第1章1話 「衝撃の事実」
――俺は今、見知らぬ部屋にいた。
現時点の謎ポイントを解説しよう。
一つ目は、この部屋がどこなのかだ。
この部屋はあまりにも豪華な内装となっている。俺の前世の家とは違う。
そして二つ目は、なぜ『終焉の女神』まで転生してしまったかだ。
「どうしよう……」
涙目で呟いているアリア。
俺は隣で泣きそうなアリアをちらりと見ては、少し尋ねた。
「なあ、女神様。女神様はどうして転生したんだ?」
「私の意思で転生したわけじゃないのよ! 何か、いや、何者かが邪魔をしたんわ……」
「女神様が転生するための魔法を間違えたとか……?」
「違うわよ! 魔法陣に注いだ魔力は万全だったはず。それなのにどうしてこうなったの」
意味が理解できない状況に、女神は混乱している様子だ。
俺もこの状況は理解できない。偏差値低いしな。学校では上からより、下から数える方が速かったんだぞ。
俺がそんなことを考えてる中、ふと、女神が頭をもたげた。
「あ! いいこと思いついたわ。ふふふ……彼女がいるじゃないの」
「彼女って誰だよ」
「私の親友の、『水の女神』のことよ。彼女はなぜか転生魔法を扱うことができるから、彼女に頼めばいいんだわ」
「どうやって頼むんだよ」
「はっ! そうだった!」
女神は頭を抱えて蹲る。
俺は頭を掻き、女神の肩に触れる。
女神は驚いて振り返った。
「な、何よ!? 私は今物凄く絶望してるんだから。話しかけないで」
「違う違う。ここは協力関係を築こうぜってことだよ。右も左もわからない状況下の中、一人で模索するのは大変だろ? なら、まずは俺たちがいる建物の中を調べようぜ」
「それも一理あるわね」
「一理っていうか、最もの善策だと思うんだがな……」
俺は苦笑しながら、部屋のドアを開けた。
すると俺は、ドアの向こうにいた誰かとぶつかった。
「柔らかい感触……これは一体……?」
「王子様は変態なのですか?」
そう、俺がぶつかったのは一人のメイドだった。
燃える様な赤い髪を揺らし、メイドの少女は俺に淡々と言う。
さらに、俺はメイドの少女の胸に手が触れていた。俺は驚いて手を離す。
しかし、俺はどうも『王子様』と呼ばれたことに一番驚愕していた。
「え? 今、俺のことを王子様って言ったか?」
「はい」
「俺が、王子様……? は?」
「王子様は王子様です。それ以上、それ以下でもありません」
「え、えぇ……」
俺は新たなる謎を再び見つけてしまった。
メイドの少女は琥珀色の瞳でアリアを見るなり、形相を変えた。
「あなたは、誰ですか? もしかして侵入者?」
「いやいや、私は通りすがりの女神ですって……」
「分かりました。では今すぐ処分します。王子様への部屋へと勝手に入った罪は、重いですよ」
メイドの少女の周りに、謎の赤い浮遊物が浮かぶ。
さすがに俺はまずいと思い、メイドの少女の腕を掴んだ。
「ちょ、ちょっと待てって!」
「王子様……」
すると、メイドの少女の周りに浮かんでいた『赤いもの』は消滅した。
俺は胸を撫で下ろし、メイドの少女に尋ねた。
「なあ、ここってどこなんだ? それに俺が王子様ってどういうこと?」
「はぁ……」
メイドの少女は溜め息を吐き、口を開く。
「ここは『アルカ王国王城』ですよ。王子様は『クウト王子』と言う名前で、この建物の住人の一人です。そしてわたしは王子様に仕えるメイド、リンです」
情報量の多い台詞に、俺は首を傾げる。
「ええと、つまり王子様はアルカ王国王城の王子ということです」
「おいおい、まじかよ……」
俺は、メイドのリンを隣に、アリアを前にして苦笑した。