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転生を希望します!【番外編】  作者: 黛ちまた
アルト家 家訓!

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色々と始まっていたらしい

 ルシアンがラルナダルト公爵の名でモニカを招待する手紙を送ったらしい。へー……って、ラルナダルト公爵って私だった!

 いや、好きに使ってもらって良いんですけど。なんだったらそのままルシアンがラルナダルト公爵になっていただいてもよろしくってよ、とか思っちゃうけど、駄目駄目!

 名前は好きに使ってもらって全然構わないけど、ルシアンにばっかり負担をかけるなんてとんでもない!


 お義父様の電撃引退から二週間。

 ルシアンてば余裕な表情でコーヒーなんぞ飲んじゃってるけど。

 まぁ、今後の展望と言うか展開と言うか、予告?は既に教えてもらっている訳ですけれども。ユー、こんなに寛いでて良いの?


 考えている事を読み取れないかと、ルシアンの顔をじっと見る。

 ルシアンは目を細めて笑うと、「そんなに見つめられると照れます」と言った。

 ぜんっぜん照れてないよね? ヨユーの笑顔浮かべてたよね?


「王太子家族を迎える為の準備は既に始めていますから、私達は返事が来るのを待ちましょう」


「モニカ達は皇都に来るのですか?」


 いいえ、と答えてルシアンは首を横に振った。


「彼らはラルナダルト領において行方が知れなくなるので、招待は至星宮です」


 行方が知れてる行方不明デスネ。

 皇都のこの屋敷には来た事もあるし、至星宮には二人とも来た事ないし、部屋数も多いし、大浴場はとっても気持ち良いし、サウナもあるから、何人来てもダイジョーブ。


 冗談はさておいて、ミチルは思う訳です。

 平穏が遠いナー……。







 今日も今日とて性別ガン無視美人のセラさんが、正面に座ってお茶を飲んでます。

 たまに思い出すんだよね。そういえばセラって、執事だった、って。めっちゃ普通に座ってお茶飲んでほっこりしちゃってるけど。

 執事の本分とは?と、ツッコミが入りそうなぐらい自然である。実際銀さんはセラのそう言った態度を快く思っていなかったようだった。

 自分だけ座って飲食をして、執事や侍女が側に侍ると言う状況に、慣れはしたもののモヤモヤしてしまう。セラはそんな私の思いが分かっていて、一緒にお茶をしてくれているから、精神的に助かる。なんて言うの、孤独なんだよね。遠巻きにされているみたいで。実際そんな事はないのは分かるんだけど、なんかあっちの世界でのイジメを思い出すって言うか。ぼっち感が拭いきれない……。

 私を見ていて銀さんは、その考えを改めてくれた。それからは一緒にお茶をしてくれるようになった。

 主従として正しい形かどうかはさておいて、だからと言ってセラが私を蔑ろにしているとは思わない。むしろ、慮った上でのこの態度なのだ。


「モニカちゃん達の事が心配なんでしょ、ミチルちゃん」


 頷く。


「えぇ、お義父様やお義兄様、ルシアンが動いているとは言え、心配はなくならないの」


「それはそうよねぇ。まさか配下の者に命を狙われるなんて、このご時世では滅多に聞かないものね」


 そもそも、お義父様が関わっているからこその安心感と言うか、信頼がある訳ですけれども、逆に、それだけでは済むまい、みたいなイヤーな予感もあったりなかったり。っていうか既にルシアンから予告されちゃってるんだけどさ……。


 カーライルは辺境国という立場から、大陸の中継地点と言う重要な立ち位置を得ちゃった、って言うのは語弊がアリマスネ。何故なら全部魔王の企て通りだからですよ……。

 ギルドはマグダレナ大陸のみならず、ゼナオリア、アル・ショテル双方の国にも拠点を置く事になったし、もしかして魔王支部……。

 ……はっ! つまり、世界征服を本気で?!


「四天王は誰かしら?」


「なんの話をしてるのよ?」


 ルシアンと、ベネフィスと、アビス父と、セラのお父さん…? ルシアンじゃなくラトリア様…?

 え……これだと誰が四天王の中で奴は最弱、とか言われるのかな?

 ルシアンが魔王だった場合なら、セラ、ロイエ、アビス、ダヴィドが四天王で、最弱なのはダヴィドだと思うんだけど(偏見)。


「ルシアン配下の四天王なら、ダヴィドが最弱だと思うの。印象だけれど」


「だからなによ、その四天王って?」


 四天王の説明をしたらデコピンを食らいました……。

 イタイ。


「冗談言ってる余裕があるのは良い事だけれど、ミチルちゃんもこれから忙しくなるのよ?」


「世界征服の手先としてですか?」


 セラがまたデコピンの構えをしたのでおでこを隠す。

 駄目、デコピン。


「いい加減、世界征服から頭を離してちょうだい。ミチルちゃんが望んだんでしょう?」


 世界征服は望んでいませんよ?

 セラがまたデコピンの構えをした。慌てておでこを防御。

 何で! 言ってないのに、まだ!


「話が進まないじゃないの……」


 めっちゃ深いため息を吐かれてしまいました。


「スミマセン、チョットシタ出来心デス……」


「カフェを作るんでしょう?」


 そうです!


「店作りに関してはカーライルのカフェを参考にするとしても、あっちとは違って、イケメンカフェじゃないんでしょ?」


 孤児院の子達を、と思うとカーライルと同じようには出来ないって言うか、ルシアンが怖いと申しますか。

 あの子達、大きくなった、とは言ってもまだまだ小さいんだよね。店頭に立たせたりなんかしたら、虐待だ、とか言われて私が逮捕されて皇城の牢屋に入れられるに違いないですよ……。


「子供達にどうやって関わらせていくのか、悩ましいところね」


 そもそもですよ。あの子達はパティシエになりたいみたいなんですよネー。とは言え、まだ幼いから、パティシエと同じ事をやるのは難しそう。出来そうなのは給仕の仕事かな、と思ったんだけど、それも難しそうなんだよね。

 働くのはまだ先でも良いんじゃないかって、あっちの記憶がある私としては思ってしまうんだけど、ここでは子供であっても十分な労働力に見做されてしまう。

 それは偏に生活にゆとりがないからだよね。このマグダレナ大陸において、貴族は魔力の関係で絶対的な力を持ってるし。かと言って平民にも力をとやれば、新しい問題が発生する可能性も高くて。

 悩ましい……。


 思わずため息を吐いた私を見て、セラがちょっと驚いた顔を見せた。


「ミチルちゃんてば、色気のあるため息を吐くようになったわねぇ」


「!」


 色気皆無。マイナス方向まっしぐらな私にも遂に色気が?!


「そこでその表情をしちゃうから色気が霧散したじゃないの」


 あぁーー……(涙)。

 申し訳ない……。ちょっと嬉しくなっちゃって……。


「ワタシの前じゃなく、ルシアン様の前で出せれば良いと思うわよ」


 ルシアンの前で色気? あの色気ダダ漏れイケメンの前で色気を醸せたとしても、色気負けしそう。圧倒的敗北。戦う前から敗北。無血開城必須。って言うか色気に気付いてすらもらえなさそうと申しますか。

 よしんば出せたとして、それはそれで何というか大変な事になりそうって言うか……。


「色気担当はルシアンにお任せしておくわ……」


「色気担当ってなによ……」







「四天王最弱のダヴィドです」


 何故知ってる?!


 驚きを必死に隠していると、ダヴィドは笑いながら精進します、と言った。

 セラだな?! と思った私はセラを見る。にっこり微笑まれた。やはりセラの仕業でした。


「セラから孤児院の運営と、パティシエを目指す子供達についての話を聞きました」


 三人寄れば文殊の知恵じゃないけど、人が変われば別の視点が生まれるかも知れないよね。うんうん、ありがたいです。


「カーライルの王太子ご一家が、事が済むまで過ごされるのは、至星宮になりますよね」


「そうね」


 なんちゃって行方不明だからネ。


「モニカ妃はカフェの企画立案から参加なされていた訳ですし、店員の給仕についても厳しく指導なさったと聞いています」


 あぁ、確かにそんな事あったね。あまりに厳しくイケメン店員達を指導するもんだから、私は何も言えなかったんだよね。凄かったわぁ……。


「それに、カフェには定期的にお忍びで王太子殿下と足を運んでらしたようですから、多種多様な菓子も召し上がってらっしゃるかと」


「そうね」と答えて頷く。


 ダヴィドの話の流れから、子供達とカフェとモニカがイマイチ繋がらない。


「最初から店に従事させるのではなく、至星宮において当家のパティシエに学んでいくと言うのはどうです?」


 おぉ! なかなか良い案なのでは?

 至星宮でなら、ミスをしてもまぁまぁ許されるだろうし、最初から大量のお菓子作りなんて無理なんだし。

 給仕をする事までは考えていないけど、経験として知っておいても良いかも……?

 何というか、私としては夢は叶えてあげたい。だからと言って無理はさせたくない。

 色んな経験を積ませるのは、大事だよね!

 そうだ、他の子達も……!


「ミチル様の事ですから、孤児院の他の子供達も、とお考えなのでしょうが……」


 ア、ハイ。

 ダヴィドにまで考えを読まれている……!

 ピンチなんでないの、ミチルってば!


「それは今回だけです」


 なして?

 思わず首を傾げてしまう。


「今回のカフェについては、間に合わないのでラルナダルト家にて対応しますが、次からは然るべき場所で経験する事になります」


 間に合わない?

 然るべき?

 頭の上に?マークが三つぐらい並んでおりますよ。


「アレクサンドリアで作ったような施設を用意していると言う事?」


 そうです、と答えてダヴィドは頷いた。


「孤児院で過ごした者でなくとも入れる施設です。無論、有料です。孤児院の者達も後々その費用を返済する契約書にサインする事になります」


 職業訓練所、作るのか、皇都に。

 それにしても、いつの間に?


「先日、ルシアン様が皇太子殿下に草案を提出なさいまして、殿下の裁量権において決裁が下りています」


 ほほぅ。


「ほら、ビルボワン伯爵令嬢関連の時にです」


 私がきょにゅーだのなんだのと騒いでる間に、そんな建設的な事をしていたんだ、あの二人……うっうっ、もう本当に、一回穴に入りたい……。

 己の情けなさに打ちひしがれていると、ダヴィドがまぁまぁ、と軽く慰めてきた。


「ミチル様の事があったから進んだ話ですから、間接的にミチル様も関与されているって事で」


 そのフォロー、逆に抉ってくるね?!


「職業訓練所には皇都での一般的な職種を用意しますが、それ以外の部分においてミチル様のご協力をいただきたいのです」


「私の協力……?」


 私如きが手伝える事なんて、ありますかね?


「はい、今回のカーライルでの件が片付きましたら、ミチル様は先程の計画へのご参加が決定しております」


 ……え? 私も参加するの? って言うか、参加して良いの? ルシアン怒らない?


「……初めて耳にしたのだけれど……?」


「それはそうです。つい二日前に決定した事ですので」


 それ大丈夫ですかね?! ルシアン様がお怒りになりませんかね?!


「当然、発案者のルシアン様もご参加なさいます」


 デスヨネ。愚問でした。


「今回の計画は皇国全域に波及させる予定なので、公家の皆様もご参加される、大規模な計画となります」


 ……え、なんかあっちこっち色んな動きがあって、頭がこんがらがってきたぞ。

 でも、職業訓練所は各地にあっても良いと思う。出来る事が増えて、お給料が増えるのは良い事だ。


「微力だけれど、精一杯努めるわね」


「いや、むしろミチル様が要じゃないですかね」


 えっ! なして?


「皇国で一般的な職種であれば、別にそんな施設を作らなくても良い訳です。徒弟制度がありますから」


 確かに?

 じゃあ、なんでそこから作るんだろう?


「現在の徒弟制度は、大分前から崩壊していると言えば崩壊してるんですよ。師匠が弟子を薄給で酷使したり、才能を恐れて潰してしまうとか」


 ……いつの世も、一番怖いのは人なんだネ……。


「そう言った関係に陥る前に弟子を救い出し、その受け皿とする役割も持っています。最初から入ってもらっても良いですし、途中から入ってもらっても良い。でも、これだけ徒弟制度が普及した世界で、職業訓練所を作成した所で、最初から機能しません。アレクサンドリア領でもそこそこの結果だったかと」


 そうなんだよね。

 アレクサンドリア領でも職業訓練所を作成して、上手くいった人もいたにはいた。更にステップアップして王都に移住した人もいるって報告書には書いてあった。

 でも、それは職業訓練所にいた二〜三割の人で、やっぱり上手くいかない人達も多かった。私も完璧にはいかないと割り切っていたし、始めたばかりだったから御の字かなーなんて思ってた。

 アレクサンドリア領ではっきりと成功したと言えるのは、たまたま教えた、休耕とか、二毛作とか、なんかその辺りの知識が、本職の農家達に受け入れられたって事と、教会での教えによる識字率の向上だった。


「新しい職ばかりを教える場所にしてしまうと、利権の問題が絡んできます」


 うわぁ……生々しい話きたわぁ。


「そう言った無用な争いを防ぐ為に、まず、公家が入ろう、と言った意味もあります」


 なるほどねぇ。

 あまり新しいものばかりに力を注ぐと、従来の職種の人達が軽んじられていると憤っちゃうかも知れないし、かと言って現在の徒弟制度を利用した悪どい人なんかもいる訳で。軽んじてはいないけど、好き勝手にはもうさせない、と言う意思表示は大事だよねー。

 それとは別に、新しい職業がこの世界でも有用なのか、有用であればこそ、制御しないといけない訳で、公家が関与する必要があると。


「そうなのね……説明ありがとう、ダヴィド。四天王の中で最弱と言う点、訂正するわ」


「そこですか?!」


 まだまだ未知数だけど、私に出来る事があるなら、頑張るぞ! 頑張って、ルシアンやゼファス様、祖母の役に少しでも立ちたい!


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