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その後の二人 その一

後日談になります。

ルシアンの膝の上に座っております。

定位置です。前からですが、別の場所に座っても必ず膝の上に座らされるので、諦めました、えぇ。

人間、諦めが肝心だよ……。


「ミチルを讃える像を作ろうと言う話が上がっています」


「?!」


良かった、何も口にしてなくて!

間違いなく噴いてた!


ナニソレ?!

女神様にお願いして世界を救ったからとか、そう言う事?!

二度と屋敷から出られなくなるから止めて!

元はルシアン助けたさに祈って、ついでと言ってはなんですが、皆の事も願ったぐらいだから褒められたり感謝されると、HPがゴリゴリ削られてイキマス。


このへんについてルシアンにだけ話したら、感極まり過ぎたルシアンからのゴチョーアイが凄い事になっちゃったのは秘密だ。自主規制って奴ですよ。放送禁止です。

…………思い出したら失踪したくなって来た!!


「後はミチルが目覚めたので、凱旋パレードとか」


凱旋?!

意味不明ですけど!


「どちらもご遠慮致しますっ」


どうしてそうなった!


怯える私を見て、ルシアンは笑う。


「そう答えるだろうと思って、お断りしておきました」


ほっ。

って言うか、それなら先にそう言ってくれれば良いのに。


「断るだろうとは思いましたが、念の為に」


なるほど?


安堵の息を吐いてルシアンの胸に顔を埋める。

ルシアンの指が髪を撫でる。気持ち良いのでもっと撫でていただきたい。


「ただ、どうしても断れないものがあります」


え。

どうしても断れないもの?


顔を上げてルシアンを見る。


「祝賀パーティです」




目覚めて、ルシアンと会った後、即監禁かと思ったら、屋敷の皆と話が出来て。

皆またよろしくねー、なんて和気藹々と話したりしていたらば、義理は果たしましたとルシアンが言って、軟禁されました。例外はなかった。

いつもなら有無を言わせず監禁だろうに、(ってさっきから監禁だの軟禁だの、我ながら大概だな……)何故皆に会わせてくれたんだろう? と疑問に思ってルシアンに聞いてみたんですね。


"即監禁したら、ミチル会いたさに父達のような面倒な存在を呼ぶだろう事が想定されるので"


……面倒て。実の父を捕まえてその言い方。

お義父様はルシアンの事愛してるのにね。お義父様がルシアンを逃す時の話とか聞いたらば、なかなか感動的だったんですよ。

だから、そんな事言っても仲良く……


"兄まで連れて来られたら鬱陶しい事この上ない"


ルシアンは三年経っても容赦なかった、うん。


…………コホン。そんな訳で? 皆と挨拶をした後、軟禁されてます。

こんなん逆にバレるんじゃないの? って思ったら、私が眠ってからルシアンは至星宮にずっといて、カーライルに併呑された旧アドルガッサー領域を管理していたんだって。だから隔絶されていても問題ないらしいよ。

…………いやいや。


軟禁生活も既に三か月が経過してます。

ご飯は料理長が作ってくれたものを食べさせてもらえてるし、お風呂の時はエマとクロエとも会えてるので、監禁と言うよりは軟禁ですね。

どうしてもルシアンが対応しないといけない用事があったりすると、部屋にセラや銀さん、アウローラが来てお茶会になる。


セラから色々聞いたんですよ。

自分が眠ってる間のアレコレ。

なんだか随分と寿が続いたみたいで。前世だったらご祝儀ビンボーになるレベルのお祝い続き。身包み剥がされるレベルの寿ラッシュ。

来てたみたい、春。


基本的にお祝い事はおめでとうと言う事をモットーとしている私ですが(内心泣いても笑顔でお祝いは言うのよ! 女優よ、女優になるのよ! 全ては来世に向けて徳を積む為に!)、オリヴィエとセラの結婚と出産は素直に嬉しい。

聞いた時は興奮したー。

だってホラ、あの類稀なる美貌を受け継がない事は人類への冒涜だと思ってたからね!

男の子なんだってー。今度会わせてもらう約束してるんだー。パパ似かなー、ママ似かなー。ソワソワ。


フィオニアが目覚めて、今はアレクシア様とイリダの大陸にいるんだって。

監視役らしい。

しかも子供いるらしくって。男の子。さすがフィオニア、手が早……モゴモゴ。

マグダレナとも定期船で交易が始まったのもあって、セラの元に頻繁に手紙が来てて、見るたびに親バカね、って言ってる。写真で見たら結構わんぱくそうな顔をしてた。


そうそう! カメラ!

イリダではこれまで軍事目的で使われていた物を平和利用しよう、と言う動きが戦争直後に起こったんだって。良い事ですね。

それでカメラが作られたのですよ。白黒だけど。

欲しい欲しいと騒ぎまくって、ルシアンに買ってもらったのです。イケメンは白黒でもイケメンだったよ!

コレは! と思うタイミングで撮りまくっていたら、取り上げられてしまった……。

だってルシアンの姿、写真に撮りたい。持ち歩きたい。収集コレクションしたい。それが人情ってもんですYO!

写真を撮る事に夢中になって、本体に構わなかったのが良くなかった、ってセラに言われた。

うぅ……。確かにそう言う人デシタ……。


……で、何処からか私が目覚めた事が知られたようで、冒頭の像だの凱旋だのが話に上がった模様。

それはルシアンが断ってくれたけど、皆と会わない訳にもいかない。って言うか会いたい。無事な姿見たい。

バラバラに会うと一緒にいる時間が減るからと、パーティなんだそうです。

名目は、即位三周年。

そう! 祖母が正式に女皇に即位して、皇太子にゼファス様がなったと聞いてビックリしたやらホッとしたやら。

そんな訳で急遽ドレスを作る為に採寸してもらったりした訳ですね。


「カーライルにはいつ戻るのですか?」


分かっていた事なんだけど、今は無きアドルガッサー王家はあの通り残念な人達だった訳で。

併呑したカーライルの経済に悪影響が出る程では無いけど、良好とも言い難い。そんな感じだったらしい。

ここでもルシアンは働きアリです。三年で好転して来たとの事で、領民には歓迎されてるらしい。

とは言えですよ。もー、ルシアンばっかり大変!

うちのルシアンをこき使うの禁止です!


「アドルガッサー領の状況が安定するまでこちらにいようと思っていたのですが、皇都とカーライルの中間地点に位置するこの場所でアルト家の基盤を樹立した方が良いのではないかとの声が出ています」


そうなの?


「アルトはラルナダルトにもなりました。カーライル王家の下に入るにしても、勢力がカーライル王家の上をいくことも、問題視されています」


あぁ、なるほど。

レーゲンハイム一門はかなり大きいからね。

しかも私は現女皇の孫で、私とルシアンの子は公家や皇室としか婚姻しない。例外がレーゲンハイム家。

かつてのアドルガッサーのような、捻れた状況になるって事だよね。

今は良いけど、長い目で見た時によろしくないとの判断なんだろうな、きっと。

独立するのが順当なのかぁ……。


……はっ?! 独立?!


「それって、ルシアンが王様になるのですか?」


思わずルシアンの服を掴んでしまった。それをルシアンは嬉しそうに見ると、手を解いて恋人繋ぎしてくる。

もー、甘いのは嬉しいけど、大事な話をしてるんですよ?

とか言いつつ自分も握り返しちゃうけど。


ルシアンが王様になるって事は、私が王妃様になるって事ですか? せっかく女皇は免れたのに?

王冠被ってるルシアンは、それはそれでカッコ良さそう……ってそう言う問題じゃなくてだな。


あああ、もう脳内が脱線しまくりだよ!


「いえ、厳密に言うと、ディンブーラ皇国に入ります。ラルナダルト領という事ですね。決定すれば飛び地にならないように途中の領地を買い上げる事になるでしょう」


ラルナダルト家は公家なのは変わらないし、それが一番穏便かも……。

はぁ……びっくりした。心臓に悪いデスよ……。


「ミチルは王妃にも女皇にも興味無いでしょう?」


「はい」


ミリもありませんです、はい。


「私としても、あまり大仰な公式の立場は邪魔になりますから、このあたりが落とし所だと思っています」


ルシアンが野心家じゃなくて良かった。


「ありがとうございます、ルシアン。私が王妃なんて、とんでもないですわ」


「ミチルが思う程では無いと思うけれど」


いやいやいやいや!

何言っちゃってるんですか!

王妃たるもの、王を支えて外交しちゃったり、国内貴族とよしみを結んだりして、地盤強化をしたりとか、それはもう暗躍するんですよ?! 裏方だ、裏方。


「女神の愛し子に敵対する愚か者はいませんよ」


ソレヨ!

それも私としたら非常に小っ恥ずかしいノヨ!


女神に愛されてますが、何か? とか言える訳ない!

いや、言わないな?! 何処で言うんだソレ?!

言わなきゃいいんだ、動揺してしまったヨ。


「そうなのかも知れませんが……やっぱり無理です」


「もし、私が強引に王にされたら?」


「え? その時は王妃になります」


当然です。


ルシアンが笑う。


「なりたくないのに、私が王になったら王妃になるの?」


「そうですよ?」


恋人繋ぎした手にルシアンがキスを落とす。


「そんな気はありませんけれど、例えとして、私が王妃になりたくないからルシアンと離縁すると言ったら許さないでしょう?」


繋いだ手に力が入る。

ちょっ、例えだからね?!


「勿論です。そんな事になったら、本気で監禁します」


デスヨネー? 知ってたよー。

さすが女神公認ヤンデレ。


「ですから、そうなった時には諦めて王妃になります」


苦笑するルシアン。

うぉ、苦笑すらイケメン。

カメラ、カメラを……!


「カメラは禁止」


バレた。


ルシアンの唇が鼻に触れる。


「記録も大事ですけど、今を見て、ミチル」


はい、スミマセン。


まぶたにキスが落ちてくる。

蜂蜜色の瞳は、いつ見てもキレイだ。


「お義父様はその辺りをどうお考えなのですか?」


アルト家としてずっとやってきた訳で。

色々と思う所があるんじゃないだろうか?


「父は異論無いようです。私がラルナダルトの名を受けた時にこうなる事を想定していたのでしょう」


「ルシアンも?」


「それは勿論」


すっごいな。

頭の作りが違い過ぎるよ。本当に同じ人類かな?


「考えずにこのような大事な事を決められません」


それはそうか。

私なんてルシアンの為にレーゲンハイムが加わってくれたらぐらいにしか思ってなかった。その後の国内での勢力図が書き変わる事なんて、全然考えてなくて。勝手に行動してしまった。


……やっぱり王妃とか女皇とか、無理。

ルシアンに迷惑かけちゃう。


ちょっと凹んでいたら、ルシアンの手で顔を上げさせられた。

キスをされる。離れては角度を変えてされるキスに、心の中が簡単に溶けていく。


あの日、自分のこれまでを後悔した。

恥ずかしがってないで言葉と態度に出していかないと、いつ何時離れ離れになるか分からない。

さすがにあんな事は二度と無いだろうけど、あそこまで究極じゃなくても、病気になる事だって普通にあり得る訳で。むしろそっちの方が普通だよね。

帝国にルシアンが行ってしまった時にも、こんなんじゃ駄目だとは思っていたけど、頭の何処かで甘く考えていたんだと思う。

だから、今は恥ずかしくなっても、言葉にする。態度にも出す。これは絶対だ。


離れた唇に、自分から唇を重ねる。

嬉しそうにルシアンの目が細められる。


「ミチルがどんな道を選んでも、側にいます。約束したでしょう?」


くすぐったいぐらいの甘い言葉を、これでもかと口にするルシアン。


「私も、お約束します。ルシアンの側にいる為になら、嫌な事でも頑張りますわ」


嫌だけど、もしそうなったら頑張るよ!

ヘマしそうだけど!




「今回の祝賀パーティー、大丈夫だとは思うけど、気をしっかりもってね」


気をしっかり持てとか、どう言う事? 何があるの?

やっぱり女皇になるのから逃げられないとか?


セラが淹れてくれたほうじ茶を飲む。


「ミチルちゃんが眠ってる間にね、ルシアン様に言い寄る令嬢が後をたたなかったの」


「!」


ソッチ!


「アルト家は妻を一人しか持たない訳だけど、その妻がいつ目覚めるか不明だった訳でしょ? そこにつけ込もうとしたみたいよ」


弱ってるルシアン様をお慰めとかそう言う事ですか?!


「妻の座は狙ってないのよね、皆。愛人だったとしても十分過ぎるメリットがあるから」


ラルナダルト家の血筋を引いてるのは私だから、妻になっても爵位は継げない。それなら、愛人になってメリットだけ享受しようって事ですか?

……ぅわぁ……。


「流石にねぇ、ミチルちゃんが目覚めたし、大概は諦めると思うけど、ルシアン様ってば、強烈な令嬢を引き寄せるじゃない?」


ソウデスネ……。

そう言う引力をお持ちですね。

色気壮絶系ですよね。


頭痛がしてキタ。

平穏は常に私から遠い位置にあるようです。


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