まずはコンフェクション?
カフェ…orz
高級既製品を作りたいけど、それには技術力が必要。数量も用意しなくてはならない。
そのためにもまずはコンフェクション。粗悪品と呼ばせないものにしたい。でも数を用意するとなればどうしても雑になりがち。品質を安定させるためにもミシンが欲しい。
以前思いついたときに足踏みミシンの作成をアルトの開発部隊にお願いしたけど、どうなったかなー。我ながら無茶振りだとは思ったけど、乗り越えていただかないとなんだよね。
「ミシンだけれど」
おっと、エスパーセラ! きましたね! 読んできましたね!
「ミチルちゃんの下手な絵でもなんとかなりそうよ」
言い方!
「……絵心はないもの」
それはさておき、凄いなアルト開発部門! 天才か?! セラが言うように私の描いた絵で分かるなんて!
「思うよりも早くできたのね」
「魔石を使わないのが良かったみたいよ」
電動は、電動なミシン、ってことしか分からん。
便利な物が身の回りに沢山あったけど、構造とか全然分からないからね。
「足踏みミシンで縫製した布を届けさせたからあとで確認してちょうだい」
私の雑な知識を現実のものとするアルト開発部門ってチート集団だよね。本当素晴らしい!
「それで、同じものをひたすら作ればいいの?」
「サイズを用意します」
「サイズ?」
一定の大きさに作られた洋服を、紐で縛ったり、自分で刺繍を入れたり、布を羽織ってみたり。
そうやってコンフェクションを着てるらしい。ワンサイズしかないから。
「オートクチュールのようにぴったりしなくてもいいのです。自分の身体のサイズに近いものを着るだけで違うでしょう」
S、M、Lでいいかなー。
「ミシンもいいけれど、布の生産や糸についても考えていかないといけないわね」
確かにー。
糸の原材料の綿だって無尽蔵に栽培できるものじゃないし。私が歌うと早く栽培できるけど、それじゃ何の解決にもならない。私がいなくても自分たちでやれなければいけない。
一見チートな歌の力って、安易に使うと皆のためにならないんだよね……。
狙われるばかりで、役に立ってるのか不明……。
「焦らずに少しずつ力をつけていくんでしょ」
セラの言葉にはっとする。
そうだった。そうでした。
「そうね。つい、焦ってしまって……」
悪い癖だなぁ、と反省する。きっとすぐ忘れると思うけど、とりあえず反省。
私が暴走したとしても大したことはないだろうけど、こうして諌めてくれる存在っていうのはありがたい。大体暴君はストッパーがいなくて孤独を極めるからね。
「カフェだけど」
カフェ! すっかり忘れてた!
忘れてた、と顔に出ていたみたいで、セラが眉を上げて目を細めた。
丸投げした挙句忘れてました、サーセン。
「カフェとする建物も決まって、内装はそのまま使えそうだからそのまま使用するわ」
おー、居抜き物件って奴ですねー?
「平民用のカフェは新たに用意するより、既にある店を転用することにしたわ」
既にある店? スイーツの店でも飲食可に?
「スイーツを販売する店での飲食を可とすることや、露店の場合はテーブルや椅子を用意してそこで食べられるようにすること、宿屋は飲み屋も営んでいるから、昼間はカフェにしてもらうことにしたの」
なるほどなるほど。
それならいけそうだけど。
「ミチルちゃんは給仕が性的な目で見られることを心配してたでしょ。考えた結果、給仕そのものを増やすことにしたのよ。全ての給仕がそういった仕事に従事してるなんて、普通思わないでしょうし、強力な助けも得られることになったのよ」
強力な助け?
「愛し子を熱狂的に崇拝してる集団に、自警団になってもらうことにしたの」
!!
木工とか石工職人の皆さん! 正気を取り戻してください!
「あの身体の持ち主にすごまれたら、大抵の人間は逃げると思うわ」
ソウダネ。
どっちもムッキムキのバッキバキだったもんね。
多分笑い声はHAHAHAだろうと勝手に妄想。
「夏には差し入れをしてあげて」
「手配済みよ」
さすがですな!?
思わぬ伏兵? に精神がちょっと抉れたけど、気になっていたことについても対策を取られているみたいで安心した。
「これまで当たり前だったものが突然禁止されたら、大概は苛立つものよね。娯楽としてミュージカルも用意するけど、それだけじゃ足りないとルシアン様はお考えなの」
ほうほう。
「賭け事はね、ラルナダルト家としては出来ないのよ」
愛し子の家で合法賭博とか、さすがになぁ……。
前世での娯楽を思い出してみる。
うーん……なんだろうなー。
「試合かしら」
「試合? 格闘技ってこと?」
そういえばスポーツ観戦も娯楽だよね。盛り上がるもんなぁ。
「サッカーとか、ラグビーとか……」
「それは知ってるけど、それをどうするの?」
何故セラがサッカーやらラグビーを知っているかといえば、本に書かれているからだ。転生者が書いたと思われる本に書かれたサッカーやラグビーを平民たちは楽しんでいるという。小規模で。
「ラグビーでもサッカーでもどちらでもいいのだけれど、得意な者たちを集めてチームを作って欲しいの」
それでユニフォーム作って、そのレプリカみたいなのをファンに販売して儲けるってのどうだろう。
「いいわねぇ。競技場の場所は少し離れた場所になるから、乗合馬車を用意しなくてはね」
電車とかないもんね。
乗合馬車はバスみたいなイメージ。
「試合当日の乗合馬車は無料にしましょう。試合を観るのはお金を払ってもらうの。食べ物は持ち込み可として、お酒の販売は禁止。興奮した人たちが試合結果に怒り出したら大変だし……」
警備の問題も考えないとだなー。
自警団の人たちにお金を払ってやってもらえるかなー。
「定期的に試合するの?」
「半年に一度ずつ勝ち抜きで勝者を決めて、一年の始めにその勝者同士で試合をして、勝ったら優勝杯をあげましょう」
「面白そうねー」
見た目女子だけど、セラってば普通に男子なんだよねー。
さて、こうなるとまた、資金の問題が……。
とはいえ私はなんちゃってとはいえ愛し子だしなぁ……。賭博場とか無理だし……。賭博で身を滅ぼす人もいるし、ダメ駄目。
大々的にお金を集めて、還元しつつも、その収益を公共に寄付する仕組み……。
「…………くじ」
「ん? くじ?」
そうだ、宝くじ!
「宝くじを売りましょう。組番と10桁の数字が並んだくじを売るの。その売り上げは公共のものに使われることにすれば、皆文句は言わないわ」
「不正防止をどうするか、かしらね、その場合」
あぁー……そうか。
前世では複製が難しいぐらいの技術でもって作られていたもんね……。
「当選金額が大きいと不正をしたくなるでしょうけど、それほどでもないなら不正をするまでもないと判断するんじゃかいかしら」
おぉ、なるほど。
さすがセラさん、賢い。
印刷技術はあるけど、黒のみの印刷したものしか見たことないもんなー。活版印刷があるだけでも凄いことなんどけど。
「カフェ、舞台、ラグビーの試合、宝くじ……うん、なかなかいいんじゃないかしら?」
平民とか貴族とか関係なく、楽しめるものが増えるのは良いことだよねー。
「欲望は金になるって大旦那様がおっしゃってたわ」
そうなんだけどさ、言い方がね!
平民はそれでいいとして、貴族の楽しみ。
カーライルでは男子しかしなかった乗馬だけど、皇国では女子も乗馬するし……。
なんだっけ……クリケットじゃなくて、ポロ!
貴族に流行らせよう、ポロ! ついでに流行れポロシャツ。
「ポロを貴族の間に広めましょう」
「ポロ? 随分懐かしいものを持ち出したわね」
「こちらでは馴染みのあるものなの?」
懐かしいってことは前はあった?
カーライルでやってる人なんて見たことないけど。
「亜族が誕生してからは広大な敷地を必要とするからってやらなくなったらしいわよ、ポロ」
なるほどー。じゃあ亜族のいなくなった今ならやれるじゃないですか!
皆で馬にのってボールを追いかけて、ゴールに入れる。こっちは試合にする前にもう一度広め直す必要があるね。