起爆装置解除(シーン)②
「おい、まだなのか?」無線からの声はテント内で敵を防いでいる仲間からの上ずった声だった。
「今やってる」錆びついた巨大なコンテナが無秩序に積み上げられた工業地帯の一角で、ジェイクは時限爆弾の起爆装置を解除しようとしていた。
周囲には金属のフェンスと雑然と置かれた機械があり、背景には険しい山々が薄暗く広がっている。空は灰色に曇り、低く垂れ込めた雲から冷たい風が吹きつけてくる。
「手伝うわ」とサラは決然と言った。緊張からか、彼女の指はわずかに震えていたが、その震えにさえ意志の強さが感じられた。
「左手のワイヤーを使え」とベテラン爆発物処理技師のジェイクが指示を出す。黒いニット帽を深くかぶった彼は、冷静な目でサラの動きを見守っていた。彼の低く落ち着いた声に少しだけ安堵する。
風がフェンスに当たる音が聞こえる。
サラは慎重にワイヤーを操作した。冷たい風が金属と湿った土の匂いを運び、微かに機械油の匂いが鼻孔をつく。起爆装置の冷たい表面に手が触れると、砂でざらついた、冷たい感触が指先に伝わる。風が頬に吹き付ける。
「もっとしっかり持て、サラ」とジェイクが言う。
「分かった。もう一度やってみるわ」とサラは答えた。
サラは心の中で「失敗は許されない」と自分に言い聞かせ、再びワイヤーを操作した。ジェイクの指示に従い、微細な調整を行う。ジェイクは黙って見守りながらも、自らも、別のガイドワイヤーをたくみにえり分け処理していく。時間との勝負だった。ゴツゴツとした大きな手が信じられないくらい繊細に動く。
「すまん、グリーンのやつを」とジェイクが言うと、サラは素早くツールを取り出し、ジェイクに手渡した。
「左手だ」とジェイクが続けて指示を出し、サラはその通りに動いた。
「違う、隣だ」とジェイクが修正を加えると、サラはすぐに対応した。