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転生を希望します!【番外編】  作者: 黛ちまた
アルト家 家訓!

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迷ったなら目標を立ててみよう

「不貞腐れて菓子ばかり作ってるって聞いたけど?」


 呆れた顔でゼファス様が私を見るけど気にしない。

 って言うか作ったそばからお菓子食べていくの止めて下さいヨ。大体その食べた奴何処に消えるのさ。亜空間にでも繋がってるのか?


 私は今、カフェに出すお菓子作りに燃えている……訳ではありませぬ。

 各地の店を利用する予定だから、お菓子を作る必要はないのです。

 じゃあ何でかと言えば、心のもやもやを解消すべく作ってる。

 ストレス発散であり、何かを完成させる事は自分の中の自己肯定感を上げる為……とか色々と言い訳をしてるけど、結局の所、何かしてないと落ち着かないって言うか、ラトリア様やロシェル様、アレクシア様やフィオニア達の事が頭にチラついちゃうのですよ。……それと、自分の事。


 ボウルの中の卵白をこれでもかと撹拌して、メレンゲにしていく。

 シフォンケーキを焼くのではなく、メレンゲクッキーにでもしようかと思って。

 サクッと仕上げたいと言うのと、糖分の過剰摂取を必要とする人にあっまーいのを食わせてやれ、と言う気持ちから、卵白の倍量の砂糖を投入して立てたメレンゲを、天板に並べていく。


「メレンゲクッキーよりもマカロンが良い」


「メレンゲクッキーの気分なのです」


 ぴしゃりと拒絶すると、ゼファス様がため息を吐く。


「そなたが気に病む事ではないだろう」


「……分かっております」


 私の所為じゃなくても、自分の大切な人や知った人が傷付くのを見るのは嫌なものだ。

 ふと、過去──前世の自分を思い出す。

 前世の私はあまり人と深く付き合わないようにしていた。自分が傷付かない為に。

 でも今の私は真逆で、人に囲まれて、人に守られている。大切にしてもらって、そのお返しをしないといけないって思ってしまう。って言うかしたい。

 マグダレナ様は私とミチルの魂は混じってるって言ってた。だから、前の私と今の私は、同じ部分もあるけど、違う部分もある。


「女神の愛し子や、転生者などと呼ばれても、私自身は大した知識も技術も持ち合わせておりませんし、特別な力もありません。

せめて邪魔にならぬようにと屋敷に閉じ籠もり、私の出来る事を為しているだけですのに、何故こうなるのですか……?」


 存在がいかんのか?

 属性だけはチートだから?


 予熱の済んだオーブンの中にメレンゲを絞り出して並べた天板を入れて、焼きをスタートさせる。


「……ミチルに特別な能力が無い事なんて、ここにいる者は皆知っているよ」


 せめて能力があれば良かったのにと、何度思ったか知れない。

 なんにも出来ない。してもらうばっかりで、なにも返せない。


「特別である事を望んでもいないし」


 オーブンの前に屈んだままで見上げると、ゼファス様は難しい顔をしていた。


「確かにミチルは転生者だし、女神の愛し子だけど、それはそなたを構成する一つの要素でしかない」


 ……珍しい。そう思った。

 ゼファス様が私を励ましてくれてる。


「皆、好きでやっている。だから気にする必要はない。

オーリーもイリダもリオンが言った通り滅んでもおかしくなかった。助けたのはそなたと女神の情けだった。それなのに更に欲を出す彼奴あやつらが悪い」


「……もしかしなくても、励まして下さってますね?」


 目の前にあったクッキーをゼファス様が投げて来るのを慌ててキャッチする。


「食べ物を投げるなんて!」


「ミチルが台無しになるような事を言うからでしょ!」


 ゼファス様の顔が少し赤い。

 出会って間もない頃のゼファス様に口調が戻ってるし、なんだかおかしい。って言うか、嬉しくなってしまう。

 でも、食べ物を投げるのは駄目。パイ投げとか、そう言った特殊な時以外許されませんよ。


「話は戻るけど、ラトリアの子供の事だって、ラトリアが何とかしなくてはならない。本来なら問答無用で処されてもおかしくないものを、機会を与えられているのだから、ラトリア自身が努力すべきだ」


 その言葉に、胸のあたりにあった不快感が少し消えた。

 そうか。本当なら、そんな余地さえ与えてもらえなかったんだ。

 でも、それはあんまりだからとお義父様はチャンスをラトリア様にあげたんだ。


「良かったです。ただの人でなしかと思っておりました」


「そんな事を言って許されるの、限られた人間だけなんだからね……」


 呆れた顔のゼファス様に、まぁまぁ、とクッキーを差し出す。

 暴言だとは思うけど、実際問題突き放している訳だし。

 あれですよ。獅子の子落としって奴。


「もうこれは飽きた。違うものが良い」


「我が儘ばかりおっしゃって。少ししたらメレンゲクッキーが焼き上がりますから、お待ち下さいませ」


 まったく、我が儘なんだから。

 冷蔵庫を開ける。

 ミーガンとブリタニーが作った冷製スイーツと言う名のプリンがあった。あったよ、ゼファス様、良かったね!

 プリンを二つ取り出してゼファス様の前にスプーンと一緒に置き、私も椅子に腰掛ける。


「プリン?」


「はい。

孤児院にいる子がパティシエになりたいようでしたから、当家のパティシエに教育してもらっているのです」


 プリンをひと口食べる。

 うん、滑らかです。

 彼女達が作ったお菓子が運ばれてくるので食べてるんだけど、日に日に形はキレイになっていくし、味だったり口当たりだったりと、上達が感じられて嬉しい。


 ふぅん、と興味なさそうな反応をしながら、プリンを口にするゼファス様。


「まぁまぁ」


「では合格点ですね」


 ゼファス様はスイーツに関して厳しいから、まぁまぁは褒め言葉なんだよね。


「私、決めました」


 決めましたよ、ミチルは。


「色々と気になる事は多いですが、私に出来る事をしていこうと思うのです」


 ラトリア様は、自分の家族の為に頑張らなくてはならなくて。

 ルシアンはきっと、私の為にラトリア様に協力したり、オーリーやイリダ対策を取るのだろうと思うのですよ。

 私の事に関して言うなら、祖母も、目の前にいるゼファス様だってそう。


「何をする気なの?」


「カフェを各国に作りたいとおっしゃられていたでしょう? それならば私もお手伝い出来ます。

新しいギルドについてもそうです」


 それが私に求められてる事なんだって、ゼファス様も言ってたし、ダヴィドも言ってたし。

 そこでなら頑張っても良いよね? 何処まで力になれるか分からないけど、参加しても良いって事だよね?


「まぁ、良いんじゃない?」


「ゼファス様にもカフェ作りに参加していただきます」


 嫌そうな顔をするけど、この人はいつもこうなので気にシナイ。


「その前に、収穫祭を楽しみましょう」


 かぼちゃ尽くしデスよ!!







 ため息を吐くルシアンに抱き締められること、早五分。

 なしてこんなに苦悩に満ちた顔してんのかな?

 そろそろこのガン見から解放されないかな。ルシアンの目力なら私に穴を開けるのは造作もなさそうです。


 ルシアンの頰を指で突いてみる。

 無反応だなー、なんて思っていたら指を噛まれた!

 ぎゃああああああ! 食べられたあああああ!!


「私の事を放って、ダヴィドやゼファス様とばかり過ごしている」


 いやいや、誤解だ。

 そんな悲しそうな顔して言わんでくれたまえよ。


「そのような事はありません。

二人ともルシアンがいないから会いに来ているだけです」


 私とルシアンの邪魔をしないように、見計らって来てると思うけどな。ゼファス様はちょっと分からないけど。


「本当に?」


「本当に」


 私の手に頰を寄せて、手にキスをする。


 ルシアンのやきもち焼きめ。

 こんにゃろ、嬉しくなっちゃうじゃないか。


「ルシアンにはまた、迷惑をかけてしまいますね……」


 さっきのため息には、私を独占出来ていない以外の何かが含まれているんじゃないかと思ってしまう。


「迷惑に感じた事はありません。ミチルが気に病む必要はない」


 おでこに、まぶたに、頬にと落とされるキスに、緊張がほぐれていくのが分かる。


「私が意図していない事だとしても、私の事でルシアンは対応を余儀なくされるでしょう? それが申し訳ないのです」


 本当に、皆好き勝手言いますよね。

 女神の愛し子って言ったって、そんなホイホイと女神様を呼び出せる筈もないし。いや、そりゃあの時呼んで良いよって言われたけどそんなの社交辞令に決まってますよ。神様も社交辞令を言うのか知らないけど。

 もし呼ぶにしたって、それはどうしようもない時にであって、こんな言い方したら酷いだろうけど、オーリーの人達の為に呼ぶかって言われたら、ごめんなさいって答えるよね。


「先程も言った通り、ミチルは何一つ悪くない。

安易に貴女に頼ろうとする者達が悪いんです」


 それはあっちの人達も分かってるんだろうけど……。


 そもそも、神様を見限るって出来るのかな。

 八百万の神様がいて、信仰先を変えるのとはちょっと違うよね。

 この世界に神様は本当に存在しちゃってる訳ですよ。創造主なんだもの、嘘偽りなく。

 とは言え、二千年も見殺しにされたなら、オーリーの人達だって、宗旨替えしたくなっちゃうのかも知れない。

 気持ちは分かる。

 でもねぇ……何て言うのか、そんな上手くいくのかな。


 ルシアンの首元におでこをつける。

 ちょっと甘えちゃう。甘えモードです。

 大きな手に髪を撫でられる。


「大丈夫です。ミチルが何も気に病まなくて済むように、手配しますから」


 ……暗躍の気配……。


 髪にキスが落ちてきて、ちょっと顔を上げてみる。

 蜂蜜色をした瞳と目が合う。見透かすような瞳。

 でもその中に不安が見えてたまらなくなる。


 いつもいつも、心配かけて、迷惑かけて。

 強くなるって決めたのに、全然強くなれないし、何か行動を起こせば騒動になっちゃうしでもう。


 首におでこをぐりぐり押し付けると、上から小さく笑う声が聞こえた。


「ミチル?」


「甘えているのです」


「沢山甘えて?」


 両腕で抱き締められる。すっぽりと。

 私の身体を包み込んでくれる。

 温かくて、ルシアンの匂いがして。

 この世で一番安心出来る場所。

 大好きな場所。


「カフェ作りと新しいギルド作り、頑張ろうと思うのです」


「えぇ。よろしくお願いします」


 お、さすが発案者。反対はしないんだね、やっぱり。


「ルシアンが、私が外の世界と接点を持つのを許すとは思っていませんでした」


「閉じ込めたいと言う気持ちに変わりはありませんが、そうすると各方面から魔の手が伸びて来ますから、こちらから少し動く事にしたのです。その方が選択権も主導権もこちらが握り易くなりますから」


 ……ルシアンはブレません、清々しい程です、ハイ。

 それにしても魔の手って……。


「お義父様は本当に、シンシア様をゼナオリアの王妃になさるおつもりなのでしょうか」


 女王様気質のシンシアが幽閉生活で人格矯正されていれば良いけど、そうじゃないなら王様達が苦労しそう……。いくら敗戦国だからって、ワガママボディの美女だからって、私の知るシンシアは手強いです。

 ……相変わらず扇子折ってんのかな?


「魔素の為に欲しがっているだけですからね、本当に欲しがっている訳ではないでしょう」


 まぁ、そうなんだけど。それを言わせない為に降嫁させるんだよね?


「……もう、ルシアンの事は諦めてくれたでしょうか?」


 もし、もしもですよ。

 シンシアが王妃になっちゃったら、権力を持っちゃう訳で。それでまだルシアンに執着してたらどうしよう?!

 王妃に対抗するにはどうすれば良いの?

 まさか、女皇?

 ルシアンにちょっかい出されない為に女皇になるとか、動機が不純過ぎて言えない!


「嫉妬してくれているの?」


「……心配しているのです。嫉妬も、すると思います」


 すっかりルシアンのご機嫌が回復していて、それはそれで良いんですけど、これはこれで由々しき事態なのですよ?


「そこは上手くやるつもりでいますし、王妃にするとしたら、属国にするでしょうね」


 属国と聞いて胸がザワザワする。


「これまでイリダに支配されていたんですから、当然拒否反応が出るでしょう。ただ、本当に女神の庇護下に入るつもりなら、受け入れるかも知れません。

どちらにしろ、ミチルの心配するような事にはなりませんから、安心して下さい」


 オーリーも必死だなぁ……。

 うーん……そう言えば話題に全然上がって来ないけど、イリダは?


「イリダにも魔素があるとするなら、イリダは何故、何も言わないのでしょうか? もしや魔素に対抗する術を既に見つけて……」


 顔を上げさせられて、キスをされる。

 おしゃべりは終わりみたい。

 イリダについてはお触り厳禁だった?


「分かってきたらまた、伝えます。

だから今は、私を見て」


 囁かれる言葉に素直に頷いて、キスを受け入れる。


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