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転生を希望します!【番外編】  作者: 黛ちまた
イケメンカフェ リターンズ?
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慈悲の女神

 小難しいことは置いておくとして、教会に、っていうか、マグダレナ様への信仰が集まるのは良いことだと思うんですよね。

 感謝しろってことじゃなくって、辛いときに神様助けてって思ったっていいジャナイ。誰にも言えない悩みとかドロドロした感情を零す場所があってもいいジャナイ。救いっていうか、逃げられる場所は必要ですよ。

 どこにも向けられないどうしようもない気持ちをとにかく吐き出して、それで前を向けるなら、それのなにが悪いのか。

 溜めに溜めてそれを誰かにぶつけてしまうぐらいなら、神様の前でだけ弱みを吐いたって許されると思うんだよね、個人的には。

 そうじゃなきゃ生きるの辛すぎる。無理ゲーだよそんなの……。


 皆、心のどこかで分かってるんじゃないかな。こんなこと考える自分はよくないって。でも、頑張ってもどうしようもないことって嫌になるくらいあるわけですよ。

 恵まれた今生でも思うし、報われないことのほうが多かった前世なんて、それこそ不満募らせて闇堕ちするかと思ったからね!

 そんなやり場のない気持ちをどこかに吐き出したい。それができる場所になって欲しいと懺悔室を作ってもらった。あの時は薬物依存をなんとかしたいって気持ちのほうが強かったけど。


「喪が明けましたら、本格的にギルドやカフェのことで各国を回ることになります」


「そうね」


 愛し子なんて正直ガラじゃないんですけどね。

 私の祈りの歌は、見た人をちょっと感動させるらしいんですよ。

 存在するかどうかも分からないものに祈れないって人もいると思う。女神様は存在するんだってちょっとでも信じてもらえて、祈りは届くんだって思ってもらえたらいいなぁって。

 なにかあったときに駆け込める場所に教会がなったらなーって思う。

 ……まぁ、それもこれも教会が腐敗しないことが条件なんですけど。

 信仰心で祈りの威力が変わればいいのになー。

 ……あ、その結果がラルナダルト領の平民たち?


「お祖母様、マグダレナ様を信仰するラルナダルト領の民たちは魔力の器を持ち得たと仰せでしたね」


「えぇ、そうよ。信仰を失ったら魔力の器がどうなるのかを知りたいのでしょう?」


 笑顔で聞かれる。

 ここにもエスパーがおる。

 話が早くて助かるといえば助かるんですけどね? あまりに考えを読まれて凹んだんだけど、一周回って、なんならもう一周ぐらいして、私から漏れすぎなんだなって受け入れてきたよね、さすがに。


「私たち純血のマグダレナの民は魔力の器を生まれながらにして持っているけれど、純血でなくとも母体である母親が信仰心を持っていた場合は魔力の器になるものを備えているの」


 それが十四〜十六歳で完全な器になると。


「信仰を持ち続ければ器はそのままです。けれど信仰が失われれば器は緩やかに消えていくのです」


 心が影響するのか……なんでなんだろ、不思議なんだけど。


「平民たちの魔力の器は首より上にあります。精神の影響を受けるのではないかといわれているのですよ」


 精神の影響……。

 そういえば私の二つ目の器は頭にあるんだよね。

 一つ目はお腹のあたり。


「転生者の二つ目の器は必ず首から上にあります。ですが転生者の器が信仰心を失ったことで消失したかどうかまでは生憎分からないわ」


 ルシアン、ゼファス様、セラ、お義父様に引き続いて私の考えを見抜きまくりの祖母が、先回りして答えを教えてくれた。アリガトウゴザイマス……。


 転生者と、母親の祈りによって首から上に器をもらった人の差ってなんなのかなー。

 ……あ、そういえば。


「マグダレナ様は、魔力の器は魂の数だと仰せでした。かつての私と、今の私の魂は混じり合っているものの、魂の総量は二つ分なのだと」


 祖母が扇子を手のひらの上でゆっくりと広げていく。


「転生者であり、混血の者の器はどうなるのかしら……ねぇ、ニヒト?」


「ラルナダルト領においてではありますが」


 祖母が頷く。


「平民の中にも転生者がいたようですが、首より上に器を二つ保持していたという記録はございません」


 そうなのね、と答えると祖母はゆっくりと扇子を閉じていく。


 うーん……なんか分かったような、分からないような??


「……魔力の器が魂の数というのが、分かりかねます。マグダレナの民でなくとも皆、魂を持っておりますもの」


 転生者の場合はなんとなく、ふぅん、そういうものなんだ? みたいな感じだけど。


 個人の考えとしてお聞き下さい、と前置きをしてルシアンが話し始めた。


「魂は生けるもの全てが持つものですが、それを意識することはありません」


 確かに?

 亡くなってしまう時に、魂が失われたと感じる。


「オーリー神は力を貴しと考え、イリダ神は叡智こそ美であるという考えの元にそれぞれの民を作りました。オーリーの民は身体能力に優れ、過酷な環境でも生き抜ける強靭な肉体を持ちます。イリダの民は記憶力に優れ、柔軟な思考から問題を解決することに長けています。どちらも必要な能力であり、とても分かりやすい。

ですが、女神マグダレナが己が民に与えたのは慈愛、慈悲です。それはマグダレナの民の気質を指すものではありません。そしてマグダレナの民には魔力の器なるものが備わっており、魔素を魔力へと変化させる能力を持ちます」


 うんうん。そうなんですよね。

 その魔力も魔法とかじゃないんですよ。撃ってみたかったよね、ファイアーボールとか。


「祈りが足りないため、力が不十分だったと女神はミチルに言ったそうですね」


「えぇ、そう仰せでした」


 だから助けられなかったのだと。


「魔素をマグダレナの民の体内で増幅させ、大地に注ぎ、女神に祈りとして還元する。捧げられた祈りにより女神は力を得る」


 正しくループされるなら、マグダレナ様めっちゃ力を得るってることですよねー。

 それに魔道って一体なんなのって話ですよ。


「魔力とはそもそもなんなのでしょう」


 根本的なこと聞いて本当に申し訳ないんだけど、魔力を大地に注ぐと大地が活性化するって、なんなんだろう? 魔力を女神に捧げるのは、女神様のMP増えるのかも? みたいなイメージだけど。


「魔力とは、生命力でしょう、恐らく。女神に捧げる際にも生命力のままなのかは分かりませんが」


「生命力」


「魔素はマグダレナの大陸を覆い、魔力の器を持たぬ者には毒になります。ですがこの大陸の動植物を口にすれば解毒される。より多くの生命力でもって強制的に毒素を消し去るのでしょう。

女神を信仰する者が産んだ者には魔力の器を得る機会が与えられる。その子供も信仰心を抱き続けるならば」


 祖母が目を細める。


「女神はオーリーの民もイリダの民も拒絶する意思はない。自身に祈りを捧げるよう求め続けていたということですか」


 ルシアンの言葉に祖母は鈴を転がすように笑って言った。


「女神マグダレナは慈愛、慈悲の神ですもの」


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