リュドミラ書庫<ヘンゼルとグレーテル>
ヤンデル(病ンデル)とズレーテル…。
スミマセン、ちゃんと本編書いてますっ!
ルシアンの手に、またしてもリュドミラ文庫らしきモノがある。
今度は何だ。何だって言うんだ。
赤ずきん、人魚姫ときて、次は……"ヘンゼルとグレーテル"?
え……?それは……色々あかんでしょ!だって、二人は兄妹だよ?!倫理に触れちゃうよ?!
私が怪訝な顔をしているのに気付いたルシアンは、笑って言った。
「安心して下さい。ヘンゼルとグレーテルは再婚同士の連れ子なので血の繋がりはありません」
ほっ。良かったー。
いやー、本当危険ですよー。
……って、そこじゃない!いや、そこも大事だけどそこではなくてだな?!
「兄のヘンゼルは妹のグレーテルが可愛く仕方ないんです。それはもう、閉じ込めてしまいたいぐらいに」
…………えっ。
ヤンデレなの……?
「ヘンゼルに依存するグレーテルに、グレーテルを溺愛するヘンゼル。両親は子供達の未来を案じて、引き離す事にします」
両親がまともだ……!
血が繋がってないんだから、そこまでしなくても良い気がするけど。
「一度引き離す為にヘンゼルを丁稚奉公に出そうとしますが、それを察したヘンゼルは小石を沢山持ち、等間隔に小石を落として行き、無事に家に戻ります」
丁稚奉公先に無断で帰宅してないよね……?
何とも言えない気持ちになっている私を見て、ルシアンはふふ、と笑う。
何、その笑み?怖いんですけど……?ついでに色っぽいんですけど?
「両親は本格的に二人を引き離す事にします。
知恵の回るヘンゼルではなく、グレーテルを行儀見習いとして、森の魔女の元にやる事を決めます」
行儀見習いさせてくれる魔女とか、意味不明なんだけど?
良い魔女って事?
「グレーテルは小石を用意する間もなく家から連れ出されてしまいます。用事を済ませて帰宅したヘンゼルはグレーテルがいない事に気付き、森の中に探しに行くんです」
登場人物が一緒だって言う事と、使用するアイテムが一緒だけど別物だからね、これまでの話も。
もう諦めたよね……本当に。
「森の中に進んだヘンゼルを待っていたのは、魔女です。でも、グレーテルが預けられた魔女とは違って、性根の捻じ曲がった魔女の方だったんです」
おぉ、もしかしてそこでお菓子の家が?!
「言葉巧みに魔女をその気にさせ、ヘンゼルは魔女にグレーテルの好きなもので作ったお菓子のお家を作らせます」
魔女よりヘンゼルの方がワルモノに見える件。
「お菓子の家が出来たヘンゼルは、懇々と魔女を諭して聞かせ、森の魔女の元に行かせます。
魔女は性根が捻じ曲がっていて、森の魔女と仲良くなりたかったのに、いつも心にも無い事を言って、森の魔女を泣かせていたんですよ」
……ほほぅ?
なんだか予想外も予想外過ぎて面白くなってきたぞ?
「魔女が森の魔女の元に行くと、ヘンゼルと離れて寂しくて、毎日泣き暮らしているグレーテルがいました。
魔女の元にヘンゼルがいる事を知ったグレーテルは、ヘンゼルの元に行きたいと言います。魔女は森の魔女と仲直りしたのもあり、二人を会わせてあげたいと森の魔女に言います」
……まさかの百合展開……?
魔女様たちってば百合なのかしら……?
ミチルの知らない世界きちゃう感じ?!
「森の魔女も、離れて暮らすヘンゼルとグレーテルに同情して、会わせてあげようと考えます。
晴れてグレーテルはヘンゼルと再会します。喜ぶ二人に、魔女達は二人が幸せに暮らせるようにまじないをかけて去って行きました」
再会したのが嬉しいような、嬉しくないような、この後の事を考えると何とも言えない展開……!
ルシアンの手が伸びてきて、私を膝の上に座らせる。
「それで……二人はどうなるのですか?」
「魔女がお菓子の家を作っているのを見て、ヘンゼルは魔法の使い方を覚えていくんです」
魔法使いになっちゃうんだ、ヤンデレヘンゼル……。
ハハ、もうね、グレーテル監禁の未来しか見えません。
ルシアンがにっこり微笑む。
まさかルシアンまで魔法が使えるようになったんじゃあるまいな?……ってそれはないのは分かってるけど、笑顔が怖いデス。
「ヘンゼルは魔法をかけるんです。この森に二人以外が入って来れないように。二人が森から出られないように」
はい来た!
ヤンデレお得意監禁コース!キタコレ!
「二人は幸せに暮らしました。めでたしめでたし」
えぇー……?
いや、でも、グレーテルはヘンゼルに依存してるんだもんね。
二人が幸せだから、良いのか……?
両親どうなった?
「不満?」
尋ねながら私の髪を撫でてくる。
「不満と申しますか……」
ツッコミ所満載だよね。
「どの点が気になるの?」
「気になると言うか、ヘンゼルは望んでそうしてますけれど、グレーテルはどうなのかなと」
「グレーテルはヘンゼルに会いたいと魔女達に願いますよ?」
そこはそうなんだけど、ずっと閉じ込められるのは想定外じゃないの?
「グレーテルの思いは恋情なのですか?」
「さぁ、どうでしょうね。そこまでは書いてないので分かりません」
キスが降ってくる。
これは話を続ける気がないな?
ヤンデレは基本、相手の気持ちお構いなしだもんね。
好きだから閉じ込めて自分だけのものにしたいんだから。
ルシアンの顔をじっと見る。
優しい目で見つめ返される。
え、これきゅんとくる。
「……ミチルはこの城から出たい?」
「ルシアン、何処かに行かれるのですか?」
また置いてけぼり?!
思わず服を掴むと、ルシアンは首を振り、私の手を握る。
「いいえ、私はミチルのいる場所にいます」
ほっと息を吐く。
良かったー。またお留守番かと思ったよー。
「安心しました」
満足気に微笑んだルシアンは、私の頰を優しく撫でる。
「可愛い事を言いますね」
え?可愛い?本当?セラ先生に褒めてもらえそうな感じ?
「嬉しいのですか?」
「嬉しいですよ」
蕩けた目が近付いてきて、キスをされる。
甘い。
「嬉しいから、もっと言って?」
何かのスイッチを押したっぽい!
「……もっと……?」
「そう、もっと」
同じ事を言えば良いの?それともルシアンを喜ばせる事?
え?ルシアンを喜ばせる言葉って何よ?
何を言ったものかと悩んでる私にお構いなしに、キスが降ってくる。
言わせる気あるの?
ちょっ……いや、本当に、キスが止まらな……。
ルシアンの顔を両手で掴み、キスを止めさせる。
……つもりだったのに、頭を抱き寄せられて、止めるどころか手を添えるみたいになってるがな!
「このまま、閉じ込めてしまいましょうね」
監禁宣言?!
「私のグレーテル」
ヤンデレが!病ンデレが発動されました!