直ぐに探索魔法で周囲の様子を確認しますね」
「直ぐに頼む。森から多数の気配がしているのも気になるな」
ヘンリーさんも森から何かを感じ取っていたのか、既に抜剣していつでも動けるように準備を整えていた。
他の面々も準備を整える中、僕は広範囲探索魔法を発動させました。
シュイン、ぴかー!
すると、あまり良くないことが分かりました。
「ヘンリーさん、こちらに向かってくる多数の反応があります!」
「やはりか。総員、戦闘準備だ」
ヘンリーさんは、既に確信めいたものを感じ取っていたみたいです。
僕も、改めて魔力を溜め始めました。
「ナオ君たちは、一回森を浄化してくれ。こちらに向かっているものの動きが変わるかもしれない」
「やってみます!」
ちょうど魔力が溜まったのもあり、僕たちはこちらに向かっている何かが到着する前に一気に浄化魔法を放ちました。
これで、状況が好転してくれれば良いんだけど。
シュイン、シュイン、ぴかー!
僕とスラちゃん、それにドラちゃんは森に向けて一気に浄化魔法を放ちました。
嫌な感じのよどみは確かに浄化されていくけど、直ぐにもう一回探索魔法を放っても結果は一緒でした。
「ヘンリーさん、浄化はできたけどこちらに集まるものは変わらないです」
「既に、ダークシャドウの影響を受けているのか。来るぞ!」
目の前の森が、ガサガサと音を立てています。
僕は、三たび魔力を溜め始めました。
ガサガサ、ガサガサ。
「「「グルル!」」」
なんと、森から大量のオオカミが現れました。
しかも、目をギラつかせてとても攻撃的です。
しかも、五十頭を超える頭数がいますね。
でも、このくらいなら僕たちなら余裕です。
「先制攻撃します!」
僕は地面に手をついて、一気に魔力を解放しました。
使う魔法は、以前にも使用したアースニードルです。
シュイーン、ズシャ!
「「「ギャン!」」」
多数の土魔法のトゲが地面から出て来て、一気にオオカミを戦闘不能にします。
打ち漏らしたオオカミは、ヘンリーさんたちが確実に仕留めます。
でも、まだまだ僕たちの方にやって来る気配があります。
「今度は、三十くらいの反応がやってきます!」
「ここまで多くの魔物が手つかずで残っているとは。いくら領主からの救援依頼とはいえ、いったい今まで何をしていたんだ?」
ヘンリーさんが思わず愚痴を漏らすほどの展開になり、シンシアさんたちも思わず呆れてしまいました。
何かあった際のために僕の魔力は温存することになり、広範囲魔法はシンシアさんとスラちゃんが放ってくれました。
シアちゃんとドラちゃんも各個撃破していき、次々と魔物を倒していきます。
それでも続々と魔物が現れていき、なんと戦闘終了まで一時間かかりました。
森の周辺はまさに死屍累々って感じで、スラちゃんとシアちゃんが手分けして倒した魔物の血抜きをしていました。
みんな返り血で血だらけになっちゃったので、僕も生活魔法でみんなを綺麗にしていきます。
更に、飲み物や甘いものをアイテムボックスから取り出してみんなに配りました。
「流石に疲れてしまったな。しかし、これはあまりにも状況が悪すぎる」
「確か、事前の連絡では攻撃的なオオカミが出てくるって話よね。クマも蛇も魔鳥も出てくるし、全く話が違うわ」
もやはストレス発散どころではなくなってしまい、ヘンリーさんとシンシアさんは疲労困憊でした。
メアリーさんとエミリーさんも疲れて地面に座り込んでしまったけど、二人ともぶつぶつと文句を言っていました。
かくいう僕も、こんなに激しい戦闘を経験したのは初めてです。
ドラちゃんも疲れちゃって、僕に抱っこされています。
とにかく、この状況を領主に伝えないと駄目ですね。
とはいえ、みんな疲れているしスラちゃんとシアちゃんの血抜きもまだまだ時間がかかりそうです。




