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転生を希望します!【番外編】  作者: 黛ちまた
リュドミラ書庫もしくはなってみたシリーズ
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リュドミラ書庫<お代官様お止め下さいませ>

「ねぇ、ミチル」


「何ですか?」


ルシアンは本を読んでいる。表紙にカバーがかかってるから、何の本かは分からない。

その横で栗をたっぷり入れてもらった栗蒸し羊羹を食べる私。ふふふ。栗蒸し羊羹ですよ!ワガママを言って作ってもらったのだ!

秋!栗!栗饅頭、栗どら焼き、栗蒸し羊羹!他にも色々と栗を入れる料理があるよね。栗尽くしを堪能する日々です。あぁー、しあわせー!

秋刀魚食べたいなー。内陸だから秋刀魚高いだろうなー。お小遣いで買えるかなぁ。っていうか、秋刀魚っているのかな?


「お代官様とは、どういう立ち位置ですか?」


?!


「ど、どうしたのですか、突然?」


「いえ、本を読んでいるのですが、見慣れぬ設定だったもので、燕国が舞台のもののようなので、ミチルなら知ってるかなと」


ルシアンが手にしている本を奪う。

…………あっ、コレ!リュドミラ書庫だ!


「何故リュドミラの本がここに?」


「先日、レシャンテが送って来たのです」


レシャンテ!!

大事な若様にこんな破廉恥本を送らないで!!

被害に遭うのは私なんだから……ってまさか、わざとか?!


「燕国の官吏制度については知ってますが、代官、などと言う役職は存在しません」


こっちにはないんだ?代官。


「代官というのは、領主の代わりに事務を行う役目に就いた者の事です」


「あぁ、だから"代官"なんですね。ではこの"よいではないかよいではないか"と言うのは?」


私の手の上にのっている本の、一文を指す。


「こ、これはですね、手篭めにされそうになっている女性の帯を引っ張って、その、下着姿にしようとしているところデス……」


「おび?」


「重ねた服がはだけないように腰に巻く布、ベルトのようなものです」


「ふぅん?」


ルシアンの目がキラリと光ったような気がした。


「で、ですがこれは、上手くいかないのですよ」


「上手くいかない?」


「そうです。この手篭めにされそうになっている女性が自発的に回らないと、くるくる回りながら、よいではないかよいではないか、なんて上手い事はいかないのです」


だからやろうとか思わないでっ!


「…よく、知ってますね?」


……アレ?

笑顔なのに、なんか仄暗いヨ……?


気が付けば腰に腕が回されている。

私の手にある本を取り上げると、テーブルに置いた。空いたルシアンの右手はそのまま私の頰に収まる。


「あ…あの……」


「何故、上手くいかない事を知っているの?された事があるの?」


そこか!

経験者だから具体的に答えてると思ったって事?!


「修学旅行で……」


「しゅうがくりょこう?」


「同学年の生徒と皆で泊りがけで出かけるのです」


「へぇ、泊りがけ…」


腰に回された腕に力が入る。

前世の修学旅行の制度にまで怒らないで…!


それで?と、続きを促される。


「宿に浴衣と呼ばれる夜着が置いてあって、そこで帯があって、部屋には女性しかいませんから、皆でその、よいではないかごっこをしました」


そこでようやくルシアンの顔から仄暗いものが消えた。

……ホッ。


「それでその時に、思ったよりも上手くいかない事に気が付いたと言う事ですね?」


「ソウデス」


前世にまで嫉妬するのはおヤメいただきたい。


「安心しました。ミチルが前世で結婚せず、恋人もいない事は知っていましたが、そう言った被害に遭ったかどうかまでは確認してませんでしたから」


「そんな目に遭った事はありませんから、安心して下さいませ」


そして地味に傷を抉るのはやめてクレタマエ!


にっこり微笑んでおでこにキスをしてくる。


「過去も、現在も、未来も、貴女に触れるのは私だけでありたい」


きたな、ヤンデレ!

そしてそれを可能にするんだから、だいぶオカシイ。

そんなヤンデレに満更でもない私もかなりオカシイ。


じっと私を見つめるルシアンの視線に、嫌な予感しかしないので、あらかじめ言っておく。


「よいではないかごっこはしませんよ?」


「ごっこでなければ良い?」


いやいや!ないない!

あり得ない!

あんなの情緒もへったくれもないんだよ!

くるくる回り過ぎて目が回って気持ち悪くなっただけだったし!


「そんな事せずに普通に脱がして下さいませ」


って言うか、夜着なんて紐だけなんだし、直ぐに脱がせられるよね?もしかしてアレに情緒が無いって事?


「じゃあ、遠慮なく」


ルシアンの手が背中に回る。


「ちが……っ!今ではなく!」


抵抗するものの、紐が解かれていく。

ルシアンの笑顔に、色々ピン!ときた。


「ルシアン!今のを言わせる為に知らないフリをなさったのですね?」


ふふふ、とルシアンは笑う。


「気付いてしまった?」


キスが落ちてきた。


「以前ミチルが言っていたでしょう」


キス攻撃に必死に耐えていると、ルシアンが話し始めた。


「伴侶に飽きられない為の努力」


そんな事、言ったような、言ってないような??


「ですから私も、愛する妻に飽きられないように、色々と試行錯誤を重ねているんですよ」


試行錯誤する方向性がソレってどうなの!


「こうしたらミチルは喜ぶだろうか、それとも恥ずかしがるだろうか、そんな事を考えています」


……ユー、その頭の良さの使い所、間違ってない?

もっと別の事に使ったらどうカナ……。


「よいではないか、と言うのはどうも私にはしっくり来ないので」


まだ続いてたの、ソレ?!


艶っぽいルシアンの微笑みに、心臓がドキッとする。


「いいでしょう?ミチル」


な……っ!ひわ、卑猥……!何か卑猥!


「駄目です破廉恥です、まだ昼間ですっ!」


「愛し合っているうちに直ぐに夜になるから安心して下さい」


全然安心出来ないっ!

そもそもそれって安心って言うの?!


「ね?ミチル」


あーーれーーっ!(お約束)


あーれー、までが様式美です。


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