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天命

だんだんと話が見えてきた。

まず初めに俺は人生の途中で運?が正から負に傾いた存在でいままで観測されたことのない特殊な存在で女神もその存在を認識していなかった。

次に極端に負に傾いた女神に観測されていた少年が俺のことを殺す。

それによって特異だった俺の存在を認識した女神のリリが死んだ俺の魂やらをここに招き入れたということだろう。


「それで、リリ。おれがここへ来た流れはわかったがなぜ輪廻の環とやらに戻さずここに連れてこられたんだ?」


それが一番の話だ。小説なんかの流れではここから新しい体をとチート能力を与えられ異世界に転生し無双していくのだろうが俺はどうなるのだろう?

よく見る小説の主人公はトラックにはねられたり過労死をしたりと不運の死を迎えていたり、何かのゲームをやりこんでいたわけでもない。

不運の死ではあったかもしれないが、もし税金を納めて人の借金を払ってなんて人生の可能性もあるかと思うと転生する気もあまり起きない。

生にあまり執着がないのだと思う。


「あなたをここへ連れてきた理由ですが、、、ハジメのことも輪廻の環に戻そうと試みましたができなかったためです。これは状況から考えた想像の域を出ないお話なのですがハジメは何らかの理由で世界の理から外れ、外れながらも世界に存在し続けたのだと思います。それが原因であなたの正負が変わってしまったのか正負が変わってしまったことにより起こってしまったのかは検討もつききません。それほどハジメの存在は稀有なモノだったのです。あなたの魂をそのまま迷わせておけば消滅してしまう可能性が大きかったため一時こちらに避難させました。魂の消滅にあたってどんなことが起きるのか想像もできませんし何より天命も全うしないままこちらでも把握できない事象によりあなたが消えてしまう。それは私としても許されないことだと思いました。」


結果わからないことだらけではあったがここに連れてこられた理由はわかった。

通常では起こりえないことが起こっていたため今通常では起こりえない事が起きている。

何を聞いても驚けなくなっている。

なるべくしてここに連れられてきたような気がする。

しかしこの後俺はどうなるのだろう?


「それでこの後俺はどうなるんだ?ずっとこのままここにいるというわけにもいかないんだろう?」


それにこんな何もない場所で一人、、、リリもいつまでいるかわからない中ずっといれば気がくるってしまいそうだ。


「ハジメにあた得られる選択肢は2つです。まずひとつが別の世界に転生すること、もう一つが完全なる消滅です。」


消滅するのも一つの選択肢としてはいいのかもしれない。

奨学金を返す、ただそれだけで生きていたのだ。生きる理由も目的も失ってしまった自分に転生といういう選択肢を与えられてもやはり魅力的に感じられない。


「ここに残るという選択もできないわけではありませんよ?」


暗いことを考えていると三度いたずらっぽい笑みを浮かべた女神は先ほど考えていたことを見透かしたのかこちらをからかうように言ってくる。


「、、、正直に言いますと消滅を選んでほしくはありません。ハジメが消滅を選んだことによりいくつもの世界にどんな影響がでるかわかりません。ひどければ世界の消失も考えられます。それでもあなたがそう選ぶなら私には止めることができません。ですが私はハジメに消えてほしいと思いません。それは悲しくとてもつらいことです。」


リリの言葉にうれしいのか悲しいのかわからないが泣きそうになる。

頭の中も心の中もぐちゃぐちゃだ。

消えてほしくないのは自分の管理するモノのためだと言いながら俺に消えてほしくないと言う。

女神とはひどいものだと怒りと悲しみの混ざったような感情を抱いた俺には深く突き刺さった。

なにより世界や女神にとって都合の悪いことをはっきりと伝えられた上での言葉に嘘臭さがなく心配されたことが上っ面だけの言葉でないように感じてうれしかった。

友達が進学する中で一人働き始めた自分は周りから疎遠になりあまりの過酷さから先輩も後輩も辞めていくものが多く上司とは飲みに行ったりというコミュニケーションもなく命令ばかり

長く続けていた同期は体調を崩し自然と出勤してこなくなりたまにとるプライベートなコミュニケーションはコンビニの店員くらいしかいない自分にとっては表現しようのない感情が駆け巡った。


「ゆっくりでかまいませんよ」


リリは俺の感情を察したかのような言葉を投げかけてくれた。

過酷かもしれないが俺はもう一度始めてみるべきなのかもしれない。

いい人生ですべてが思い通りではないかもしれないが少なくとも前世よりはましかもしれない。


「転生、、、してみようと思う、、、」


重たくなって閉じた口を開き勇気をもって口に出した。

リリは変わらず宙に浮き微笑んでいる。


「きびしい決断を迫ってしまい申し訳ありません。ですがわたしはどうしてもハジメ自身に選んでほしかったのです。」


女神にも人と同じように感情があるのだろうか?

ふとそんなことを思うが女神は神妙な面持ちでふよふよと浮きながらこちらを見ている。


「転生するにあたってあなたを別の命の上に乗せる形にはできません。転移と同じ形をとります。わかりやすく言えば別の世界で生き返らせる形といってもいいかもしれません。これにはいくつか理由がありますが大きくは完全な転生を行った場合転生した肉体があなたの魂に耐えられるかどうかです。本来あり得ない存在がハジメとして存在していましたが別の存在としてあなたが存在できるかに確証が持てません。本来転生には小さな力しか必要がありません。これは生まれる前からは始まるためです。そして転移には大きな力を必要としますが召喚を行う者たちが複数名で儀式単位の魔力と呼ばれるものを大量に注ぎ込むことと元から強い肉体と潜在的な魔力が多くあるものを召喚するので成立します。」


「つまりありえない事がおこり世界のバランスを崩して存在していた存在するはずもない俺は赤ん坊の体では耐えられないし、転移するためには肉体がないからできない。だったら別の世界に生き返らせてしまえばいいということか?」


話していて舌を噛みそうになるがリリの説明を要約するとそういうことだろう。

だがありもしない肉体を異世界でどう作るのだろう。


「お伝えしづらいことではありますが、元の世界でのあなたの存在自体はなかったことにはなりますがなくなったあなたの肉体をそのまま使い、足りないものは私の管理する世界から影響の出ない範囲で少しずつ集めてあなたの体を再構築あたらしい体をつくりそこにあなたの魂を入れることにより生き返らせます。もともとあなたの体なので、肉体との整合性もかなり高く生き抜くのに不自由はしないはずです。転生先の世界に影響が出ないとは言い切れませんが限りなく影響が少なくわたしができるすべてを行う方法ではありますがいかがでしょう?」


俺を元の世界から存在しなかったことにして狂った世界のバランスを取ろうという意味合いもあるのだろうか。そこが少し気に食わなかったが女神にとっても一石二鳥で俺にとっても子供から再スタートせずに良いことづくめなのかもしれない。


「いかがでしょう?ってそれ以外の選択肢はないんじゃないか。」


リリのことを出し抜いてやったんじゃないかと少し口元が緩んでしまった。

先ほどまで怒りがわいたり泣きそうになったりと複雑だったがもう笑えていることに少し驚き緩んだ口元をばれないように戻すしてリリの方をみるとクスクスと笑っているように見える。

どうやらこちらことなどお見通しらしい。


「ええ、そうですね。すみません。」


いたずらっぽく笑うとリリは続ける。


「今回の転生にあたってあなたには通常から逸脱した能力、、、いわゆるチートスキルを最大で六つまで与えることができます。これらはあなたの肉体とは別で、、、」


「ひとつ!!ひとつだけでいい、、、」


もしも、もしも能力をもらえるならひとつだけほしいものがあった。


「おれが望むのは、、、」


それだけが‘なければ’きっと俺は自分の力だけでなんとかできる。

絶対にできる。ありえないと思っていたが何度も考えていた。考えずにはいられなかった。


「税金のない世界だ」


自分でもかなり馬鹿げた素っ頓狂なことを言っていると思うがこれ以外に望むものはなかった。

毎月給料から引かれるうん万円のお金、結局死んだらもらえない年金体が丈夫で使えなかった健康保険、住んでるだけで住民税。せめてそれらだけでもなければもっと早く借金も返せたかもしれないし、

そもそも大学に行くのに奨学金を借りる必要なんかはなかったかもしれない。

そうすれば母さんも死なずに済んだかもしれない。

あんなに働かないでよかったかもしれないし、自分の時間がもっとあって贅沢じゃなくてもいろんなことがもっとできたはずだ。


「ですがそれは、、、」


リリは少し悲しそうな表情で何かを口に出そうとすると言葉に詰まる。


「能力というか、望んだもの?、、、が、少なければ世界に出る影響が少ないはずだろ?俺の存在が世界

のバランスを崩すほどのイレギュラーだったのなら呼ばれてもいないのに別の世界に行く俺はそもそもイレギュラーだろ?だったら与える能力なんて少ない方がいいに決まってるし税金さえなければ俺は自分でで努力して自分の力だけで生き抜く。特殊能力なんかいらない。それだけでいい。」


よくよく考えればおかしなことを願っているのはわかっていた。俺に備える能力ではなくいわば転生先を選ばせろといったような願いでリリの申し出からは逸脱したものだろう。

ダメでもともとだし特殊能力なんかなくてもあんな毎日に比べればずっと楽しいはずだ。

少しわがままかと思ったが、少しぐらいはわがままを言っても構わないと思う。


こぶしを握り締め強い決意のもと睨み付けるようにリリを見つめる。


「、、、仕方がありませんね。」


はぁっとため息をついたリリは折れてくれた。どうやら転生先を選ぶことは可能らしい。


「では、あちらに横になってください。」


指をさしその先をみると気づけば消えていたはずの俺の布団が敷かれている。

さっきまでは確かになくなっていた気がするがこれも女神パワーというやつなのかもしれない。

そもそもあれは間違いなく俺の布団でここにある時点でおかしいがこの時点で無茶な願いを聞き入れてもらったのがうれしかったためかいろいろなことを考えるのをやめた。


「えと、ここに普通にねればいいのかな?」


そこまで歩いていくと俺もリリと同じように指さす。


「ええそこに横になって寝てください。目を覚ました時にはそこはもう別の世界であるはずです。」


妙に真剣な表情で言ってくる女神の言葉は少しおかしくはあったがその言葉に従い瞳を閉じた。


「いいですか?ハジメ、、、あなたの願う力が大事です。どうか、あきらめないでください」


ほかにも何かを言っていた気はするが脳みそをフル活動させていたせいか一気に襲われた眠気に負けてそのまま眠りについた。

そもそも死んでいるのに脳みそとか眠気とかあるんだろうか?最後そんなことをかんがえていた。

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