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転生を希望します!【番外編】  作者: 黛ちまた
イケメンカフェ リターンズ?

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庇護とは何なのか

ルシアン視点です

 ギルド発足に関する資料を楽しそうに眺める兄を横目に、ゼファス様に裁可をいただく為の書類を認める。


「各国に格を付けるとはなかなか面白い案だけど、誰の思い付きなんだい?」


「ダヴィドのようです」


 読み終えた書類を机上に戻すと、背もたれに寄りかかる。髪の色などは違うが、兄は父に似ている。口調や仕草などが。


「レーゲンハイムだね。

これはあちらでも使えそうだ。そなたの望みを叶えるのに役立つ」


「えぇ」


 ダヴィドは公家に認められた国だけが医療ギルドの創設を許されるようにしてはどうかと言った。

 医療ギルドに興味を持つかどうかは国によるだろうが、国力の有無を外部から判定される。それは他国との交易において足元を見られる材料となる。

 国力の維持、向上を望むなら医療ギルドの設置を認められる程に国内を安定させねばならない。

 平民達をこれまでのように粗末に扱うことは出来なくなるし、国力がある事を認めさせる為に既存ギルドをこれまで以上に活用する事が求められる。


「それにしても医術とは考えたね。

堂々とマグダレナの民とあちらの民の差が如何程のものか調べられる」


 彼女ミチルはこの大陸における医療技術の遅れを気にしていた。医者にかかる事が出来るのは貴族、もしくは富を持つ商人ばかり。

 魔道学研究院院長のエスポージトの助力を得て、孤児院の少年に医術を学ばせているが、机上と実地は大きく隔たりがある。あの少年が真に医者となれるかはまた別の話だ。

 ラルナダルト家が皇都にて平民向けに薬を安価で販売していると言っても、全ての病に対応できる訳ではない。

 ミチルはあちらに深く入り込む為に医療ギルドを立ち上げたいと思った訳ではないだろうが、兄が言うようにこちらからすればまたとない機会でもある。


 前女皇エリーゼの死からミチルは思案に耽る事が増えた。

 何も聞いてはこないが、感じ取ってはいるようだ。

 

 書類にサインをする。

 この書類がゼファス様に裁可されれば公家は堂々と各国を回れるようになる。無論どの国も公家による視察を拒否する権利を有する。

 強引に開示させるつもりはない。いずれどの国も門戸を開くことになる。


「エリザベスの代わりにクロエが行きたいと騒ぐかと冷や冷やしていたけれど、あれでミチルを慕っているんだね」


「いいえ、ロイエが許さないからです」


「ロイエが?」


「クロエは誰彼構わず治験をしますから」


「……それは駄目だろう」


 カーライルでの事を思い出したのか、兄が疲れた顔を見せる。ロイエからはクロエの解毒剤で辛い思いをしたと聞いている。


「もし自分の知らぬ場所でそう言った事に及んだ場合は処す、と宣告されています」


「……ロイエに感謝するよ」


「そうですね」


「それで、姫のご機嫌はどうなんだい?」


「あまり」


 また食欲を失ってしまわないように、強引に食べさせてはいるが、それにも限界はある。


「姫の他者への思いやりは美点ではあるが、助ける力を有するが上に苦しみもまた多くなる」


「無理な事と分かっていながら己を責めてしまうのは、あちらでの倫理観故でしょうね」


「生きる世界と異なる倫理観を持つのは生きづらいだろうに」


「そう言った煩わしさから守る為にも、転生者は高位貴族と婚姻を結び、知らなくて良いものから隠されていたんでしょう」


 転生者の気質は一概には言えないが、こちらと異なる倫理観を持つが故に周囲と摩擦を起こしたり、精神を疲弊させたものがいたという。

 彼らが持つ高度な知識の恩恵を受ける為、各国は囲い込むことを決めた。


「転生者とはなんなのだろうね」


 手元の本を撫でながら、独り言のように呟く。


「八代目女皇イルレアナは転生者であり、女神の愛し子だった。その子孫であるアスペルラ姫は愛し子だが転生者ではない。転生者=愛し子という図式ではない。平民にも転生者は生まれる」


 兄は首を傾げた。


「あちらにも転生者はいると思うかい?」


「どうでしょうか」


「魂の捩れが神の意図によるものなのかどうなのか」


 イリダとオーリーの技術力の高さが別の転生者によって齎されたものかという意味でなら。


「私の予想では、受け入れないと思います、イリダ神もオーリー神も」


 女神マグダレナの兄である二柱の神は、己が力を誇りに思っていた。

 力こそ全てとするオーリー神と、叡智こそ美とするイリダ神が、転生者による知識を良しとするとは到底思えなかった。


「ルシアンもそう思うかい?

我らの思う通りならば、この大陸に生きる者は女神の庇護を受けていると言う事になる。マグダレナの民でなくともね」


「あちらの大陸に広がった魔素の事をおっしゃっているんですか」


 そうだよ、と答えて兄は頷いた。


「予断も過ぎれば毒となるだろう。女神が一体何を思って魔素を蔓延させたのか、時間をかけてかの民を滅ぼすつもりなのかどうなのか。

愛し子の機嫌を損ねない為だけに敵国の民を助けると思うかい?」


「一瞬で滅ぼせたものを生かした理由」


「そうだよ。

だって魔素があちらにもあると知ったらミチルは苦しむだろう?」


 確かにミチルは女神の愛し子だが、ミチルの為だけに他のマグダレナの民を犠牲にするとは思えない。

 あの時、女神は己が民を救う為にミチルを利用した。無論ミチルの意思はある程度尊重した結果だろうが。


「この大陸に生きる平民達は千年の月日を経ても魔力の器を持ち得ません。魔素の耐性があるからこそ死にはしませんが、マグダレナの民と比較すれば短命です」


「短命の呪いをかける為なのか、本当に滅ぼしてしまうつもりなのか……」


「真意は分かりません」


 あともう少しで分かりそうなのに、もやがかかったようだ。

 輪郭が見えたかと思えば、次に目にした時はその形を変えている。

 情報が足りない。


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