第三夜
「…助けていただき、感謝する…だがな、その見た目では!!!恐ろしさがだな!!!」
「もー、ごめんて!!ちゃんと直したじゃん、今は普通でしょ!!」
四回ほど見た目で気絶させてしまった俺は、ようやく自分の肉体を補修してだな。こうして話を聞くことができたというわけだ。
「まったくもって遺憾である!!そもそも、神であるというならば、なぜもっと毅然とした態度を貫かぬのか!!!貴殿は凄まじく常識を逸脱しておる!!いいか、神というのはだな…!!!」
…地味にめっちゃ怖いんですけど。下僕化?冗談でしょ、こんな怖い人、いらないよ…。よし、黙っておこう、そしたらきっと大丈夫なはず、願わなければいけるはず…。
助けた姉ちゃんは、実にこう、真面目一色、堅物一直線、お笑いとは侮辱の化身であるみたいな考え方でさあ、なんていうか、うん、俺、やらかしちゃったかもしんない。
もっとさ、か弱くって、人のいう事うんうん言って聞いてくれる、ぬるい感じの、ちょっと頭の足りない…小バカにできるくらいの人でないとさ、気後れしちゃうっていうかさあ、一言も言いたいこと言えないっていうか……。
「ちょっと!!!この人神様なんですよ?もうちょっと敬ってくださいよ!!も~、失礼なのはあんたの方じゃないか!!助けてもらっといて何その態度!あんた初めての救済者なんだよ?!」
「この畜生め!!!クソを垂れながら儂に説教するでない!!…ちょ!!飛んで来たではないかっ!!尾っぽを…振り回すのはやめんかっ!!ええい、あっち行け!!しっ!しっ!!!」
うん、牛はもうちょっといろいろと…遠慮してほしいんだけどね?
姉ちゃんはもうちょっといろいろと…怒りを収めて欲しいんだけどね?
牛に突撃する姉ちゃんは実に血気盛んだ。しまったなあ、血、補充するんじゃなかった。流しっぱなしの方が良かったのかも…。
「あ!!!まだいたぞ!!!」
「ようし!!囲め!!」
なんだ、騒がしくなってきたぞ。やけに弱っちそうな槍持った奴らがひいふうみ…こっちにぞろぞろやってくる。後ろの方には、さっき逃げ出した三人組がいる、誰かと話をしているようだ。
「っ!!!愚かなやり取りなどしているから!!!フルグラン卿の追手が来てしまったではないか!!早々に立ち去っていればこんなことには!!!」
なんだ、やけに説明口調だな、便利なやつだ。追手ねえ、どうだろう、話し合いできるかな?ちょっと様子を見たいところだけど。ざわついている皆さんの言葉を拾ってみるか。
「…見ろ、見事な牛だ!丸焼きにして、垂れる脂で乾杯できるぞ!!」
「無駄な肉が多そうだが、脂は期待できそうだな!!」
「たしかに廃棄部分が多いな、明日のごみ処理、きつそー!でも脂、飲みたーい!!」
「ちょ?!僕食べる気でいるよあいつら!!っていうか、焼いて肉食べないつもり?!も~!!!なんて失敬な!!!こんなに霜降りのいいお肉なのに!!!」
牛は食べられたいのか、食べられたくないのかどっちなんだ。
「フフフ…風のふるさとギルドSSランクのフルイタチさん…ですね?どうも、初めまして?フルグラン=グンと申します…ご存じ、でしたかね?・・・ご存じ、ですよねえ?」
「くっ…!!この…偽善者め!!よくもぬけぬけと…!!!
なんだこの片メガネのいけ好かないおっさんは。へっぽこどもを後ろに従え、ずずずいっと、一歩前にせり出してきたけど。あーあー、姉ちゃんが腰のつま楊枝みたいな剣を抜いちゃったぞ、まさかこれ一発触発状態ってやつ?
「その牛は…献上品ととらえて、よろしいのかな?…実に大振りで、無駄肉の多い牛だが…脂ぐらいなら、なめて差し上げても、よろしいですよ?」
「ムッキ―ぶも~!!!!!!何あのクソじじい!!神さま!!!あいつやっちゃおう、殺して埋めよ!!!ほら!!ここに穴も掘ってあるし!!!肥料もばっちり埋め込んである、ペンペン草くらいなら生えてくるから!!!」
鼻息荒いな。ちょっと離れた位置にいるのに、メッチャ生あったかい風がぶち当たるんだけど。闘牛にジョブチェンジでもしたらいいんじゃないの。
「あなた、おかしな能力を持っているそうですね?どうです、私の配下になりませんか。働き次第では、忠誠次第では、望みの物を与えますよ…?」
「え、なにくれんの。」
神たる俺に何を差し出してくれるというのか。正直興味津々だ。常日頃、牛の表面と藁、栄養豊富な肥料のもとしか見てない俺はだな、はっきり言って娯楽に飢えている!!!
「そうですねえ、名誉、地位、金、快楽…お望みとあれば、・・・食用の家畜もね?」
「家畜?」
「ッ!!聞くんじゃない!!!こいつは!!こいつはっ!!!!!!!」
どうした、やけに姉ちゃんが興奮しているぞ。腹でも減ってんのかな。それならそうと言ってくれれば、藁ぐらい噛ませてあげたのに。
「そこでクソを垂れているような野蛮なものではなく、知恵と教養を持つ…フェアリーを、何人か。ええ、散々お楽しみいただいた後に、生き胆を喰らう事ができますので、ね…?」
「こいつは!!!!わしの妹を喰らった…悪魔なんだ!!!!!!!」
おうふ。
思ったよりエグイの、キタ――(゜∀゜)――!
「ま、断ったら、メギツネともども…海の、藻屑、ですけどね?」
なんだ、海近いのか、いいなあ、俺は生前一度も海に行くことなく死んじまったからさあ、実はけっこうかなり相当憧れがあってだな…。
「ふざけるなあああああああああああ!!!お前など!!!わしが!!!成敗してくれるわ!!!!!!!!!!」
「…ざんねんです、ならば、仕方ありませんね…おまえたち!!!やっておしまい!!!!!」
ちょ!!!俺まだ返事してないけど?!なんで勝手に話ススメんの、人の話…聞かんかい!人に話…させんかい!!!
「ウルトラストーム!」
「大切断!!!」
おうふ。
恥ずかしい魔法、必殺技、キタ――(゜∀゜)――!
ずば、ずバババ!!!
ざんっ、ずっしゅずっしゅ!!
ごごごー、ブゥわあああああ!!!
ひゅんひゅん、びっちゃびっちゃ!!
どちゃ、ぶちゃ、ぐちゃ…!!!
スパンスパンと切り刻まれる俺!!!
刻まれていく端から、竜巻に巻き込まれて四方八方に飛び散る俺!!!
いろんな汁まき散らしながらパーツごとに着地する俺!!!
「何このカオス。ちょーウケるんですけど。」
「ちょ!!!小指の先ひとかけらでしゃべるんじゃない!!真面目にやらんか!!!!!」
姉ちゃんの胸元に入り込んだパーツでぼそっと呟いたら、速攻怒鳴られたじゃないか。
・・・もうさ、姉ちゃんは怖いわ、人の話聞かない奴らばっかだわ、牛焼こうと必死になってるジジイいるわでさあ。
「皆の者、取り押さ、え、ろ・・・?」
「は、はー・・・?」
・・・めんどくさくなっちゃったじゃん。
ばた。
ばた。
ばたばた。
ばた、ばたばたばたばたばた・・・!!!
「・・・はい?」
いきなり倒れ込む偉そうなやつや三人組、その他もろもろを見て、呆然とする姉ちゃんが、一人。
「てへ!!ころしちゃった!!!」
抱える頭も手もない、右手の小指の先っちょの俺が、ここに、ひとかけら。
「やったー!!ようやく神様が本気出した―!!も~、この調子で頑張ってね!!!よーし、僕はりきって全部埋めちゃうぞ、ふふ、フフフ…!!!」
世界´の炎では微塵も燃えることのできなかった、泥んこまみれのつやつやした牛が、死体を次々に埋め、埋め、埋め、埋め…。
「・・・ちょ!!!小指の先ひとかけらで壊滅させるんじゃない!!真面目にやれと、あれほど、あれほど―!!アアア、良かった、よかったよーー!!!」
ねえ、何で泣きながら怒ってんの、これって鬼の目にも涙ってやつ?
神様になっても婦女子の考えることはよくわかんないなあ、もう…。
「そーれ、くっころくっころ!!」
「はーい、くっころ神のお札はこちらで販売中だよー!!」
「次のくっころ祭りは満月の夜だよー!!!」
「くっころダンジョンはこちら―!神さまの牛特製の蘇もあるよー!!!MP回復するよー!」
今日も世界´はおおむね平和だ。
町にはくっころ神を慕う人々がボチボチおり、やけに牛マスコットを持つものが目立つ。
…なんで俺よりもよだれその他もろもろ垂れ流しのリアル牛の方が人気あるのかわかんないけど!!!
なんだ、ええと・・・その。
俺はだな、やけにフレンドリーな神としてだな。
人々に、認識されるように、なっていたりするのだな。
今俺がいるのは、くっころ教総本山。
降臨中の俺が基本的に滞在している、場所。
俺にまつわるものが、いろいろとある、場所。
俺が作った、ローグ式のダンジョンを中心に、宿屋、道具屋、武器屋、くっころ教本部、くっころ温泉、ぽっくり病院、くっころミュージアムにくっころ劇場、あと…学校もあったかな?
ここは何もない荒野だったんだけど、ずいぶん…様変わりしたもんだ。
・・・これからも、変わっていくのかね。
「あ!!神さま、こんにちは!!」
「ういっす!どお、何か困ってない?」
「こまってなーい!あ、お金あんまりなーい!!」
「じゃ、働け!!乙!!!」
「あ、神様降臨中だ、拝んどこ!!」
「今日も無事降臨されとる…最近はきれいなお姿ばかりで…ようございます。」
俺は今、日課の総本山ウォーキングの真っ最中。
一般市民が声をかけることもあれば…遠くで手を合わせる人を見ることもある。
つかず離れずの、いい関係が、築けている…と、俺は思ってる。
だが、ここに来るまでは。
・・・結構、迷走、したんだ。
やけに荒んだ世界´を、穏やかな世界にするためにさ。
荒んだ原因となるやつらを、どんどん消していかないといけなくてさ。
「なに、では貴殿は命を自由にすることができるというのか。」
「うん、だからさあ、悪い奴らとっとと殺していこうと思うんだけど、いい悪い奴ら知らない?」
「いい?!言葉の選択がおかしいではないか!!悪者はすべからく悪者であり、粛清されるべき存在であって、いいなどという表現は実に…!!!」
やけに真面目な姉ちゃん…イタチちゃんはだな、実に怒りっぽくて相当怖くて大変ではあったものの、かなり優秀な助手として活躍してくれたんだな。
まず初めに、手配されてるような悪人どもを片っ端から殺していったんだけど、割とこう、問題に直面することが多くてさ。
まあ、そういう時のサポート力がさ、ハンパないのなんのって。
知名度のあるイタチちゃんがいたからこそ、いろんな情報が入ってきたし、行動に移せたんだ。
うっかりおぼれた時も、爪一枚になっちゃった時も、おばけ扱いされて放火された時も…いつも助けてくれたし。
世界´ってのは、けっこう何とかなるもんらしくてさ。
わりとさあ、ひどいことやってる奴らを派手に壊滅させてもなんとかなったんだな。
いきなり城ひとつなくなってもさあ、なんとかなるもんだったんだな。
もともとさ、どっかの誰かが気楽に生み出した世界なんだ、この世界´は。
そんなに気構えてかかんなくても、なんとかなるに決まってんだな、多分。
俺、ちょっと真面目に考えすぎてたみたいだってね。
もっと気楽に、神様やっときゃよかったんだってね。
できるわけないなんて初めから決めてかかんないでさ、ぬるーくやってりゃいいって…気が付いたんだよ。
おかしなことを言う奴はその場でぽっくり、それで何とかなっていくんだ。
「あの農場のやつらを惨殺したいのだが。」
「はいアウト―、ぽっくりぽっくり!!」
「敵国を消滅させたい。」
「はいアウト―、ぽっくりぽっくり。」
「神!!お前を殺して俺が神になる!!!」
「はいアウト―、ぽっくりぽっくり。」
「あいつがうらやましくて仕方がない、殺してほしい。」
「はいアウト―、ぽっくりぽっくり。」
「人を殺したいのだが。」
「はいアウト―、ぽっくりぽっくり。」
「少々気楽にぽっくりし過ぎなのではないか!!」
「ええー、難しい事ぬかす頭の固いジジイどもはぽっくりでいいじゃん…。」
「貴殿には敬うという感覚が存在せぬのか!!大体だな…!!!…聞かんか!!!」
「…ちょ、耳、ちぎれるから!!!引っ張りすぎ、ダメ!」
けっこう、かなり、ずいぶん、そうとう、イタチちゃんにド叱られながら、少しづつ、世界を変えていったのさ。
「も~、イタチちゃんはちょっと真面目すぎるんだよ、もっとさあ、肩ひじ張らずに、ゆるーく、行こ?ね!!」
「おぬしは緩すぎるのじゃ!!!その緩すぎる下半身を…何とかせい!!!・・・だから尾っぽを振り回すなと、言うておろうがああああアアア!!!アアア!く、唇に飛んできた!!ペッ、ペッ!」
あれは…イタチちゃんが二人目の娘を産んだあたりだったかな?俺の肉体がさ、不注意で腐敗しちゃってさ、病原の媒体になるってんで、燃やすことになっちゃったんだな。
……ずいぶんぶりに、天界に帰る事にしたんだ。
帰ったら、また「くっ、殺せっ」のセリフが吐かれない限り、また地上に降臨することはできない。ずいぶん悪者の減った世界´で、「くっ、殺せっ」が、発生する確率はかなり、低いと、思われた。
「では…聖炎で…送り、ます。神よ…今まで、ありがとうござ…ううっ…!!!」
「イタチちゃん、今まで、ありがとう。」
「・・・っ。」
俯き、涙をこらえる、イタチちゃんの、姿。わりと腐りきっててキモかったのに、俺を抱き締めてくれてさ。
……その横で、牛がいつも通りに…ばっしゃばっしゃと!!!
なんという空気を読まない、絶好調な消化っぷりなのかとあきれ返っていたのだが。
「くっ…、殺せ…。わしは、貴殿のおらぬ、世界…などっ…!!!」
きゅ、きゅい・・・・
こ の お と は ! ! !
きゅ、きゅいいいいいいいいいいいいいいん!!!
「はへ?!」
久しく聞いていなかった、あの音が!!!
聞こえた、瞬間!!!
薪の上に立っていた、俺の空間がねじれて…!!!
グゥえええええええええええ!!!気持ち、悪いぃイイイイイ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
・・・ってね。
俺は、新しい肉体を、手に入れたんだな。
ピッカピカのつやつやの、新しい肉体。
腐りきったのは、渦に巻き込まれて消えてくれてさ、薪も無駄に燃やさずにすんでさ。
「ど、どうなっておるのだ!!!わしの、儂の涙、返さんかい!!!!!!!!」
「おお、ごめんごめん、まあまあ、これからもよろしくね?」
新品の体がだな、早々に絞殺されそうになって、焦ったのなんのって。
どうやら、俺のくっころパワーってのは、キーワードだったらしいんだな。
「くっ、ころせ」
このキーワードで、俺ってのは、召喚される仕組みになってるらしい。
そこで俺は考えたわけだ。
これ、うまく使ったら、いい感じに悪い奴ら、抹殺できねえかなってさ。
神を呼び出してさ、悪い事企むやつっているはずだと思ったんだな。
神を誑かせると思ってる、悪いやつっているはずだと踏んだんだな。
くっころ教を作って、「くっころせ」を、開放したんだ。
山を削ってくっころ総本山を作り、そこで祭りを開催し。
くっころ教本部で、適当な経典を作って。
俺を呼び出すキーワードを配布した。
「くっころせ!!」
「オッスオラ神様、なんかよう?」
「悪魔どもが気に入らないから、滅亡させたい。」
「うーん、無理、あの人たちも意外といい人で…。」
「貴様など、神ではない、死ね!!」
「うーん、アウトだね、ぽっくりぽっくり。」
「くっころせ・・・。」
「オッスオラ神様、なんかよう?」
「人間などすべて滅べばいい…我が血肉を捧げる、全人類を…」
「うーん、アウトだね、ぽっくりぽっくり。」
「くっころせー!」
「オッスオラ神様、なんかよう?」
「ぎゃあああああ!!ほんとに出た!!!お金ちょうだい、ハーレム欲しい、アレも欲しいこれも欲しい!!」
「うーん、自分で何とかしなよ!」
「なんだよ!!できねえのに神かよ!!死ねよ!!!」
「うーん、アウトだね、ぽっくりぽっくり。」
愚かなにおいがしたやつは、サックサックと殺していってさ。
わりと順調に粛清が進んで行ったんだな、ある程度はさ。
「いじめられてるの、なんとかして?」
「あーあー、いじめっ子君、なんでイジメんのさ。」
「だって俺エルフ嫌いなんだもん。」
「はい、ぽっくりぽっくり。」
「なんでうちの子が死ななきゃなんないの?!エルフなんか滅亡すればいいのに!!生き返らせてよ!!」
「はい、ぽっくりぽっくり。」
「なぜ尊い人間がエルフごときに命を奪われなければならないのだ!」
「はい、ぽっくりぽっくり。」
「あいつにもいじめられる原因があったんだ!」
「あいつ怒らせると殺されるぜ?」
「あいつに近寄るのやめようぜ。」
「みんなが僕をイジメるの、なんとかして?」
「具体的にどんな風に助けてほしいのさ。」
「みんな殺してほしい!あいつらがいるから、人間なんかがいるから、僕は!」
「はい、ぽっくりぽっくり。」
「なぜ希少種であるダークエルフを殺したのだ!!全人類、全てを抹殺する!!!」
「はい、ぽっくりぽっくり。」
この一連の流れで86人殺したんだよね。
週間ぽっくりニュースで取り上げられてさあ、人々の認識がずいぶん変わったんだ。
みんな仲良く、適当にってさ。
みんな平等、争うのは危険だってさ。
みんな生きてる、命は大切にしようね、自分のも、他人のもってさ。
誰かを恨んで神様呼び出して、殺してほしいと願ったところで殺される。
誰かを恨んで神様呼び出して、殺せたところでどこから飛び火してくるかわからない。
巡り巡って自分が殺されるパターンがあるって学んだんだな、人々は。
―――くっころくっころくっころせ!!神さま―こっちきてー!!!
おお、呼び出しが来たぞ!!!
もうずいぶん召喚慣れしてしまった俺は、気持ち悪くなることもないのさ。
実に華麗に、俺を願う誰かの元に現れることができるのだ!!!
ぼよん!!!
「呼ばれて飛び出てウヒヒのひ!!オッスオラ神様、なんかよう?」
「あのねえ、あたし美味しいものつくったの!!初めて作ったの、一緒に食べて!!」
おお!!実にうまそうなハンバーグが!!よーし、肉体の味覚繋いで賞味させていただこうか、ぐふふ、腹いっぱい食うぞー!!!
「わーい、美味しいものだ!僕も食べる!!」
召喚されると、牛も自動的についてくるんだよなあ、地味に邪魔だ…俺の食う分が減ってしまう。
……つか、いいかげん牛のくせに肉食うのやめたらどうなんだ。
「え…牛さん、食べるの…?」
ドンビキする少女の横で、牛が・・・
びっしゃ!!びっしゃ!!!!!!!!!
「きゃあああああああ!!!」
「ちょ!!!おま!!!ここ玄関ド真ん前!!市街地の中心部!!!ちょっとは自重しろよ!!!!!またイタチちゃんに怒鳴られるぞ!!!」
「だって出るもんは仕方ないでしょ!!!も~、細かいこと言わないでよ…。」
気のせいか、最近呼び出し回数がさあ、減ってる気がするんだよね。
もしかして、牛の絶好腸が関係してるんじゃないかって、薄々、気が付いていたり、しないでも、ない…。
「ちょ!!!しっぽ振り回すなよ!!!は、ハンバーグに入るだろ!!!」
「あはは!!!神さままたなんかやってる!!!」
「牛さんに草あげていいですか!!!」
「おーい、神様の牛のお恵みあったから、砂持ってきてー!」
「神様、帰りこっちでパン食べてってー!」
「神様―、これイタチ婆さんに返す聖本、渡しといてもらっていい?」
「ごめん、ゴキブリ退治してもらっていいかな…?」
・・・うん、俺、人気、あるよね?
・・・この世界で、うまく、やってるよね?
俺は、ちょっと塩の効き過ぎた、生焼けのハンバーグをいただきながら。
今日も、くっころ神を…満喫、している。