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混浴のススメ

好きで好きでどうしようもない。


いくら俺の心のヒビに彼女を注いでも、その瞬間は満たされても、直ぐに渇く。


「ミチル」


名を呼ぶ。

俺を見て微笑むその表情に、胸に疼くのは甘い痛み。


抱き寄せて、瞳に俺だけを映す。

距離の近さに恥ずかしげに頬を赤く染めつつも、何とか羞恥に打ち勝って俺に触れる。

その心の動きと、触れる体温に溢れてくるのは、渇望。


今すぐ、全てを飲み込んでしまいたい。

耐えられずに、貪るようにその柔らかい唇に噛み付けば、閉じられる瞳に、寄りかかられるその重みに、受け入れられた喜びに腹の奥が疼く。


「貴女の全てを下さい、ミチル」


心も、身体も、視線も、思考も、何もかも。

抱き合って感じる体温が混じり、俺の香りがミチルに移る事に、仄暗い喜びを感じる。


俺を感じて。

俺だけを感じて欲しい。


何度も、愛を捧げるから──。




*****




まだ残っていたとは……?!


リュドミラが残していた破廉恥な私とルシアンの話が書かれた紙を破こうとした時、いつの間に現れたのか、ルシアンに奪われる。


「これは、リュドミラの手ですね」


取り返そうと手を伸ばすものの、ルシアンの方が背も高いし、頭より上に持たれてしまうと届かない。


「ルシアンッ! 返して下さいませ!」


アンナモノはこの世に存在してはいかんのだ!

抹消あるのみですよ!


「どれどれ?」


私の手の届かないように、高い位置に掲げた状態で読んでいく。


「皇妃になったのが惜しいぐらいですね。是非、この続きを書いていただきたい」


何言っちゃってんの?! そんなの絶対駄目!


「捨てさせて下さいませっ!」


ルシアンの腕を掴んで、手元に引き寄せようとする。……けど無理! 腕力とか腕力とか腕力とか、全然足りない!


一生懸命腕を引っ張ろうとする私を蕩けた目で見るルシアン。相変わらず私に関しておかしい。

あっ、コラ、頬にキスとかしない!

ぐぬぬぬぬぬ! 余裕ですね?!


「ルシアンッ、そんな破廉恥なもの、駄目です、お願いですから捨てさせて下さいませっ!」


ルシアンの目が突然艶っぽくなる。


「そうですね、私のお願いを聞いて下さるなら」


この流れ……絶対ロクでも無い事になるに違いない! 間違いない! エスパーじゃなくても分かるこの展開…!


「……な、内容によります」


「ふぅん?」


頬を撫でられる。


「ルシアンはこんなものがあって、嫌ではないのですか? 他の人が見るかも知れないのですよ?」


「話の中の私はミチルを愛してますから、問題ないです」


うぬぬ!

何て言えば良いんだ?!

…………ピコーン!

ソウヨ! ヤンデレだったこの人!


「そ、その、アレな描写がされている私を、他の人が見ても良いのですか?」


「あぁ、なるほど」


ルシアンは手元にあった紙を暖炉にくべた。

はやっ!? 容赦ないな?!


私を抱き寄せて、頬にキスをする。


「私以外に自分のそんな姿を見せたくないというミチルの気持ち、とても嬉しいです」


「?!」


アレッ?!

あの、そうじゃなくてね?!


「続きは、自分達で紡ぐとしましょうか」


「!」


「それに、他の誰かがミチルの姿を想像したのだと思ったら、腹立たしくもなりましたし」


これ、あれだ!

火消しの筈が火力アップする燃料投下しちゃった系だ!


困ったような顔を見せるルシアン。


「駄目ですよ、ミチル」


駄目って何が?!


「貴女は私のものなんですから」


「それは、そうですけれど!」


こういった展開はどうなの!

何て言うか、もうちょっと普通の甘い展開を私は切望しておりますよ!

どうすればこの、タジタジになる流れにならないように出来るんだろうか?


……そうか! ルシアンが主導だからこうなっちゃうんだ!

ソウヨ! ソレヨ!

ここは私から、甘いけど健全な夫婦生活をだな!

……それが出来てたらこんな苦労してないっ!!

ルシアンに対抗? しようとするからおかしくなるのであって、私なりにね?

私なりに……愛情を……表現……バーサクではなく……。


じっと私を見つめるルシアンの首に腕を回し、キスをする。私を抱き締めている腕に力が入った。

うっとり顔のルシアン。卑怯なぐらいに美しい顔デス。


「嬉しいです。ミチルからのキスが増えて」


心折れそう……。

何度となく頑張ってますよ? 頑張ってますけどね? 拒否なんて絶対されませんよ? だったら何に心が折れそうになってるのかと言えば……。


「ミチルは慣れさえすれば出来るんですから、色々練習していきましょうね」


頑張れば出来る子と褒められるのは嬉しい、けど……!


「キスも抱き付くのも出来るようになりましたし、徴もお願いすれば付けていただけるようになりましたし……」


……何を言う気だ、このイケメン。


思い付いたらしく、にっこり微笑まれる。


「入浴に慣れましょう。毎日一緒に入れば直ぐに慣れます。日常ですから」


「!」


腕から逃げようともがく私を抱き寄せると、ワンピースの背中に付いた紐を解き始める。


「る、ルシアン……ッ!」


「大丈夫、直ぐに慣れます」


無理っ! 無理ーーっ!!


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