リュドミラ書庫〈竜のツガイ〉
リュドミラが置いていった本を、勿体ないので読む事にした。
軟禁状態で部屋から出してもらえないので、お願いしてルシアンに持って来てもらった。それぐらい部屋から出てもいいんじゃないの?って思うんだけど、駄目なんだって。
今は私が貴女を独占したい。
イケメンにこんな事言われたら好きなだけ軟禁されるよね?されるでしょ?……え?されない?
コホン。
持って来てもらった本を見て後悔した。
なんだこのラインナップ……。
真夜中のあなた
私の秘密を暴くのは誰?
夢見る姫と氷の騎士〜あなたの心を溶かしたい〜
越えられない壁〜それでもあなたを愛したい〜
なんだなんだ、何なんだ?!
このハーレクインみたいなタイトルのオンパレードは?!
「……わざとこの手の本を持って来たのではないですよね?」
確認する為にルシアンに尋ねる。
「他はもうちょっと激しめの表題だったんです。ミチルには刺激が強いかと思い、これでも比較的軽めに思える表題の物を選びました。
ちなみに、他には、"溢れ出る蜜が止められない"ですとか、"あなたと私の愛の深い深いレッスン"といった物が並んでましたよ」
んなーーーーーーーーっ!!!???
激しくあかんやーーーーーーつ!!!
しかもそんなタイトルをイケボで言うなあああああ!!
首を横に振って拒絶の意思を示す。
聞いてるこっちが恥ずか死ぬわ!!
なんなのーっ?!
何処でそんなの買ってきてたの、リュドミラ?!
あの伯爵令嬢どうなってんの?!
ふふ、とルシアンは笑うとテーブルの上に本を置いた。
「読みますか?」
マジで薦めてんの?本気で?
「ヤメテオキマス」
これ以上、色んな扉を開く訳にはいかん。
いかんのだ……!
ただでさえ、前世で十分過ぎるくらいに耳年増になってるんだから!!
仕方ないので、エマにオススメです、と貸されてから読んでいなかった恋愛小説を読む事にした。
……皆、恋愛小説好きなんだね…。私は出来たらミステリーがイイナーなんて……。
ルシアンはと言うと、リュドミラの本棚から持って来た、"越えられない壁〜それでもあなたを愛したい〜"という本を手にした。
えっ?!読むの?!
ハーレクインみたいなのをこのイケメン読む気なの?!
本気?!
そしてなんか変な方向に参考にしたりしないよね?!
……本を読むルシアンを見る。
うむ。イケメンだ。
そして読むスピード早いな。私の方はなかなか進まないと言うのに。
面白いのかな…?
「…ルシアン?」
「なんですか?」
「面白いですか?」
「興味深い記述がありますね」
興味深い記述?!なにそれ??
ルシアンの横に座り、開かれているページを覗き込む。
どれどれ?
本を閉じるルシアン。
む?
ルシアンを見ると、ちょっと困った顔をしている。
「ちょっと際どい所なので、ミチルは見ない方が良いかな」
……そんな際どい本を読んで、さっき興味深いとかおっしゃってませんでした…?
私、ノーマルですからね?アブノーマルとか絶対嫌ですからね?!
「この本は、竜人と呼ばれる種族と人間の、種を超えた恋物語のようです」
ほうほう。
よくある奴ですね?
「番という、運命の相手が本能的に分かる能力が竜人にはあると書いてあります」
あぁ、うん。竜人が出てくる恋愛では、よく目にする設定かも。
「もし、何処かの世界に竜人という種族が存在するなら、ミチルと生まれかわりたいです」
なんで?
番に憧れてんの?
「ルシアンは、私と番になりたいと言う事ですか?」
「それは勿論そうですが、私が興味を惹かれたのは、竜人の寿命と、番を閉じ込めるという執着心が当然のものとして扱われている事です」
ふふ、とルシアンは微笑む。
「………………」
アァ、そっち……。
「長い寿命があり、ミチルを閉じ込めても許されるだなんて、素晴らしいです」
ヤンデレーーーー!!
「いつか、生まれ変わりましょうね?」
抱き締められ、頰にキスされる。
監禁しますからね、と言われてさすがに頷けないよ?!
「何百年もミチルを独占出来るなんて、想像するだけで胸が踊ります。是非、来世は竜人になりたい」
どうか、竜人が、番を閉じ込めるのが当たり前ではありませんように…なにとぞ…なにとぞ…!
昔流行った脳内メーカーをルシアンにやらせたらどうなるかな、と妄想してみました。
99%:ミチル
01%:ミチル
ミチル「?!(何故分かれてる?!)」