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転生を希望します!【番外編】  作者: 黛ちまた
アルト家 家訓!

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え、集合?

 瞬きを二度ほど。

 ……うん、幻じゃないみたい。疲れ目かも知れないけど。


「何をやってるの? さっさと座ったら?」


 声まで聞こえてキタヨー。幻聴でもなさそうダヨー。


 とりあえず、座る。

 皇都の中心地である城にいなくちゃいけない人が目の前にいるし、なんならくつろいじゃってるし、私が作ったお菓子を遠慮なく食べてるし。

 取り分ける気もなく、大元の器を手前に置いてノンストップで食べてる。

 お菓子をつくって欲しいってセラに頼まれたのはこれの為だったか。初めて頼まれた! ミチル頑張る! って作ったんだけど、ゼファス様用だったかー。


「お義父様が皇都に向かわれたと伺っているのですけれど?」


 すれ違いって言うか入れ違いって言うか?


「そうだよ」


 そうだよ? ユーに会いに行ったんじゃないの?


「リオンの顔なんて別に見たいものじゃない」


 またそうやって素直じゃないんだから。ゼファス様みたいな天邪鬼に付き合える貴重な友人じゃないですかー? ただちょっと魔王なだけで。


 私も食べたいなと思って手を伸ばしたら嫌そうにされた。

 えぇーー……。

 そのまま固まっていたら何個かくれたので、口にする。

 お、なかなか美味しく出来てますね。


「かつて親子になった程縁の深いラルナダルト公爵が倒れたと聞いて、皇太子が見舞いにきた。なにもおかしくないよ」


 いや、おかしいよね?


 ラルナダルト領、閉鎖してた筈?

 何ですか、皇太子特権ですか? それともお父様特権?


「そもそも、私は誰かさんの所為で働きすぎなのだから、たまには休息も必要だよ」


「それは、申し訳ございません」


 誰かさんって、私の事だよね?

 そう思って素直に謝ると、何故かゼファス様が照れてる。


「……違うよ」


 え? 違うの? 違うとして、なんで照れるの?


「私の為かと思っておりました」


「自惚れが過ぎるんじゃないの? リュリューシュの為に決まってるでしょ」


 そう言われて、それもそうか、と納得する。

 ちょっとがっかりもする。


「そうですね。些か自惚れておりました」


 ミチル、反省です。

 ゼファス様は確かに私に優しいけど、ゼファス様のしてくれる事が全部私の為な訳ないよね。

 あれ以降皆が私に対して過保護だからって、調子に乗り過ぎました……いやはや、本当、反省です。


「……いや、その」


 顔を上げると、視線を逸らした状態でゼファス様が何やらモゴモゴ言ってる。


「……少しなら、自惚れても良い」


 許可出たよ?!

 ちょっとは良いって! いぇっふー! と、脳内で喜んでいたら釘を刺された。


「少しだから」


「はい、少しですね」


 少しでも嬉しいのでよし!


 ゼファス様は顔を背け、お菓子の入った器を膝の上に置いて完全独占体勢に入りました。作ったの私だし、また作れば良いし。

 そしてアレ、照れ隠しだと思うんだ。


「御用の向きは詳しく存じ上げませんけれど、少しはこちらで休養していけるのですか?」


 冗談抜きでゼファス様は働き過ぎだからね。休めるのなら休んで欲しい。


 少し呆れた顔で私を見たゼファス様。


「皇都にカフェを作ろうとしてるんでしょ?」


 よく知ってるね?

 私が知らないだけで、実はネットとか掲示板とかあるのか? ってそんな訳はなく、ルシアンから報告がいったんだね。


「イケメンで揃えるの?」


 ……まさかこの天使の口から、イケメンなんていう単語が出てくるなんて思いもよりませんでしたヨ……。

 誰だゼファス様にイケメンって単語教えた奴、出て来い。


「いえ」


 ルシアンが嫌がるし、ルシアンが嫌がって、嫌がるからね……ヤメテオキマス。結果として大変な目に遭うのは私ですからね……(遠い目)

 それなのに、ゼファス様が信じられない事を言い出した。


「別に構わないでしょ、イケメンだろうが何だろうがいた所で、カフェはカフェなんだから」


 アレッ?!

 なんかめっちゃ寛容じゃない?

 いや、まぁ、ゼファス様からしたらどうでも良いか、この人誰よりも美しいもんね……。


「皇太子としての職務もあるけど、教皇としての職務もある。前に各国を周ってて思ったんだけど、そういった店、ないんだよね」


 まだこっちの世界では一般的ではないもんね。だからこそ作ったし、成功したんだし。


「だからさ、各地に作ろうと思って」


 え。

 各国に作るの? カフェを?

 さすがにそれはと止めようとした所、ゼファス様が言った。


「職業訓練所、各国に作るんでしょ? 当然だけど周るんだよ?」


 誰が?


 じっと見つめられる。

 ……かかわるとは聞いてるけど、私ですか?


「……私の事をおっしゃられているのですか?」


「他に誰がいるの?」


 だけど、それとカフェとどうつながって……。


「レシピ、カフェに教えておいて」


 ピンときた!

 糖分を常に摂取したい人だった、この人!!


「ところで」


 ところで?


「チキン南蛮が食べたい」







 そして?

 にこにこしながらチキン南蛮を食べているのは、魔王様オトーサマです。

 なんかおかしいな、色々おかしいな?!


 きっと怪訝な顔になってるだろう私を無視して、笑顔のお義父様に、黙々とリクエストしたチキン南蛮を食べるゼファス様。

 初めて食べるチキン南蛮に喜ぶ王太子家族モニカファミリー


「ミチル?」


 ルシアンに名を呼ばれて顔を向けると、カットされたチキン南蛮を口に入れられた。

 美味だけどさ、いつもの事だけどさ、止めたまえよ。

 モニカが喜ぶだけだから! そしてその後同じ事を王太子にやられてモニカがあわあわするだけだからね。


 こっそりとルシアンに尋ねる。


「ルシアン、訳が分かりません。私にも教えて下さい。この状況は一体どう言う事なのですか?」


 オールスターとは言わんまでも、なしてここにメンバー揃ってるのかな?

 入れ違いになったんじゃなかったの?


 私の言葉にルシアンは柔らかく目を細めると、ちら、とお義父様を見る。


「それは、魔王に尋ねた方が早いと思いますよ」


 息子にすら魔王呼びされ始めるとか。

 お義父様を見る。ふふふ、と笑うお義父様は怪しさが炸裂してマス。


「息子家族と王太子家族に蜜月を提供したのに、随分な言われようだね」


 ……いやいや。

 いやいやいやいや。


「ねぇ、ゼファス?」


 チキン南蛮を口に放り込んだゼファス様は、お義父様を冷めた目で見て、またチキン南蛮を食べ始める。

 ほら、胡散臭いって、オトモダチにも思われちゃってるじゃないですか……。


 素っ気ないゼファス様に肩を竦ませると、お義父様はかぼちゃのサラダを口にする。


「教えてあげたい気持ちは山程あるし、愛する義娘に秘密にするのも大変心苦しいね」


 胡散臭さが天まで届いてますね。よくここまでと思うけど、私の口にチキン南蛮を運んでくるルシアンの、まごう事なき父親だな、と実感する。この、マイペースっぷり。


「実は私は秘密主義者でね」


 えぇ、知ってマス。

 つまり、教えないって事ですか、そうですか。

 良いさ良いさ、後でルシアンに教えてもらうもんね!


「リュリューシュとロシュフォールも随分大きくなったね」


 話を変えてきたな?


「子供は二人とも男であったからか、リュリューシュが可愛くて仕方がないよ。シーニャに持たされた双子の衣装もとても良く似合っていたし」


 孫溺愛のお祖父ちゃんの顔になってるお義父様を、ジークとモニカが怯えた目で見てる。

 ……一体、どんな認識されてるんだろうか、お義父様……。


「ロシュフォールもすっかりルシアンそっくりに育って、あの意固地さが可愛いね」


 わぁ……。

 ルシアンの顔色を窺うと、微笑んでるけど、目が笑ってない……。


「父親じゃなかったら関わりたくない存在です」


 あぁ、うん。ワカリマス。


「あの素っ気なさがまた、良いんだよ、ゼファス」


「気持ち悪い」


 皆から注がれる冷ややかと言うか、何とも言えない視線などまったく気にしていないお義父様は、楽しそうに笑った。







 寝室にて!

 今後の展開を教えてもらうべく、ベッドに正座です。

 そんな私を見て笑うルシアンがイケメンです、えぇ。


「ミチルはカーライルがどうなるのか知りたいんですか?」


 頷く。


「それもありますけれど、ゼファス様も出て来ましたし、お義父様もいらっしゃいますし……今回の事が何か大きな事の始まりのような気がしてならないのです」


 ルシアンの手が伸びてきて、私の頰を撫でる。


「ミチルもアルトの人間らしくなってきましたね」


 え? そう?

 ちなみにソレ、褒め言葉ですよね?


「カフェを各国に建てるなどとゼファス様はおっしゃってますが、真意はなんですか?」


 ルシアンの目が細められる。


「本当に、以前よりも察しが良くなりましたね。夫婦の事もそれぐらいだと嬉しいのに」


 ぅぐっ。

 それは申し訳ない。いつもフォローかたじけない。


「カフェを作るならと、聖下に追加で奏上しました」


 ふむふむ。

 だから来たのかな、ゼファス様。


「父が情報収集の為に各地にサーシス配下の者を派遣しているのですが、その拠点に使う予定でいます。

人の集まる場所は情報の集まる場所ですから」


 確かに、そうですな。

 カフェなら堂々と情報集められるもんね。名案ですね。


「オットー家にも拠点としてご利用いただけるよう手配する代わりに、情報交換もする予定でいます」


「それはギルドでは駄目なのですか?」


「その地の住人の信用を得なければギルドは立ち行きません。立ち上げ当初こそ人を派遣しますが、順次その地の人間をギルドに採用していきます」


 聞けば聞くほどその通りだなと。

 知らない人達がどかどかっと来て、ギルドの言う事聞いて下さいって言われたら反発したくなるかも。

 ……まぁ、そんな事言ってもしっかり情報は集めるって知ってますけどね?


 それにしても、ルシアンは本格的にアルト家を継ぐ準備に入ったんだね。

 頰に触れるルシアンの手に自分の手を重ねて、ルシアンの手のひらに頰を寄せる。


「私も、何かお手伝い出来れば良いのですけれど……」


 そんなつもりなくても、私が思い付きで動くとトラブルが起きる気がしてネ……。

 少しでもルシアンやゼファス様の役に立ちたいと思うのに、何をして良いのか分からない。

 二人ともきっと、何もしないで良いって言うから。


 額に優しくキスをされる。


「今回の件は、私と兄に課された試験だと思っています」


「試験、ですか?」


 ルシアンが頷く。


 ラトリア様にも?


「父は本気で表舞台から降りるつもりでいます。ですが、それには私と兄が父の期待値を超えなければなりません」


 ……アルトぱねぇっス。


「アルトは力があります。だからこそ力無き者が継ぐ訳にはいかない」


 御三家に認められるだけじゃあかんのですね……。

 なんて家なんだ。

 家訓は無茶苦茶だし、求められる能力は半端じゃないし。

 しかも今の当主、アレですよ?

 自分基準にしないよね? 超えられる人いないよ?


 心の不安がそのまま顔に出てしまったのだろうと思う。

 私の顔を見てルシアンは笑う。


「大丈夫。私よりも兄が大変です、今回は。

父無き後のカーライルを支えられるかどうかを試されるんですから」


 アルト家男子だから優秀だって知ってるけど、ラトリア様って温和な感じだし、そのへんどうなんだろうか?


「……お義兄様、大丈夫でしょうか?

ルシアンと違って腹黒くないですものね?」


「ミチル?」


 え? だってユー、腹黒いでないの?


「兄を助けようかと思いましたが、今の言葉に傷付いたので、助けない事にします」


「!!」


 お待ちを!


「る、ルシアン、ご機嫌を直して下さい! 私は事実を……」


 にっこりとルシアンが微笑む。


「事実?」


「いえ、あの」


「なぁに?」


 腹黒と言われた事が気に入らないんじゃなくて、私がラトリア様を気に掛けたから許せない気がスル。

 とりあえず笑って誤魔化してミル。

 ……あ、目を細められた!


 ルシアンの顔を覗き込むも、顔を逸らされる。

 ぬ……っ?! これは初パターン!


「ルシアン?」


 反対に背けた顔を覗き込むも、また背けられる。

 怒ってる……?!

 ルシアン様を怒らせてしまった!!


「ルシアン、ごめんなさい。本当の事だからと素直に言ってしまって」


 ぷっ、とルシアンが吹き出す。


「貴女は本当に……」


 ちょっと素直に言い過ぎだとは思うけど、嘘吐いてもユー、すぐ見抜くじゃないですか?

 それと、私は本当にの後に続く言葉は何ですか?!


 ルシアンの唇が動く。でも、声は出ない。

 私、読唇術出来ないですよ!?


「分かった?」


「え、分かりません。もう一度、ルシアン、もう一度お願いします」


 ルシアンにぐっと近付いて、唇をガン見する。

 形の良い唇が動く。


 …………分からん!

 さっぱり分からん!

 皆目分からん!!


 もう一度、とお願いしようと顔を上げた瞬間、キスをされた。


「正解は、キスして、です」


 ルシアンの手が私の髪を梳く。

 えー? 本当かな。それなら分かりそうなんだけどな……。


 とりあえず、ご機嫌を回復してもらう為に、私からキスをする。え? 私がしたいからじゃないよ? ……本当デスヨ?

 唇が離れて、ルシアンがまた、声を出さずに唇を動かす。それは、何度も見ていた動きで、私にも分かった。

 ルシアンに抱きついて首元に額をこすりつける。


「……好きです、ルシアン」


 耳にルシアンの唇が触れる。


 嬉しくて、くすぐったくて、たまらない気持ちになる。


「こうして貴女の側にいられるだけで、私は幸せです」


 また、そんな乙女みたいな事言ってからに。

 でも、同感です。


「私も」


 こうしてずっとずっと、一緒にいたい。

 一緒にはいられるだろうけど、また、色々ありそうデス。

 ……とりあえず今は考えても仕方ない。

 お義父様は永遠にカーライルにいる訳じゃないし、ルシアンだってラルナダルト領にアルト一門連れて来ているのだし。

 ラトリア様も、ルシアンも、ここを超えなくてはいけないのは事実なんだから。


「私に出来る事があれば、何でも言って下さいね」


「えぇ、約束します」


 明日、ラトリア様の事、祈ろう、うん。


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