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秘宝の乙女は海賊に囚われる  作者: 柘榴アリス
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姉との別れ

「お、お姉ちゃん…。」

「イリス!大丈夫!?」

「お姉ちゃん!」

イリスは姉に抱きつこうと駆け寄る。が、倒れた筈の海賊がイリスの足首を掴んだ。

「く、そ…!逃がすか…!」

悲鳴を上げるイリスに姉は海賊の腕に剣を突き立てた。

「ぎゃああああ!」

苦痛の叫びを上げる海賊に姉はイリスの手を引いた。

「早く!逃げるのよ!」

血で塗れた姉の手は震えていた。イリスはその手をキュッと握り返した。そのまま姉に抱きついた。

「お姉ちゃん!ごめん!ごめんね!酷いこと言って…、ごめんなさい…。」

ヒックヒックと泣きじゃくる妹に姉はよしよしと頭を撫でて抱き締め返した。

「イリス…。あたしのこと…、嫌いになったりしない?」

「あんなの嘘!嘘だから…!全部、嘘だから…!ごめんなさい…!」

「そっか…。」

姉は安心したように息を吐いた。イリスに視線を合わせ、その涙を拭いてくれる。

「お姉ちゃん…。血が…、怪我しているの?」

姉の頬にはべったりと血が付着していた。イリスはヒックヒックと泣きながらも心配そうに姉を見上げた。姉はハッと今気が付いた様子で頬の血をグイッと手で拭った。

「大丈夫?い、痛い?」

泣きそうな表情でこちらを見上げる妹に姉は安心させるように笑って誤魔化した。

「だ、大丈夫…。あたしはどこも怪我していないから。」

「本当?本当にどこも怪我してない?」

ぽろぽろと涙を零す妹に姉は頷いた。

「本当よ。だから、大丈夫。」

その笑みが僅かに引き攣っていたことにイリスは気付かなかった。

「イリス。さっき、海軍に緊急信号の連絡をしたわ。いつ来れるかはまだ分からないけど…、日暮れまでには来てくれる筈。」

「本当?助けが来てくれるの?」

希望が見えた気がした。

「そう。だから、それまでもちこたえるのよ。」

「うん!」

「さあ、行こう。いい隠れ場所を見つけたの。そこで身を隠して…、」

「随分と威勢のいい餓鬼がいたもんだ。」

「…!」

気づいた時には二人の前に複数の海賊が立ちはだかった。その真ん中にいる海賊にイリスは見覚えがあった。熊みたいに大柄な男…、あの時に海賊達に命令していた残忍な海賊だ。姉はイリスを庇うように背中に隠した。

「ほお…。餓鬼だが中々いい女じゃないか。」

ぺろり、と舌なめずりをする海賊にイリスはびくりとした。

―…イリス。少しの間だけ見えなくする。このまま走って逃げて。

「え?」

頭の中に響く姉の声にイリスは戸惑った。

―あたしが時間を稼ぐ。その間に逃げて。…大丈夫。あたしも後から追いかけるから。

イリスはえ…、と姉を見上げた。

「おい。お前ら。殺すなよ?生け捕りにするんだ。」

「けど、船長!あの女、仲間の一人を…、」

「ハッ…、女に倒されるような弱い奴はこの船にはいらねえ。」

そう吐き捨て、船長は姉に近付いた。姉は手にしていた剣を慣れない手つきで構えた。そして、イリスの頭を撫でる。じんわりとした熱が身体を包んだ。

「行って。イリス。」

「で、でも…、それじゃあ…、」

「早く行きなさい!」

姉の声にイリスは弾かれたように走り出した。

―早く…!できるだけ遠くへ逃げるの!走って!…走るのよ!

姉の声が頭の中に響く。イリスは走った。ハアハア、と息を切らしながら必死に走る。

キン、と剣が弾かれる音がする。ハッと振り返る。そこには目くらましの術でイリスの型を模った姿がある。イリスは海賊に剣を奪われ、後ろ手に腕を掴まれた姉の姿を目にした。思わず、姉の名を叫んで駆け寄ろうとするがそれに気づいた姉がイリスを見る。姉はイリスに近付かないように頭を振った。そして、逃げるように顎をしゃくった。イリスは震えた。じりじりと後退る。

「ハハハ!捕まえたぞ!おい。その小さい餓鬼も連れてこい!そいつは金になる。」

男達は目くらましの術で走って逃げるイリスの残像を追った。

ー早く逃げなさい!

姉の言葉が頭に響いた。その言葉に衝動的にイリスは姉に背を向けて走った。怖くて堪らなかった。ひたすらにイリスは走り続けた。涙が止まらなかった。

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